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映画『ルームロンダリング』を楽しむ3つの視点

主人公・御子が住んでいる部屋は、普通の部屋ではない。事故物件なのだ。

題名の『ルームロンダリング』とは、事故物件の部屋を、事故後に人を住まわせて「部屋の浄化」をしてから物件として紹介することだ。

主人公の御子には、その事件後最初の居住者となる役割を課せられている。そう、彼女は幽霊がみえるのだ。彼女は自殺や殺人があった部屋を転々として生きている。しかも御子を取り巻く幽霊たちは奇妙で濃い人たちで溢れている。学芸会の日に事故で亡くなった小学生、レコードを送り損ねたパンク(?)シンガー、自己満コスプレーヤー女性などなど…

ここからは、映画『ルームロンダリング』を楽しむための3つの視点を紹介する。この3点を知れば、より映画を深く楽しめるのではないだろうか!?

1.記憶と死

死んだら自分が生きた証は跡形もなく消えてしまうのか?

この疑問は自分が死ぬ間際に考えることなんだろう。しかし、この映画は自分の『死』を先回りして考えさせてくれる。考えてみれば、千年前に私がいる土地に生きていた人の名前を、私は知らない。有名な人物なら教科書に載って後世まで知られることとなる。しかし、一般人は死んだら大きな歴史の中の1人として位置づけられてしまう。

「そのうち、風化されて忘れられていくのよ。
私が生きてたことを覚えてた人たちの記憶も…。」

『ルーム・ロンダリング』(2018)

登場人物の1人が放った言葉である。

死んだ後、自分には何を残せるのか?死の裏の側面として「生」はどのような意味を果たすのか。ぜひ、映画本編を見て考えてほしい。


2.顔の演技を見てほしい

池田エライザさん、オダギリジョーさん、伊藤健太郎さんなど豪華俳優陣にも注目だ。

主人公・御子(池田さん)は、たくさんの幽霊たちに出会いながら生活をするのに精一杯である。御子は周りの人々の言動から様々なことを学び取り、どんどんまさに「ステキ」な女性に変わっていく。御子の表情がその中でどのように変化するのか、特に見てもらいたい。さらに、そんな御子を取り巻き支える、人間や幽霊の「表情」にも注目してもらいたい。特に雷土悟郎(オダギリさん)や虹川亜樹人(伊藤さん)は、「もどかしさ」「じれったさ」を抱えているように思える。その気持ちが晴れたとき、彼はどのような顔を見せてくれるのか、楽しみに見てほしい。


3.前半と後半で違った楽しみ方ができる!

 前半では幽霊との楽しい会話や「ルームロンダリング」をして過ごす奇妙な日常をお楽しみいただきたい。特に幽霊たちは誰も個性が豊かで見ていて飽きない。死んでしまった人たちに話しかけられたら、実際はおそらく逃げ出してしまうのではないか。それでも、この作品の幽霊たちはキャラクターが濃く、かつ大切なことを御子に教えてくれる。こんなユーモアあふれる幽霊たちがいたら、1人暮らしでも退屈しないだろう。

 映画後半では、前半の場面を駆使した怒涛の伏線回収がたまらない。まさに「そうだったのオンパレードで、見た後は納得感と共に、悲しいような嬉しいような、色々な感情が織り交ざった感情を経験することになるだろう。


私たちは生きている中で、自分を発見していく。たまには死者からも学ぶこともある。ちょっとクスっとする場面がありつつも、人生を見つめなおすことができる『ルームロンダリング』を、休日にゆったりとした気持ちで、ぜひ見てほしい。

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