REーSTART~幸福な人生~

あてんしょん

・主人公が死んじゃってる(自殺ネタ。でも明るい)

・作者の実話。プライバシーとかは配慮してあるよ

・天国とか地獄とか普通に出てくる。

そんなモン信じてねー馬鹿らしーと思う人は読まない方が良い


最後に・・・

私の高校時代のクラスに向けて、書いた小説です。

私はつい最近まで級友の事を恨んでいたし、自分ばかりが被害者だと思っていました。だけど、母から「復讐に囚われて生きるのはヤメなさい」そう言われてハッとなりました。遠足などの集団生活についていけず、手を引いて輪の中に入れてくれたのは誰だったか。(この級友には、非常に感謝しています。)ケーキやお菓子などを分けてくれ、「授業ついていける?大丈夫?」と優しく声を掛けてくれたのは誰だったか。


全て忘れていました。全て忘れ、「あいつらが悪い、あいつらが憎い」

と恨みつらみを吐いていました。とても大人気なかったと思います。

同窓会あるのかも怪しいし、正直(クラス自体が)派手に空中分解していましたので

今更あのクラスがどうなるとも思えませんがー

この小説を読んだ人、私に関わった全ての方が、幸せになるようにと

願いを込めてこの小説を執筆しました。お手すきのある時で結構ですので、

最後までこの小説を読んで頂ければ幸いに存じます。

ラブ&ピースじゃ、のう爺。(銀○の某王子を思い浮かべながら)


平成29年9月8日 ―我が国の自殺者数が一人でも減るようにと願いを込めてー有村梨沙





『何一つ良いことのない、とても最悪な人生だった』 

そう遺書を書き残し有村梨沙子こと私は、自ら命を絶った。


集団競技の班分けで一言も会話を交わしたことの無かった繋がりの薄いクラスメイトと班を組まされ、練習をサボる人の注意係という損な役回り。おまけに雑用まで押し付けられ、ふんだりけったりの高校生活だった。

社会に出てからも理不尽ないじめや上司からのパワハラなどに遭い、生きてて良かった等と思ったことは一度もなかった。「いつになったら仕事を覚えるんだ」「甘やかされて育ったんだろう」冷たく、厳しい言葉を何度も浴びさせられた。日に日に悪化する職場のイジメにより、精神科通いを余儀なくされた。


(こんな世の中、早くブッ壊れてしまえば良い)


心の底からそう思っていた。これ以上生きていても良いことなどないし、いっそ転生した方が、良い人生を歩めるのではないか。消えない恨みや深い傷を抱えて生きるのも、もう限界だった。


「キミはいつまで復讐に囚われているんだ。

いい加減、前に踏み出せ。憎しみを喜びと感謝に変えろ。

そうすれば道が開けてくるぞ。本当じゃ」


天国に行ったら、初老の妖精が一言、パッと目の前に現れて言った。

死んでから言っても遅いけど。

一言付け足してそう言ったが、その声は何処か哀しそうだった。


「班決めでわざと知らない人ばかりのグループに入れられた?

新しい友人が出来て良かったじゃないか。特定の人とばかり付き合うより、視野も広がるし。物盗られた訳でもあるまいし、大袈裟な。


毎日パワハラに遭った?『自分は同じことをしない』と、人間的に成長出来て良かったじゃないか。それに、助けてくれた人も居たんだろう。

復讐にばかり囚われているキミに、その姿は見えないだろうがね」


偉そうな妖精だ、と思った。だけど、妖精の言葉が耳をついて離れないのは何故だろうか。私はなにか、とても大事な事を忘れていた気がする。


「ホレ、これが恨みつらみを消して更生したお前の姿じゃ」


パパパパーン。

妖精が杖のようなものを一振りすると、モニターが出現し、

そこにTVのような映像が映し出された。


「ありがとうねぇ、梨沙子ちゃん。いつも私の話を聞いてくれて。

わしゃ身内が居ないし、ずうっと一人だったから話相手が出来て嬉しいんよ」

「この前の投稿読んだよ、有村さん。私も○○しようって思った。

今まで知らなかったことに気付かせてくれてありがとう」


初老の老婆から若い女性まで、その映像の中では多くの人が笑っている。

母親も涙を流して喜んでいる。良かったねぇ、と安堵の表情を浮かべている。


「・・・何ですか、これは」

画面を注視し、私は呟くようにそう言った。

画面の中の私は何をしているのだろう?

