今日も、読書。 |子供も大人も、見ている世界は同じなのだから
ブレイディみかこ|ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ものすごく有名な作品なので、説明は不要かと思う。2019年のYahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作。新潮社のベストセラーになっている。
著者のブレイディみかこさんは、イギリスのブライトン在住。アイルランド人の夫と、息子の「ぼく」と3人暮らし。現地で保育士として働きながら、ライターとしても活躍されている。
文庫版の解説、ときわ書房志津ステーションビル店にお勤めの日野剛広さんの文章が、とても心に残っている。私が本作を読んでいて、まさに感じたことだった。
発言が幼いからといって、子供が頭の中で考えていることが、大人である私たちよりも未熟だと、誰に言えよう。
子供たちは、世間擦れしていないまっさらな頭で、日々たくさんのことを思考している。その思考は得てして、大人のそれよりも核心をついたものだ。
子供たちは、経験が足りなくて、それをうまく言語化できないだけだ。彼らは大人よりもずっと豊かな感性で、柔軟な心で、広い視野を持って、世界を見ている。
これは以前、神沢利子さんの『流れのほとり』を読んだときにも、感じたことだった。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、ブレイディみかこさんは、そのことを理解している。彼女の息子である「ぼく」と、みかこさん自身は、同じ目線に立って世界を見ている。
ぼくが中学校で体験した、いじめや差別などの問題について、みかこさんは考えや教えを上から押し付けたりしない。ぼくと一緒に悩み考え、ぼくの行動を尊重し、そっと背中を押してあげて、すぐ後ろで見守っている。
ぼくは、ハンガリー移民2世のダニエルや、貧しい家庭のティムら、マイノリティの友人たちと、まっすぐな心で友情を育んでいく。彼の逞しくて直向きな社会への向き合い方は、大人の私たちが見習わなければならないものだ。
ぼくは作中で、中学校の同級生が差別的な言動をすることに対して、「頭が悪いのだろうか」と、率直な疑問をみかこさんにぶつける。それに対してみかこさんが、ぼくに贈った言葉が印象に残っている。
差別は無知から生まれる。無知は頭が悪いことと同義ではない。「無知」という言葉の通り、「知らない」だけなのだ。
いつか知るときがくれば、その人は無知ではなくなる。知ることによって、想像ができるようになる。
もちろん、差別は良くない。その前提があるうえで、差別をする人に対して、「差別する人」と乱暴にラベルを貼って隔絶するのも、きっと良くない。それもまたひとつの差別なのだと思う。
その人がただ「知らない」だけなのだと思えば、その人に知ってもらうためにはどうすればいいか、というアプローチが生まれる。みかこさんの考えは、差別をはじめとする社会問題の根本に迫る、とても大切なものだと感じた。
先ほどの「子供の考え」も同じ話。子供たちは、自分が考えていることをきちんと言語化する術を、「知らない」だけだ。
では、それを知ってもらうためには、どうすればいいだろう。そんなアプローチから、教育を考えていくと良いのだと思う。
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