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遠い昔 ことばがなかったころの

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ことばにならない けれど 心動くなにか 遠い昔 ことばがなかったころから 心を動かしてきたなにか そこに〈ことば〉を見つけてくれてきた人々に 感謝を込めて
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遠い昔 ことばがなかったころの〈6〉

遠い昔 ことばがなかったころの〈6〉

石さん、
ごきげんいかがですか?

今日はさんぽの途中、
角を曲がることにしました。
久しぶりに、
石さんに会いたくなりました。

今朝起きる少し前に、
ふと思ったことがあって。
頭から消える前に、
枕元にいつも置いてあるメモ用紙を、
あわててたぐり寄せて、
書きとめました。

………………………………

自分がことばを、
初めて拾い上げた日。
その時どんな思いで、
そのことばを拾い上げたんだろう

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遠い昔 ことばがなかったころの〈5〉

遠い昔 ことばがなかったころの〈5〉

じっと待っています。
雪がとけるまで。

どんなに長く生きてきても、
昨日、頭の上に積もった雪を
どかすことはできないのです、
わたくしは。
この雪は、
溶けるまで、
このままです。

うさぎさん、
今日は雪道でしたでしょうに、
あの角曲がって来てくださって、
ありがとう。
君は雪の上に、
足跡をつけられます。
がにまた、うちまた、
けんけんぱっと。

わたくしは、
ただ、
じっと待っております。

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遠い昔 ことばがなかったころの〈4〉

遠い昔 ことばがなかったころの〈4〉

しばらくの間、
ここにいましょうか。
わたくしは、そう決めて、
ここで、
空を眺めておりました。

ある日、
苔が「私も。」と言うので、
ここはなかなか居心地がよいですから、
一緒におりましょう。
ということになりました。

すると、その日から…
雨の音程が変わりました。
雨の香りがするようになりました。
雨は沁みこむものになりました。

………………………………

うさぎさん、
今日はそんな話で

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遠い昔 ことばがなかったころの〈3〉

遠い昔 ことばがなかったころの〈3〉

木々の葉が色付いて、
夜空に見える星が、
冬の星になってきました。
石さん、
あなたは、
ことばがうまれる
ずっとずっと前から、
頭の上に、
黄色や赤色の葉っぱをのせて、
頭の上に、
星をめぐらせて、
ここに居ます。
人は、
あるひとつのことを、
〈ことば〉にして、
良いことにも、
悪いことにも、
して、
今日ここに居ます。

頭の上に、
葉っぱをのせて、
星と共に居る。
そのことが、
良いことで

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遠い昔 ことばがなかったころの〈2〉

遠い昔 ことばがなかったころの〈2〉

葉っぱや、種、木の実を、
つい拾ってしまいます。
なんで?と聞かれても、
なんで拾ってしまうのか、
言葉にできないのです。
けれど、なんとなく、
血がそうさせるのだ、
なんて、
心の中でつぶやきながら、
足を止めてはまた、つい、
拾ってしまいます。

なんで?に、
言葉が見つからない。
そういうことが、
私はたくさんあります。

遠い昔、鳥だった頃、
遠い昔、言葉がなかった頃の、
思い、憶い、懐い

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遠い昔 ことばがなかったころの

遠い昔 ことばがなかったころの

例えば“美しい“という言葉は、
遠い昔、まだ言葉を持たなかった頃、
今日咲いた花を発見した時、
月を見上げた時、
体の、心の奥で、
何かが動き、うまれた思いを
いつの頃か、誰かが
言葉というカタチに
してくれたもの
だと、思うのです。

言葉がなかった頃の
憶い、懐い。
言葉にならない体の、心の、
奥の奥の奥にあるものを、
思い、想い、考い《おもい》…
いつも言葉を探します。

絵はむずかしい

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