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3人展に出した作品等の解説

3人展の様子↓

3人展が無事終わりました。
想像以上にお客さんが入り、キャプションとは別で作った解説が読めなかった人もいるかと思います。
そのため、興味はあったけど遠慮してしまって…という方に届け、また記録に残そうと思い新作たちの解説文を投稿いたします。


作品解説

土地の記憶

『土地の記憶』500×1150㎜ 実家周辺の小石、土、骨、植物の灰

ペット達も植物も、描かれたものたちはみんななくなった
令和4年6月、台風2号により実家の畑が崖崩れで流れ、ペットの墓も一緒に流れていった。いつまでも私はそこでお墓参りできるわけではなかった。こんな早くにあの子たちが確かに埋まっている場所がなくなるなんて思わなかった。その土から生えた植物もどこか知らない場所に撤去されるなんて思わなかった。崩れた場所以外の土地も業者が車を置くために更地になった。
土地は見る影もなくなった

足元にあるのはジュラ紀、三畳紀、ペルム紀小さな生き物が入った土や小石。土砂崩れの前からずっとある実家の地盤。死んでしまっても、形を変えて存在する。途方もない時間を跨いで、いま私が手に取っている生きていた者たち
だから大事な者がいたことを、大事な土地があったことを残したい

記憶のスケッチ

『記憶のスケッチ』230×1000㎜ 新岩絵具、クレヨン

土地の記憶の前の年に描いた実家の絵。
いままで、いろんな生き物を飼育した。
その末にたくさん死んだ。
みんな土葬した。だから脈々と命を毎年繋ぐ植物の中に君たちをみる。

クレヨンを用い、幼さの残る表現にした。

うちの野菜はおいしい

『うちの野菜はおいしい』500×230㎜ 実家周辺の小石、土、植物の灰

実家の家庭菜園でできた野菜はおいしかった。
そうだね、おいしいわけだよ。
もっと味わっておくんだった。

絵を描きながらふと思う。
ペットも野菜も園芸種の植物もみんな歪な生物だな、と。人の都合だけで産まれた生命。生殺与奪を握られている。かわいいし、美味しいし幸福のために手放せない。


こぼれた水を掬う

『こぼれた水を掬う』500×230㎜ 実家周辺の小石、土、植物の灰

姉妹のように過ごした猫が死んだ。
そう聞いた後お墓参りに実家に戻った。お墓の位置には立派に育った菜の花畑が広がっていた。
その猫と一緒にもう居られないのが悲しくて手を合わせた後、菜の花をその場でむしって食べた。
昔の私とはちがう、自分の口にした葉が何を取り込んだか自覚している

その菜の花もお墓も土砂で流れた。

土砂や落ちた植物を必死に集めて絵の具にした。集めないと、私の知らない場所に撤去されてしまう。そうなる前に。
覆水盆に返らずともその水を集める手段はある。


繋ぎとめるもの

実家の雑草から作った紙に雑草を焼いた炭で絵を描いた

死んでしまったものは何らかの形で残る。確信を持ってあのこだと言えない者になっているけれど、居る。それをかき集め人の手で残すことは、自分とあのこたち、土地、途方もない生命や星の循環の中に繋ぎとめる行為だと思っている。
今自分はどんな世界で生きているのか身体を通して知覚していく。
幼い頃から死ぬまで私は大事なあのこたちから世界を知る。


焼き物たち

一輪挿しや小鉢など 陶土、実家の土、実家の植物の灰

私は、死んでいようとあのこ達と暮らしたい。日常の中でずっと一緒に暮らせるような作品の形を模索したいと思っていた。

鹿の骨を絵の具にする過程で焼く必要があり、陶芸をする人の元へ行った。流石に骨は焼きづらいということではあったが、骨を釉薬として用いる陶器(ボーンチャイナ)があることを教えて下さった。
その話を聞いてから陶芸にも興味を持ち、私の作った岩絵具や実家の土でも焼き物ができるのではないかと取り組んでみた。
結果、粘土には向き不向きがあったものの釉薬にはなった。陶芸家さんと話す中で草木の灰が釉薬になることを知った。草にはケイ素が含まれるから、灰が高温で溶けてガラス質になるのだと。こんなにも私の身近に焼き物の材料がそろっていたのか。一緒に暮らすためにできることはまだたくさんある。

すいそう

『すいそう』85×200㎜ 実家周辺の小石、土、植物の灰

子どもの頃、水槽に居た生き物たち。
縁日で掬った子、川で、田んぼで捕まえた子。いろんな生き物がいる世界で生きることが楽しかった。捕まえてもっと知りたかったし、いろいろ捕まえたことが誇らしかった。

かびがはえてしんだ、病が流行りしんだ、飼育環境が不十分でしんだ、お世話に飽きた、水の交換時に1度にわとりに食べられて以降餌にするのが楽しくなった。

一緒に生きるにはあらゆることが足りなかった。


猛暑のある日

『猛暑のある日』85×200㎜ 実家周辺の小石、土、植物の灰

捕まえたカナヘビがオスとメスだったから卵が産まれた。冬の間水草の上で湿度を調節をし、なんとか孵化に成功した。小さいカナヘビたちのために草むらに入っては虫をとり給餌した。

大切にしていたのに、日向に放置した。
夏休みのプールに行ってくる間だけだし、遅刻しそうだから。赤ちゃんカナヘビのいる虫かごを一瞥し、近道を通り学校に向かう。

プールが終わり家に帰ると、仕事から帰った母が怒っていた。
虫かごの中には干からびた赤ちゃんカナヘビたち。黒っぽくなった体の表面は油が反射して虹色に見える。

水草と逃げ水のイメージが背景に描いてある。


こわいゆうがた

『こわいゆうがた』85×200㎜ 実家周辺の小石、土、植物の灰

小学校から引き取ったにわとりが2羽いた。
1羽は死因が分からず、1羽はころされた。
夕方になっても小屋に戻らないから探した。裏庭で胴と頭が離れた状態で見つけた。血が見当たらない


散らばるきみをみる

『散らばるきみをみる』85×300㎜ 骨

この山のどれくらいの範囲に君は広がったんだろう。
この山の植物、土、どれくらいの範囲に君だった分子があるんだろう。
その植物を食べた生き物もいるだろう。繁殖して広がっただろう。
きみに近いものを画材にした作品を作り、一緒の部屋でまた暮らしたい。
そんなことを想いながら、石を絵の具にしていたある日、猟師の方が身近にいることを教えてもらった。
骨を買わせてください。そう頼むと、実家の山と続く土地で暮らしていた鹿の骨を快く売ってくれた。この絵はその骨のみで描いた。鹿はとても美味しかった。

実家の裏手の山に帯状のへこみがある。地図を見るに鉄塔をつくるために切り開かれた通路を作った跡なのではないかと思う。その山の模様をパンダ柄のうさぎの頭部の一部にして描いた。


しみ

『散らばるきみをみる』85×300㎜ 実家の植物の灰

これは実家の植物の灰のみで描いている。最もこの子に近い植物たち。
溶けるからだ、滲みだす栄養、いつも自分の中にある落ちない染み。


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ここまで読んでくださりありがとうございました。

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