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秋刀魚とEPA・DHA

最近まで買うのを待っていたのに、店頭に並ぶ秋刀魚は、今年もスマートなものばかり。
丸々太り、焼いた時に油が滴る、黄金色の秋刀魚はどこに行ったのだろうか。
地球環境の変化とはいえ、少し寂しい秋の深まりですね。

この時季、秋刀魚の魚油は体によいからと期待して、食べる人も多いと思います。
油・脂・油脂・脂質・魚油は、奥深い意味があって私自身苦手な分野。少し書いてみました。
 

〇油・脂・油脂・脂質・魚油のちがい


食物の分野でこの違いを使うときに、覚えたことがあるので書き出しました。
①   油:一般的に常温(15℃~25℃)で液体状態。植物性のものが多い。コーン油や大豆油など
②   脂:一般的に常温で固体のもの。動物性のものが多い。肉の脂身やラード(背脂が多い)。牛脂や豚脂の動物性の脂肪をいう
③   油脂:液体の油と固体の脂肪を総称して油脂という
④   脂質:糖質、たんぱく質と並んで体に必要な三大栄養素のひとつ
⑤   魚油:魚から採れる海産脂肪油。秋刀魚や鰯に多く含まれ、血液改善の高い脂肪酸を含む
 
 

〇食用油脂(ここでは脂肪)といえば悪者にされがちですが・・・


普段、私たちが食べている脂肪は「カロリーが高いだの肥満になるだの」と言って、悪いイメージを持ちがちですが、ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助けたり、健康効果のある脂肪酸を摂ることができるという大きなメリットがあります。
 
脂肪の多くは中性脂肪で、グリセリンに脂肪酸が三つ結びついた形をしています。そのためトリグリセリドとも呼んでいます。
 
脂肪の性質は、結合している「脂肪酸の種類」によって決まります。
そもそも、脂肪酸には飽和脂肪酸(固体)と不飽和脂肪酸(液体)がありますが、何がどう違うのでしょうか。

大豆油、とうもろこし油などは不飽和脂肪酸を多く含み、常温で液体の植物性脂肪です。
牛脂、豚脂などは飽和脂肪酸を多く含み、常温で固体の動物性脂肪です。

動物性脂肪の内、魚油の場合は不飽和脂肪酸が多いため、常温では液体です。
この魚油について、以前から健康効果が高いと注目されています。

ただし、脂肪は酸化して毒性を示すこともあるので、適温、適材の適正管理に努めましょう。
また、魚油についても酸化しやすいので、鮮度の良いものを選ぶことが大切です。

〇飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

少しややこしいのですが、化学的に見ていきましょう。

【飽和脂脂肪酸】
飽和脂肪酸は、炭素の鎖の手に水素が全て飽和したつくりをしています。
バターに含まれる酪酸、ラード(豚脂)やヘット(牛脂)に含まれるステアリン酸、パルミチン酸などのような飽和脂肪酸で、動物性に多くあります。
 
飽和脂肪酸は融点(固体が液体になる温度)が高いため、食品の脂肪中に飽和脂肪酸が多く含まれていると、常温で固まった状態の脂となります。
皆さんも、冷蔵庫から室温に出したバターやラードがいつまでも固体であるのを見ていますね、それです。
 
他方、植物性の油であってもヤシ油などは、飽和脂肪酸を多く含むため液体ではなく固まっています。

健康管理的には、飽和脂肪酸を過剰に摂り続けると血中コレステロール値を上昇させる作用のあることがわかっています。
 
【不飽和脂肪酸】
不飽和脂肪酸は、炭素鎖の中に二重結合(不飽和結合)を持つ脂肪酸で、水素の数は少なくなります。二重結合を一つもつ脂肪酸を一価不飽和脂肪酸といい、二つ以上もつ脂肪酸を多価不飽和脂肪酸といいます。
不飽和脂肪酸は融点が低いため、これを多く含む油脂は液体になります。
 
ベニバナ油、米油、菜種油、大豆油、ごま油などの植物性油は、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。
 
他方、動物性の油でも魚の油は液体で、二重結合が5個、6個もあるエイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸があり、皆さんもご存知のように、人体の血液改善効果があります。
 

〇魚油とEPA・DHA


EPAやDHAは天然には水産物の脂質に含まれ、これらを多く含む魚介類を食べている地域では、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症の少ないことがわかっています。
 
この多価不飽和脂肪酸には、血液中のコレステロールを下げる働きがあり、リノール酸が属するn-6系とリノレン酸やEPA、DHAが属するn-3系の脂肪酸があります。
 
EPA、DHAには血液を改善する共通の働きの他、それぞれ体内における役割が微妙に違うことから、両方を摂ることが必要です。
魚油にはその両方が含まれています。

EPAとはエイコサペンタ塩酸の略称で、秋刀魚、さば、いわし、あじなどの青魚に多く含まれる脂肪酸です。
特に血液のサラサラ成分として、血液への改善効果に期待ができます。
例えば血液を固める血小板が集まるのを抑えて、血液の塊である血栓を作りにくくして、血流を良くします。
 
 
DHAとはドコサヘキサ塩酸の略称で、同じ血液サラサラ成分ですが、血管を流れる赤血球の細胞膜をやわらかくして、脳や神経系への血流を促す効果があります。
  
EPAとDHAのどちらも自分の体で作ることができない為、外からとらなければならない必須脂肪酸なのです。
 
参考までに
青魚と白身魚100g当たりのEPAとDHAを食品成分表2022で比較してみると
【青魚】
<魚 g > <EPA ㎎> <DHA㎎>
さんま(生)   1500    2200
まさば(生)     690      970
まいわし(生)    780      870
まあじ(生)  300    570
 ちなみに・・・
うなぎ(生)  580    1100
うなぎ蒲焼   750       1300

【白身魚】
まがれい(生) 180      96
まだら(生)    24      42

ただし、いづれの脂肪酸も脂質量の多い食品ですので、いくら健康によいと言っても、食べ過ぎはエネルギーの過剰摂取につながるので本末転倒ですね。
適正な量の脂肪酸を摂取するためにも、適正量の脂質を含む食事に注意が必要です。
 

〇雑感


本日の痩せた秋刀魚は食べるところが少なかったものの、脂がのっていました。一尾350円。

秋刀魚の脂が、焼いて滴る油に変化して、たっぷりとEPAとDHAをいただきました。
大根おろしと柑橘果汁、少量のしょうゆが香って、早足で通り過ぎる秋の深まりに浸りました。
 
今回もありがとうございました。
 
 

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