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漱石デビューのススメ | 『坊っちゃん』と『三四郎』

高校時代に多くの人が通った漱石の道、『こころ』。
名作でありながらも、『こころ』を授業で習ったきり、漱石とは疎遠になってしまっている人も多いかもしれない。

もし、久しぶりに(もちろん、はじめましてでも)漱石にお近づきになりたいという方がいれば、ぜひとも『坊っちゃん』か『三四郎』を薦めたい。

『夢十夜』『文鳥』あたりも良いかもしれないが、中長編の小説として、また、個人的志向として『坊っちゃん』と『三四郎』を挙げる。
 
 

坊っちゃんのあらすじ

親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。

新潮文庫『坊っちゃん』


この有名な一文から始まる小説。

四国の中学校で数学教師として赴任した主人公は、少し思慮は足りないものの、江戸っ子気質で間違ったことはそのままにはできない正義感の持ち主。
同じ数学教師の山嵐と共に、教頭の赤シャツを懲らしめようと画策する…。


坊っちゃんをオススメしたい人

漱石は『坊っちゃん』を数日で書き上げ、またほとんど手直しもしていないというから驚きである。
半ば勢いで執筆された本作は、読者も勢いで読んでしまうことができるエンターテインメント作品だ。

また、坊っちゃんの周りの登場人物は、中学校の同僚、生徒など、ほぼ野郎で固められている。

女性が出てくるとしたら、下女の清や下宿先の婆さんといった高齢女性。マドンナも登場するが、坊っちゃんとのロマンスは全く期待できない。

恋愛要素ゼロの、むさ苦しい新任教師の奔走物語だ。だからこその面白さがある。

という訳で、『坊っちゃん』は以下のような人に坊っちゃんをオススメしたい。

  • 深く考えずに勢いで読みたい(もちろん深く読むこともできる)。

  • 恋愛要素は求めていない。

  • 正義感に満ち溢れている。

  • 職場に懲らしめたい同僚がいる。

(完全に個人的な意見であること、悪しからず。)


三四郎のあらすじ

うとうととして目が覚めると女は何時の間にか、隣の爺さんと話を始めている。

新潮文庫『三四郎』


坊っちゃんにも序文を載せたので、比較のために三四郎も載せてみたものの、ピンと来る人は少ないかもしれない。
これは、東京帝大入学のために九州から東京へ向かう汽車の中での一場面だ。

三四郎は田舎から東京に上京し、最初は都会のさまに圧倒されるが、都会の生活の中で出会った与次郎や広田先生、野々宮との交友の中で徐々に東京での居場所を見出していく。

そして、美禰子と出会い、惹かれていく…。


三四郎をオススメしたい人

読みやすさで言えば『坊っちゃん』の方が勝るかもしれないが、それでも個人的には『三四郎』を漱石デビューに薦めたい。
その後の漱石作品への道標になろう。

『坊っちゃん』までとは言わずとも、ユーモア溢れる文や愛すべき個性的な登場人物もあれば、漱石の、自然の事物や人物のさりげない行動に人の感情を暗喩させる方法も見ることができる。

そして、美禰子と三四郎の関係が目を離せない。
美禰子、三四郎を弄んでいるのか…!?
三四郎、もうちょっと気の利いたことできないの…!?


ということで、『三四郎』については以下のような人にオススメしたい。

  • これから漱石作品をいろいろ読んでいきたい。

  • 明治時代の大学生の青春小説が読みたい。

  • 登場人物に推しを作りたい。(ちなみに私の推しは野々宮さん。)

  • 地方から上京してきて孤独を感じている。

(こちらも個人的意見であること、悪しからず。)



まとめ

以上、漱石デビューにオススメの2作品を取り上げた。
かくいう私自身も、まだ読めていない漱石作品があるので、あんまり偉そうなことは言えない。

が、漱石を読んでみたいけれど何から読めば良いか分からない人の一助となれば幸いだ。

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