少なくとも、今の自分より幸せそうだ。


「何ってコレ、復讐に囚われなかった時のキミ」


「な、何それ・・・」


意味が分からないと思った。ひょっとして、この妖精は意地悪をしているのではないだろうか?人生で一度も良いことがなかった私のために、せめて、こんな良い人生が歩めたかもしれないという事を伝えたかったのだろうか。


「有り得ないわよ、私がこんな幸福な人生を歩むなんて。

有り得ない、私の人生は生まれた時から不幸だったの、そうに違いないわ」


そうだ、そうに違いないと心の中でそう叫んだが、

胸に湧き上がる違和感はどうしても拭い切れなかった。


「君も幸せな人生を歩める可能性があったのに。

本当に死んじゃうなんてバカだね~皆もきっと君の事笑ってるよ」


「・・・良いですよ、今更後悔なんかしても遅いですから。

さっさと天国へ連れてって下さい」


天国に行くのか、それとも地獄に行くのか。

完全に善人とも言えないから、地獄へ連れて行かれるのか。

どちらでも良い。どっちでも良い。どちらでも良いから早く未練の残らない場所へ連れて行って欲しかった。気持ちが溢れて拭い切れなくなる、その前に。



「誰が天国へ連れて行くといった」


しかめっ面をして妖精は言った。

え、まさかの地獄?予想外の事態に目を丸くする。


「君には一回地上に降りてもらう。自殺生還者のお手本として、実験台になってもらうんだ。良いか、間違ってもスペチュ・・・なんとかいうモンに目覚めるなよ」


「な、何を言って―」


「一日に平均90人。ー日本人の自殺者の数だ。病死や事故で死ぬならまだしもー何人、何十人と自殺する奴の世話をするワシの身にもなっとくれ。

ぶっちゃけ面倒臭いんじゃ。未練があるから連れて行くのにも時間掛かるし。小言なんか聞かされて、こっちも気が滅入りそうじゃ」


ハッキリとした口調で、初老の男性ーもとい、妖精はそう言った。

私はといえば、この状況も妖精の言っている言葉の意味も解らず、

ただ黙って妖精の話を聞いていた。


「元の世界ーあっちの世界に行ったら、私はどうすれば良いんですか」


「整形をしろ、整形を。お主、生前容姿の事で随分悩んでたみたいだがー

お金も時間もあるんだから、美容整形の一つくらいしたらどうじゃ。

軽く二重になるくらい、今の時代整形でもなんでもないわ」


初対面の相手に面と向かって整形とは、失礼な。

でもある意味真理を突いているかもしれないと、生前ウダウダ言いながら何もしなかった自分を思い出し、そう思った。


「いや、でも私の場合ケロイド体質なんで、整形は結構抵抗あるっていうかー

歳取って崩れるのも怖いし」


「整形が駄目なら、せめて服装と髪型を整えい。あとメイクもな。

案外、それだけで結構変わるぞ」


生き返るだの、実験台になれだの、この妖精は本気でそう言っているのだろうか。

そうは思えないのだが、このまま終わるのも惜しいと考え、力強く相槌を打つ。


「次に、ラブ&ピース。高校時代のクラスメイトや、支えてくれる友人に感謝するんじゃ。怒りという感情を全て忘れて、生きてみたまえ」


「それはちょっと難しいかな・・・やっぱいじめられた事とかショックだったし。過ぎたことはもう取り戻せないし」


「・・・もうやり直しは出来んのか?本当に、そう思うのか?」


「・・・分からない、だって考えたことも無かったから。

正直、このままで良いとも思ったし」


「誰よりも、クラスを愛しているからこそ強くそう思うんじゃないのか。

お主、顔に『とても悲しい』と書いてあるよ」


これ以上話を聞くと、涙が止まらなくなりそうだった。

溢れんばかりの感情を抑えながら、息を吐いて私は言った。


「やってみるよ、爺さん。出来るかどうかは、分かんないけど」


「うむ、その心意気じゃ。あと誰が爺じゃ。

ワシの事はイケメン妖精と呼べい」


分かった、と力強く頷いて、光輝く扉の前に立った。

期待と不安で、脈うつ心臓の音が早くなる。


「分かってると思うが、二度目はないぞ」

「はい、解ってます。でも、どうしても死にたくなったらー

自殺とか考えるのも駄目ですか?」

「考えるくらいは良いじゃろ。でも、実行する前にもう一回考えい。

『復讐と悲しみに囚われず、前向きに人生を生きてるかどうか』

って事をな」


妖精に連れられ、地上に降りる。

これからどうなるのだろうか?全てが上手くいくとも思えない。

過去に背負った大きな傷が、そう簡単に塞がるとも思えない。


(―だけど、私はやってみせる)


前を向いて笑顔を浮かべた瞬間、私はどんな人生を歩むのだろうか。

誰かや何かの為に生きた瞬間、私はどんな人生を歩むのだろうか。

妖精の言葉を聞いたらとても知りたくなった。単純だと言われても良い。

とにかく、私は知りたくなったのだ。もしかしたらあったのかもしれない、

とてもとても幸福な人生を。






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