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Book/Film Reviews

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書評集
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2023年2月の記事一覧

[書評] 200年前に突如として江戸に現れた少年は異界からの帰還者だった

平田 篤胤『天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞』(KADOKAWA, 2018) 興味の尽きない本だ。神道書なのだが、中身は、国学者、平田篤胤(1776-1843)による「天狗にさらわれた少年」へのインタビューである。アイルランドでも妖精にさらわれた人への聞き書きがある。異界の様子を伝える点では似ている。 この方面に関心を持つ人にとっては、またとない研究対象になり得るものなのだが、本書の「はじめに」という前書きは誤解を与えかねない。現代語への訳者は〈篤胤は、自分が直接、常

[書評] 量子力学のふしぎな性質を情報科学的な観点から理解しなおし、その量子性を積極的に応用する量子情報科学の誕生

藤井啓祐『驚異の量子コンピュータ 宇宙最強マシンへの挑戦』(岩波書店、2019) 2022年のノーベル物理学賞が「量子もつれ」に与えられたことで、世の中の視線は量子の可能性に向いている。某国が量子コンピュータを使って何やら世界を動かすようなことをやっているとも囁かれている。 現代人にとって、量子コンピュータを知ることは喫緊の課題となった。量子コンピュータとは何物なのかについて、少しでも理解できればと思う人が手に取るのにふさわしい本だ。また、未来はこういう研究をしたいという

[書評] 脳腸相関にとどまらない脳腸内細菌相関という新しい人間観

内藤裕二、小林弘幸、中島淳『腸すごい!』(文響社、2022) 脳腸相関にとどまらない脳腸内細菌相関という新しい人間観 脳腸相関(brain-gut interaction)という言葉はまだ理解できる。脳と腸とに相互作用があるという考え方だ。 が、脳と腸内細菌との相関(brain-gut-microbiotica interaction)とは。なにか、ぐっと深くなる感じがする。 * 腸の調子と脳の働きとが関連しているようだというのは、日頃感じることは多いだろう。 だ

[書評] 新約外典の文献ガイド

Gustavo Vazquez Lozano, 'The Apocryphal Gospels: The History of the New Testament Apocrypha Not Included in the Bible' (2017) 新約聖書の外典を読もうとすると、あまりの数の多さに、どれから読んでいいか途方にくれることがある。そんなときに本書のようなガイドがあれば便利だ。 ただし、〈読書〉ガイドとは言いにくい。なぜかというと、本書を読んで興味を惹かれた

[書評] Apparition と Authority

Gustavo Vázquez Lozano, 'Mary Magdalene: The Life and Legacy of the Woman Who Witnessed the Crucifixion and Resurrection of Jesus' (2017) マグダラのマリアに関する本は両極端に分かれる。 マリアを「使徒の中の使徒」(apostolorum apostola)と認めるが、四福音書に書かれたことに厳格に立脚する立場がひとつ。['apostol

[書評] 宇宙情報の密度が濃い

坂本廣志『坂本廣志とポン太のQ&A集 第一巻』(2017) 第1巻〜第15巻まであるシリーズだが、第15巻をのぞき、ほぼ次のテーマが扱われる。 ◾️A【通説考 古代史】 ◾️B【宇宙・人】 ◾️C【地球 環境】 ◾️D【政経軍】 ◾️E【免疫】 ◾️F【能力・魂】 ◾️G【古史伝】 第15巻のみ、E, F, Gの3テーマ。 * あまりにも宇宙の情報密度が濃いので、ここでは第15巻まで載っている、Gの分野(古史伝)のみ、少し整理してみたい(G がない巻については A)

[書評] ピラミッドがつなぐ古代の日本とエジプト

古銀 剛〈超古代ピラミッド「葦嶽山」のオリオン・ミステリー〉(「ムー」2022年9月号) ピラミッドがつなぐ古代の日本とエジプト 現代の日本でピラミッドが世間の注目を浴びたことが2回ある。1930年代と1980年代である。 その2回めのブームのときのことを憶えている人もいるかもしれない。その当時、「近代ピラミッド協会」が設立されたが、作ったのは畏友の故・吉永進一氏であった。氏とは同じクラブ(UFO超心理研究会)に所属し、飛鳥遺跡などに宇宙考古学的調査に行ったことがある。