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#19 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

 突然扉が開き、中に吸い込まれた私は文字通りゴロンゴロンと床を転がり、強かに打った腰をさすりつつ、よっこらしょと立ち上がった。
 辺りを見回すと、そこは20畳程の広い部屋で、家具類は一切無く、扉に向かい合った壁に白くて大きな背もたれ付きの綺麗な椅子と、その前に長方形の大きな、これまた白い箱があるだけだった。
 その箱はまるで…棺のような?
───ピシッ───
 物音1つしていなかった部屋に乾いた音が響いた。そして、パラパラと何か細かな物が崩れ落ちるような音も。
 見上げれば、天井に大きなヒビが入っており、そこから少しずつ崩れ始めているようだ。
「崩壊が…進んでる?」
 これは由々しき事態。一刻も早くなんとかしなきゃ。
あの犬耳の女性が私を追って入って来てないって事は、きっと彼女は扉を開ける事が出来ないのだろう。なので、上司のクロサキさんを探すため、今頃奔走してるのかもしれない。
 クロサキさんはこの世界の総統だそうだし、当然この部屋にも入ってこれるだろうから、それまでにこの世界のミクべ神を探さなくては。
 …と言いつつも、正直目星は立っている。
どう考えても、あの棺のような箱が怪しい!
 私は緊張しつつ、箱へと足早に近付いた。
 箱は遠くからでは分からなかったけれど、側面にビッシリと細かな模様が掘られていた。
 最初はただの飾りか何かかと思ってたけれど、私のもう1つの知識、閻魔様から頂いた知識が閃いた。
 その模様は魔力や念力みたいな不思議な力を遮断する働きがあるようで、きっとこの箱の中の「力」を封印してると思われる。
 背伸びをして箱の中を覗き込めば、中に美しい女性が横たわっていた。どことなく地上界であったミクべ神に似ているので、きっと彼女が地下界のミクべ神なのだろう。
  彼女は一見眠ってるようにしか思えず、外傷も乱れた様子も無い。危害を与えられたのでは無いのかしら?
 それとも本当に眠ってるだけかも?と彼女に触れようと棺の中に手を伸ばそうとしたら、見えない何かに阻まれた。
 例えれば、硬めのゼリーのような?なんとも不思議な感触だ。
「うーん、困ったわ。これじゃ宝石を割って力を放出したとしても効果が出るのかどうか」
 この透明にも程があると言いたくなるようなゼリー状な物をペチペチ叩いて、どうにか壊す方法が無いかと考えた。
そして私は気付いた。
 眠っていたはずの彼女の目が開き、まっすぐコチラを見ていた事に
「…っ?!」
 驚き思わず息を呑む。同時に背後の扉がガラリと開いた。
「お嬢さん、いい加減にしないと、お父さんお母さんに叱られるだけじゃ済まなくなるぞ?」
 振り返れば50代半ばの男性が、笑みを浮かべつつも怒りに震えた面持ちで立っていた。

#20につづく


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