何もかも過ぎたこと

23時の東京行きは
なるべく人の多い車両に乗るの
そうしなくちゃ窓の鏡に
消えてくような気がするから
駅に捨てた荷物の中に
いつも大切なものが入っている
それを拾う背中を
突き刺さるほど見つめていた
扉が閉まるたび
何もかも過ぎたことだと
教えられる

発車ベルに気づいた時には
必要な人だけ降りていた
ここに残る人の影に
いらない思い出が揺れて見える
真っ暗な景色の中に
また懐かしさが駆け巡る
みんなと同じに生きていても
これだけ違いがあるのだから
扉が閉まるたび
何もかも過ぎたことだと
教えられる

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