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根に持っていること(映画vs読書)

久しぶりに、根に持つほど腹を立てたことがある。非常に些細で幼い怒りなので、読み手を苛立たせてしまったら、ごめんなさい。

それは、先週ライブハウスの楽屋にて、バンドメンバーが放った一言。

「えっ?お前、映画観るの?」である。

最近わたしには、観たいな、と思う映画があった。それはとても珍しいこと。母と姉は生粋の映画好き・読書家であるが、わたしは映画をほとんど観ることがない。でも、キネマ旬報を読むのは好きだ。ごくたまに、そこで見つけた面白そうな映画を、渋谷辺りの小さなシネマへ観に行くことがある。それくらいの鑑賞頻度だった。


その日は新宿でライブだった。イベントを企画してくれたバンドとは非常に親しく、そのメンバーの一人は映画関係の専門学校に行くなど、非常に映画に詳しい人だった。わたしは彼に、今観たいと思っている映画について尋ねたかった。

楽屋で自分の荷物を整理していると、映画に詳しい彼がやってきたので、早速訊いてみた。(あの映画は観た?―まだ観ていないんだよね。/面白いかな?―面白いと思う、俺も一応観る予定…)と、ここまで話したところで、突然わたしのバンドメンバーが話に割って入ってきた。彼も映画好きであるから、黙って居られなかったみたい。
しかし「えっ?お前、映画観るの?まさかメーコから映画の話が出るとは思わなかったなあ」と肩を震わすものだから、わたしはカチンときた。そこから暫く話題を横取りされてしまい、●●監督の作品が良いとか、初期の作品は酷いとか…そんな話が続き、彼らと話す気も失せてしまった。本当は映画に詳しい彼に、お勧め作品や、わたしが過去に観た作品について意見聞きたかったのに…と、不愉快な思いが残された。

その後、ライブはしっかりとやり遂げたけれど、わたしを小バカにしたようなバンドメンバーの言葉がしこりのように頭に残り続けた。あまりに腹が立って、思わず同じくらいおバカなことを、別のバンドメンバーに漏らす。「本でまともに情報を得られないから、映像から情報を得るしかないんでしょ」と。それを聞いたメンバーは「君だって、そういうとこだよ。同じだよ。」とアッサリ返した。なるほど。相手が映画好きで、それをステータスと感じている(無意識だとしても)とすれば、それはわたしが本好きとして抱いているそれと同じことなのだ。


わたしは、映画好きの人は読書家とはまた別の感性や洞察力があって、非常に素敵だなあと思っている。多分わたしは、空気を読むこと・人の話を理解することに時間がかかるため、映画を観るのが下手なのかもしれない。だから、文字を読む方が性に合っているし、面白い映画を見つけることより、面白い本を見つける方が得意だった。でも…冷静に思い返してみたい。そんなわたしだからこそ、わたしも映画好きのバンドメンバーのような話し方をしていなかっただろうか。

あの著者が好きな人はちょっと気障なイメージだとか、この作品以外は面白くないだとか、お勧めはアレとコレとソレだとか…。相手にとって、鼻につく話し方をしていなかった、とは言い切れない。あのバンドメンバーも、自分の好きなことだからごく自然に喋りまくってしまったものの、わたしのような人間には自慢を並べているようにしか聞えなかった。ああ…これはダサい、と思った。早急に直さなければ、と。


映画好きも本好きも、別にどっちも偉くないしカッコよくはない。好きなものに夢中になると、知らず知らずそれがステータスに成り代わっていることがある。それは時として見苦しい。今後は自分の話し方や、伝える温度感に気をつけようと思う。
そんなわたし、久しぶりに本を一冊読み終えた。貫井徳郎の「愚行録」だ。どんな作品かって?うーん、うぅーーん…まるで、腹の底に澱が溜まっていくような…何ていうか、ズゥーーンと後味重めの作品です。

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