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10年越しの約束



『結婚したら絶対式には呼ぶからねー!』


学生時代にたくさんの人と交わしたこの約束は、果たしていくつ守られただろうか。

この文章は、わたしが10年前の2009年3月から一年間、中国に留学していた頃の回顧エッセイですが、今日はちょっとだけ特別版です。
毎週火曜19時に更新しています。


外出の機会が減ってろくに更新しなくなったInstagramのアイコンの右上に、赤い丸が点灯した。

『げんき?わたし結婚するの!』

台湾に旅行に行ったこと、留学中に作ってくれた料理が更に上達していること、恋人と幸せそうに暮らしていることはInstagram越しに知っていたけれど、とうとうこの日がやってくるとは!

『どこで式を挙げるの?長春?』

なんて冗談を言いながら、そこで初めてLINEの連絡先を交換して、10年前に取得した赤色のパスポートを更新するところから、準備は始まった。

航空券、ホテルの手配、結婚式の作法、服装、お祝儀…

この3ヶ月間、ずっとそのことが頭から離れなくて、自分の結婚式でもないのにそわそわとしていた。

そしてとうとうその日。新千歳空港から仁川空港までは約2時間30分。友人の生まれ故郷までは空港からバスに乗って3時間だから、きみの故郷、日本より遠いんじゃないか?一生に一度行くかどうかのこの地で、わたしたちは10年ぶりの再会を果たした。

みちがえるほど綺麗になっていたけれど、
中身は10年前と変わらない勝気なお母さんキャラで安心した。

しかし入場したとたんにぼろぼろ泣き出してしまって、
思わずみんな噴き出してしまったよ。

結婚式は14時からだったけれど15時半にはあっという間に終わって解散したのだった。韓国の結婚式はとても短い!


『みんなの結婚式にも絶対呼んでね!飛んでいくから!』


10年ぶりに約束の上書きをして大きく手を振って、帰路のタクシーに乗り込んだ。
外は桜が満開で、これから始まる新しい季節のエネルギーに満ち溢れていた。

韓国に桜があるなんて知らなかったな。
お隣の国だけど、まだまだ知らないことは山ほどある。



 ◇  ◇  ◇ 

ちなみに、彼女が連絡をくれたのは奇しくもnoteで中国のマガジンを始めようと投稿をしたその日だった。

上記のnoteで留学中は辛いことがたくさんあったと書いたけれど、毎週のnoteでその辛い気持ちを書き出さなくて済んだのは、彼女の結婚の報告があったからなんじゃないかとふと思った。

10年ぶりに会った時、笑顔で会いたかった。

ただそんな思いが無意識にあったのだと思う、だからきっと彼女に会うまでの3ヶ月間、毎週続けてきたnoteでわたしは10年前の留学が決して辛いことばかりではないことを思い出すことができた。これはnoteの存在と彼女の結婚、どちらが欠けていてもできなかったことだと思う。

良い区切りがついてしまったところでマガジンの更新を止めようかなとも考えたのだけれど、自分の頭でなく手が勝手に動くのをもう少し見守ってみたいとも思うのだ。

つらいことならまだまだ、今までの倍以上は書けるぞ。やるのか。

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なんとか生きていけます。