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ベーターカロチン信仰の罠、三石巌より

※画像提供、出典はこちらの本です。

医学常識はウソだらけ/三石巌 (著)

(出版社より)
「人間の体には、100歳を過ぎても健康でいられる力が備わっています」と言われます。
しかし、薬は効かず、病気は治らない。
なぜなら、
「医学常識」は間違いだらけだから。
ぜひ本書で、その「「医学常識」の間違い」を考えてみてください。

ベーターカロチン信仰の罠

ガンの予防法についても世間にはさまざまな情報が流布しているが、
やはり安易な理解は禁物である。
その内容をよく吟味せずに、
「ガンにはこれが効く」という表面的な知識だけを追いかけていると、
次々に出てくる新情報に右往左往させられることになりかねない。
たとえば一時期、ベーターカロチンという物質が脚光を浴びたことが
あった。

その名前は多くの人が耳にしたことがあるだろう。
カボチャやニンジンなどに含まれている色素の一種である。
そのベーターカロチンがガンの予防に効果があるということになり、
盛んに「緑黄色野菜を食べましょう」と言われるようになったのである。
実は、それを言い始めたのも、
「タバコ=肺ガン説」を唱えた国立がんセンターの疫学部長だった。

しばらくは、ベーターカロチンがなければ夜も日も明けないというぐらいに
もてはやされていたが、あるとき、その立場を危うくさせる出来事が起こった。
なんとベーターカロチンを過剰に摂取した人たちのあいだでガンが増えた、
という調査結果を伝える新聞記事が出たのである。
すっかりベーターカロチン信仰に染まっていた人々は、
ひどいショックを受けた。
当然のことだろう。
解毒剤だと信じて飲んでいたものが、実は毒そのものだったといわれたようなものなのだから。

なぜ、このような混乱が生じたのか。
「ベーターカロチンがガンに効く」という説も、
「ベーターカロチンがガンを増やす」という説も、
ともに疫学から導かれた結論である。
本書の初めの方で、疫学という手法がときとして大きな誤りを犯すことに
ついて述べた。

実はこの混乱も、疫学という学問の限界がもたらしたものなのである。
疫学は、ある特定の集団における病気の分布状況を調べる学問である。
「ベーターカロチンでガンが増えた」というのも、
ベーターカロチンを摂取しているイギリスの喫煙者グループの中で肺ガンが
増えたという事実から導かれたものである。

しかし、調査対象になったグループの人たちが、
まったく同じ条件で生活しているわけではない。
たしかに、ベーターカロチンを摂取している喫煙者、
という点は共通しているだろう。
だが、その中にはタンパク質やビタミンをたくさん摂っている人もいれば、
そんなことには何の注意も払っていない人もいる。
しかも生化学的な個体差は考慮されていない。

疫学という学問の手法は、わかりやすい答えを導き出すために、
そういう多様な条件を無視してしまうものであり、
これは科学的とは言えないのである。
そのため、ひどく見当違いな結論を出してしまうことが少なくない。
ベーターカロチンをめぐる正反対の結論は、
どちらも非科学的な見当違いなものだ。
もちろん、その喫煙者グループでガンが増えたのは事実だろう。

だが、ここまで読み進めてきた読者なら、ガンが一人前になって発見されるまでには20年の年月を要することを知っている。
しかも、その喫煙者グループが、20年も前から調査対象になっていたとは
考えられない。
つまり、彼らのガン細胞はベーターカロチンの摂取を始める前から、
とっくに発生していたのである。
したがって、ベーターカロチンとの因果関係はないと言わざるを得ない。

では、「ガンに効く」という説はどうか。
ベーターカロチンは活性酸素を退治するスカベンジャーの一つだから、
たしかにガンの予防につながる。
しかし、だからといってベーターカロチンさえ摂っていればガンが防げる、
というものではない。
そういう意味で、あたかも絶対的な切り札であるかのように持ち上げられた
ベーターカロチン信仰も、間違った教義のうえに立つ新興宗教のようなものにすぎなかった。

活性酸素にはさまざまな種類があるから、撃退するためのスカベンジャーも
一種類では足りない。
ベーターカロチンはビタミンEと同様、細胞膜の脂質に入り込んで働く
スカベンジャーである。
したがって、体液や細胞内のような水の中では働かない。
そちらで仕事をするスカベンジャーも摂っておかなければ、
決して十分とはいえないわけである。

また、ベーターカロチンはプロビタミンAと呼ばれるように、
ビタミンAの前駆体である。
体内にビタミンAが不足していれば、
ベーターカロチンはビタミンAに変えて使われてしまう。
すると、本来のベーターカロチンとしての仕事ができなくなる。
したがって、どんなにベーターカロチンを摂っていても、
同時にビタミンAを十分に摂取していなければ、
期待どおりに働いてもらえないのである。

☆☆☆☆☆☆☆
私の感想。
これを投稿した動機などを。
コロナ禍でネットや書籍でさまざまな新たな健康情報が溢れかえっています。
「~が~に効く」「~で解毒できる」
という情報に右往左往している状況をみて、安易に飛びついて危ういなと感じていたからです。
自分の体のことですから、健康情報の判断は自ら調べて慎重に選択していきたいですね。
みなさまが健康でありますように☆


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