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ナチュラルビューティーな民藝に惹かれて。

民藝って好きですか?

私は器や、織物、染め物、籠、などが好きで、油断すると集めたくなる習性があります。日本も海外も旅をすると、その土地の焼き物や特産品が気になって仕方がない。学生時代は、タイやべトナム、インドネシアなどのアジアに夢中になり、卒業後はヨーロッパ、特に北欧とイギリスは何度も足を運んでスーツケースいっぱいに陶器を詰め込んで帰ってきたりしていました。

少し大人になってから国内旅行が増えたこともあり、和食器や民芸品に興味が出てきたのですが、どっぷり日本ぽいものもかっこいいとは思いつつ、やはり、どこか『洋』な雰囲気を感じられる、もしかしたら海外にも似たようなものがありそうかもね、でも和食器なんだよね、という微妙なラインの陶器に心惹かれます。あまり野暮ったくない感じ。粗野ではない感じ、と言ったらいいのでしょうか。

今、日本橋高島屋8階で『民藝展』が開催されています。

私の大好きなインテリアデザイナーの中林さんがスタイリングされているブースの写真を見て、早速行きたくなり行ってきました。

実は、このスタイリングをされたコンセプトや、普段のスタイリングで目指す方向性など、柱のモニターから流れるインタビュー動画で観ることができます。

そのインタビューを拝見して、常にブレがなく、中林さんらしいスタイリングが続けられるのは、

『好きなことを言語化する』

ことができているからなのかもしれない。そう感じられるインタビューでした。感覚的にこれが好き、というものはたくさんあって、それがなぜ好きかをきちんと言語化できるかどうか。”感性”という伝えることが難しいことを誰もが理解できるように言葉で表現する。きっと、それをすることで、自分自身の身体にもしっかり沁み渡り、無駄や迷いが削ぎ落とされて、ブレずにまっすぐ『らしく』なれる。

きっと、好きなことだけではなく、嫌いなことや、引っかかること、自分の感情が揺れた時には『自分に問う』ことが必要なんだ、と。

私がnoteを始めたのは、『表現をすること』『思考を深めること』をトレーニングしたいと思ったから。忙殺される毎日のなかでできていなかった『自分に問う』ことをこのnoteでしていきたい。

と、民藝展の話からかなり逸れてしまいましたが、私自身が今回気になって購入した器たちです。

熊本 小代焼

熊本県北部で江戸時代初期から続く、伝統的な焼き物。鉄分を多く含み小石粒が多い小代粘土に藁灰、木灰、長石などを釉薬として用いて、焼き物としては高温で焼成される。色によって、青小代、黄小大、白小代、飴小代に分けられている。

どうしてこの器だったんだろう。やはりどこかで『洋』な雰囲気を感じられること、うっすら見えるピンクのラインや、黄色の発色に繊細さもあり、焼物のどっしりとした力強さと色彩の上品さのギャップに惹かれました。深さのあるタイプなので、サラダはもちろん、パスタ、うどん、お蕎麦、などなど和洋どちらでも使える感じがいいですね。

角皿は、こんな風にスイーツをいただいたり、薬味置きとしても重宝しそう。

そして最後に、「民藝」とは。

会場では、”民藝がわかる10のキーワード”として、わかりやすい紹介がありました。

素朴なかたち、簡潔な表現の中に、モノづくりや暮らしに対する実直な精神が宿るといわれる民藝。そもそも柳宗悦をはじめとした民藝運動家が大正時代から『民藝』と名付けて活動を開始。『宗悦は、ヨーロッパ文化に憧れる反面、東洋や日本にしかない独自の輝き、土地に根ざした固有の価値とは何かを常に考えていた。しかし、誰も注目しないアノニマス(匿名)なモノの中に西洋美術に匹敵するほどの美の創造主があることに気づいたときは、驚きと大きな感動を覚えたに違いありません』。明治維新以降の近代化で失われていく民族や文化の固有の価値を広く問いかけようとしていたのではないか。

民藝キーワード 1. 柳宗悦

民藝運動の創始者。従来の美術的価値とは一線を画する、大衆から生まれた美しい品々を民衆的工芸=民藝と名付け、濱田庄司、河井寛次郎らと共に広く伝える民藝運動を展開。1936年には自邸脇に自らが収集した1万7千点の民藝を収蔵する『日本民藝館』を開設。

若いときは西欧近代美術、朝鮮文化に興味があった。『民藝』という言葉を生み出す一年前の35歳の時には、ソウルで『朝鮮民族美術館』を開設している。雑誌『工藝』や展覧会、日本民藝館を通じて『民藝』を広く伝えた。

