3.5畳

私、死のうと思うの。
もう疲れちゃった。
なんにもしてないのにね。
でもね、死ぬのは怖いの。

この前ね、夜中に散歩してたの。
薄暗い住宅街にね、老人ホームがあってね。
鼻がもげるような臭いがした。
生き物が腐ったような。
なのに生きようとしてるような。

なんだか悲しくなった。
どんなに懸命に生きてもいつか死ぬんだって。
死に向かって生きるしかないんだって。

人生に意味なんてないんだよ。
生きる意味なんて最初からないんだよ。
でも生きるしかないから意味を見つけるんだよ。

自分の命の価値は自分で作るしかないんだよ。

魂には重さがあるんだって。
死ぬ前と後じゃ21g違うんだって。
人は魂を燃やして生きてるんだって。
私の魂はあと何g燃やせるのかな。

子供の頃から月が好きだったの。
お母さんが運転する車の後部座席から眺めてた。
どんなに走っても月が追いかけてくるの。
でもちょっと目を離したら離れてるの。
不思議で綺麗でずっと見てられた。

なんとなく月とにらめっこしてたらね
どんどん沈んでいってすぐに雲に隠れちゃって
ああ、こんなに早く動くんだなって
大人になってやっとわかったの。

時間ってこんなに早いものなんだって。
一年なんてあっという間だなって。

そうやって年を取っていくの。
一生懸命生きても何もしてなくても。

時の流れは平等なんて嘘だよ。
とっても長く感じる時もあれば一瞬の時もある。
どう感じるかもその時をどう過ごすかも自分次第。
何のために自分の人生を使うかも、ね。

私の人生は私だけのもの。
でも登場人物が私だけなんて嫌。

学校や会社や組織や家庭に属するのが常識。
でもそれが嫌で私は全部から逃げ出した。
自分を縛るものから逃げて気付いた。
縛られているのと同時に守られてたって。

今は誰にも怒られないし指図されない。
心配もされないし責任も取ってくれない。

まっすぐ私を見つめてくれる人は
今は私以外にいない。

なのに私は私のことが分からない。
何が好きで何が嫌い?
誰と居てどこに行きたい?
これからどうしたい?
どれだけ問いかけても答えは返ってこない。

いっつもないないばっかり。
苦しみたくない。
傷付きたくない。
老いたくない。
死にたくない。
一人でいたくない。

嫌なものばっかり増えていって
いつの間にか夢も未来もなくなって。

やりたいことも行きたいところも好きな人も
全部なくなっちゃって悲しくなって。

好きなものすらなくなって
ただ今は息をしているだけ。

本当に、それだけなの。

生きてる意味も死にたい理由もないの。

今私はここにいるのに
確かに息をしているのに
心臓は動いているのに
魂を燃やすことも
声を上げることもなくて
生きてるのに死んでるみたい。

それがどうしようもなく悲しくて寂しくて虚しい。

誰も私を否定しない。
いいんじゃない?って言ってくれる。
だって他人だから。
彼らの人生に私は影響しないから。

私が死んで本当に困るのは私だけ。
私が生きて苦しむのも私だけ。

今私が死んだらなんて言われるんだろう。
まだ若いのに?可哀想?
それとも助けを求めてほしかった?
言ってくれればよかったのに?

なんでもいいか。
私の心臓が動くのをやめたら
その後の世界なんて知らない。
興味もないわ。

だって私がいない世界に意味はないもの。
じゃあ私がいるこの世界に意味はある?
どうだろう。
体は生きてるけど心は死んでしまったから。
私の魂はもう何も訴えてくれなくなったから。

でも生きたいのか死にたいのかもわからないから
どうしたいかわかるまでは息をしていよう。

もし答えが出たとき
その答えが死にたいだったとき
私の世界は意味を無くすでしょう。

それまでほんの少し私の居場所を貸していて。

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