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煙に巻かれる

タバコの話をしよう

吸い始めたのは19歳の・・・二十歳になる少し前のことだった

厳密には子供の頃に親に隠れておじさんのタバコだったか、或いは友達の家に行ったときにそこの親のタバコだったかを悪戯に吸ってゲボゲボ涙したときということになるが・・・
自分で買って、ちゃんと吸ったのは、うっかり家の鍵を持って出るのを忘れて夜中に親を起こす気になれず、ふとタバコを吸ってみようと、当時住んでいたマンションの前のパン屋さんに設置されていた自動販売機でライターとタバコを買って吸った

銘柄はKOOLでこれは今でも売っているメンソールの洋もくだ

なぜKOOLかといえば、高校のときよく遊んでいた友達の一人がサーファーで、彼のスタイルとそのタバコがよく似合っていてあこがれていたというのが、まぁ、動機といえば動機か

彼曰く、KOOLは黒人の不良が吸うタバコだとか

いや、正直それはどうだったのかはわからないが、二人とも洋楽が好きで、当時は特に80年代に花開いたヒップホップとニューウェイブの流れを汲むサウンドが好きで・・・そういえば高校卒業のパーティは二人で企画をして、六本木のディスコ・・・いや、当時はもうクラブという言葉があったのだったか

そこで流す曲の選曲は本当に楽しかった

当時KOOLは比較的高いタバコで、マイセン(マイルドセブン)やブンタ(セブンスター)が200円から220円に値上げした頃、280円していたと記憶している

ときどきブンタやマイセンに浮気しつつ、マイセンのメンソールはどうも口に合わず、セーラムは女性が吸うイメージだったか、どのみちメンソールだと僕にはKOOL一択だった

それがサムタイムライトという銘柄が発売になった頃、付き合っていた女性がそれを吸っていたので、僕もそれに乗り換えた

その彼女と付き合ったのはほんの3ヶ月でフラれてしまったわけだけれども、傷心で未練が残る僕はしばらくそのままサムタイムライトを吸っていたのだけれども、流石に未練が過ぎると、ある時期からメンソールをやめてピースライトやキャスターマイルドを経て、キャスターベベル(のちにベベル)にたどり着き、結婚して二人目の子供が出来てしばらくするまで、ずっとそればかり吸っていた

タバコをやめたきっかけは
1)たまたま会社で禁煙薬の治験があった
2)タバコをやめて光回線を引く家庭内稟議
3)出かけるときにタバコを忘れた僕に娘がタバコを渡してくれたこと

とくに3番は堪えた
僕とタバコはワンセットなんだと4歳の娘に覚えられているのはまずいと思ったわけです

僕はあっけなくタバコをやめました

あとで聞いた話では、父は僕が生まれてからタバコをやめたそうな
どうやら、そういうことは繰り返されるようですね

さて、そんな僕が今、何故タバコを吸い始めたのか

きっかけはバンド仲間で全員喫煙者
タバコ休憩は、コミュニケーションの場でもある
しかしそれ以上に、その中の一人の女性とよく飲みに言っていたのですが、彼女とはどうしたって話が長くなり、ちょこちょこ貰いタバコをしていたのですが、ある時期から、彼女と会うときにはタバコを吸うのが当たり前になっていました

会話の呼吸というものがあって、タバコはそのための重要な役割を果たしていたように思います

それでも彼女と会っていないときには吸わなくてもぜんぜん平気だったんですけどね

彼女がバンドを辞めることになり、僕もそこでタバコを一旦止めました
というか、必要がなくなったということなんですけどね

さて、今、自分の意思で昼真っからタバコを吸い、家でもベランダで吸うようになったのは

1)バンドのメンバーと再度しっかりコミュニケーションをとること
2)執筆のネタとして現在どれだけ喫煙することが厳しいかの取材
3)ある人間関係について思い悩んだこと

1と2については、今週土曜日のライブを持って、目的を達成できそうなので、そこでタバコを止めることにしているわけですが・・・つまり7月13日

3についても、その件で思い悩むのはそこで止められたらいいなという自分へのけじめなのかもしれませんが、正直、関連しているかといえば、こじつけです

でもこのこじつけが、もっと大きな理由ですかね
そのことを考えるとどうにも思考が膠着してしまう

いつまでも考えるな、切り替えろと眠れない床から起きて、夜中に外の空気を吸いながら気持ちを切り替える必要があった

久しく誰かのことでここまで気をもむよなことは、なかったのですけどね

バンドを辞めた彼女のことでも、そうなってしまった後は、さっぱりしたものでした

気分転換にダイエットと喫煙と加齢臭対策をいっぺんに始めました

まぁ、そうしなければならないほど、あとを引いてしまう様な”悩みごと”というのは、忘れるくらいしか解決方法がないことなど、19のときに経験済みなんですが、だからこそ、郷愁を被らせて”忘れえぬ思い出”に硬化させるための儀式のようなものなのです

”思うことを止めようと思う”

僕にはもう、その人との想い出はタバコと同じように必要のないものだと、そう思い込ませるための作業を今、しているわけです

そうえいば去年、タバコをやめても大事に取っておいたZippoライターとベルトに引っ掛けるライターケースを捨てたとき、なんだか一つの時代をスクラップして閉じこんだような気分になったのですが、さて、13日には、同じような気分を味わうのでしょうかね

過日、いきつけのバーで”タバコは文化だよ”とタバコが出てくるヒット曲の歌詞や映画の名場面みたいな話をしたのですが、僕にとってタバコは何かといえば

”迷い”なのかもしれませんね

あの日、家に帰ることを拒んだ僕はタバコとともに旅に出て、そして新しい家族を得て、タバコを捨てた

今、バンドのメンバーの間に迷いはないし、その他もろもろ、迷っている暇はないということを、前日に書いた”まよいマイマイ”は、つまりは迷子のかたつむりは、僕だということなんですよ

でもまた、何か迷うようなことがあれば、僕はタバコを手にするのでしょう

彼はよき、相談相手、聞き上手で、気がつけば、煙に巻かれて消えていく懐かしい友達なのでしょうね

最後に
僕がFBにアップしたタバコの銘柄を覚えていてくれて、誕生日プレゼントをしてくれた方がいます
ここ最近で一番うれしいプレゼントだったかも
だからこそ、タバコは文化だと思うのです


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