民藝キーワード2. 日常的に使うもの

工芸は観賞用もしくは嗜好品であり、ユーザーや目的が限定されているのに対し、民藝は生活に必要な日用品であり、一般大衆がユーザーである。機能性が第一で華美ではないが、時代性や地域性を反映した独創的な手法や特徴を見出すのも民藝を楽しむポイント。

民藝キーワード3. 純粋で健康な美

貴族的な意識(封建的意識)により作られた民藝に対する差別的な偏見に対し、柳は、民主主義的価値観を持って、人々の生活に必要不可欠なものを適性に供給してきた民藝のものづくりの精神にピュアな美しさを感じ取り『健康の美』と解説。質実剛健で形も色も質素で単純だが、民藝には何ものにも変えがたいナチュラルビューティーが内包されている。

ハッとしたのは、ナチュラルビューティーという表現。『民藝』はとにかく自然体であることが美しいもの。昔の製法や材料にこだわりながらも今は今の時代の中で自然体で美しいと感じられるように変わってきているのだろう。だからこそ錆びなくて私たちを惹きつける。『本質』や『意味』を見出すことが強く求められるこれからの時代に、『民藝』は再びとても重要な意味を持つ気がする。

民藝キーワード4. つくり手の名前はわかりません

民藝のつくり手が、芸術的な評価や社会的な地位を求めず、使われることだけを目指して、裏書きや函入れもせず、無心に作り続けることに専念した。功名心とは無縁の、無私の境地から生まれたものだかこそ、余計な説明なしにその美しさを体感できる。

付加価値を付けていくことでものを売っていく今の時代において、とても難しい精神だと思う。それでもこうやって名前ではなく『背景』や『歴史』、『ストーリー』を知ることで私たちがより魅了されるとすれば、柳宗悦のような『伝える人』の役割がとても重要だったのだと気づく。

民藝キーワード5. 分業によって作られています

民藝は工程ごとに分業制をとっているものがほとんど。それぞれの専門技能を持つ人々が関わってうまく連携を取り合うことでコンスタントな物品供給を可能にした。地域のネットワークを大切に密接な人間関係を築いていた古き良き日本社会の時代に発展した形。これをベースに、合理的な仕組みへ転換することで近代以降の日本の大量生産システムへ移行・完成していった。

民藝キーワード6. とにかくリーズナブル

手づくりのために生産にそれなりの手間と時間がかかるのに、ユーザーが手を伸ばしやすい存在を目指し、適正な価格帯に仕上がるように利益を顧みず、素材選びや製造プロセスにさまざまな工夫が施されていた。

民藝にハマるのは、”日常にちょっとした豊さ”を感じられるものであるからだと思う。人の手により大切に作られたもので温かみがあり、人間味を感じる。人間一人が持てるものの量には限りがある中で、廉価な大量生産に溢れた生活が心地よいのか、自分が好きだと思う価値観で選んだものに囲まれて生活することが心満たされるのか。民藝好きは後者である。

民藝キーワード7. 地方色豊かです

ありとあらゆる地域に民藝は存在する。その地域でしか入手できない素材を使っているものもあり、ものを通して、地域ごとの特色のある伝統や風習を感じ取ることができるのも、民藝の楽しみ方のひとつである。

民藝キーワード8. 原点は江戸文化にあります

戦国の世に終わりを告げ、安定した時代を築いた江戸期は、民衆に平和をもたらしただけでなく、貨幣経済や産業振興にも大きな進展を及ぼした。一方で鎖国により国内の自給自足システムが発展し物流が盛んに。江戸後期の化政文化に代表されるように、大衆にも芸術に触れる機会が増えて生活への意識が高まり、レベルの高いものづくりが始まったのではないか。

文化が発展するには政治の安定が不可欠。文化どころではない時代には文化は発展しない。

民藝キーワード9. 丈夫で品質も確か

民藝にとって重要なのは、ピュアなものづくりの精神だけでなく、高い実用性を備え、できる限り長い間の使用に耐えうることができる堅牢さだ。丁寧で細やかな配慮は、日本のあらゆるものづくりの根底に流れる思想だと言える。

民藝キーワード10. 可能な限り大量生産しました

広く多くの人に使われることを目指した民藝では、できる限りの数量を作り、供給することが必然的な目的となった。手作業による民藝には生産数に限りがある。可能な限りシンプルな方法論に収めるという合理的なものづくりの姿勢がそこにはある。


ただただ好きだった『民藝』を少しだけ詳しく知ることができて、より好きになりました。日本民藝館にも行ってみたいし、これまであまり興味のなかった歴史も紐解いてみたい。これからの時代にまた『民藝』に宿る精神がより重要になってくる気がしてならない。そんなことを思う企画展でした。


参照:民藝展内展示資料、DJ_DESIGN 2017年1月号『完全保存版うつわの教科書』


ではまた。

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