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授業ナッジ④5月の子ども(ワークシート)【行動経済学×学校教育】

本記事は、授業ナッジ第4話になります。
前回の記事(第3話)⇩


ワークシートの構成

中学国語 学級の実態に応じて難易度を調整していく


小2国語 細かな読み取りやパフォーマンス課題も導入可

めあて

本時の「めあて」は、単元計画表の「めあて」と同様のものを記載しました。「単元計画」「板書」と併せて本時の「めあて」を3通り示すことで、「今日の授業で何ができることを目指しているのか」を明確にしました。

大問1(基本問題)

「基本問題」はワークシート1の問題であり、教師が口頭で確認していく基本的な説明や発問、さらには「課題問題」を解答するために必要な知識に関する内容を設定します。国語に限らずどの教科でも同じです。

「基本問題」については、答えを授業開始時から黒板に掲示し、生徒自身に答え合わせを行わせます。授業開始時から答えが示されていることで「何もできない」という状態をなくすようにしました。

これまで本校の生徒が「最初の問題でやる気を失う」姿を多く見てきました。
そこで「学習の質を高める」ことよりも、「学習に向かわせるきっかけをつくる」ことを第一に考えてワークシートを構成しました。

初めは解答のみを写す生徒もいましたが、全てを放棄して寝ていた状態から考えると、「学習に向かう姿勢」としては十分でした。
当然、毎時間解答を書き写している生徒は課題を達成しているのに、テストで点数が取れないという現実と直面することになります。
しかし、その経験こそが「学習の質」と向き合う必要性を生み出し、後の振り返りにつながっていきます。

大問2(課題問題)

「課題問題」はワークシート2番目の問題です。学んだ知識を使う問題や、思考や判断、表現を試す問題になります。自分以外の複数の生徒に解答の説明をすることを課題の達成条件とし、説明を聞いた生徒は間違いや疑問点を指摘し、納得できたらサインをします。「基本問題」と同じように、思考を働かせずに説明したり、サインをしたりすることもできる自由を与えることで、「学習に向かう姿勢」のハードルを低くします。同時に、テストや評価に結びつかない経験を通して、自身の「学習の質」と向き合う必要性が生まれるようになっています。

5月の生徒の様子

基本問題に取り組む様子

「基本問題」に取り組み始めた際、生徒たちはさまざまな学び方を選びました。意外だったのは「黒板に掲示された解答」を最初から見ようとする生徒が少なかったことです。授業後に生徒たちに尋ねたところ、「解答を常に確認できることで安心感があり、まずは自分で解いてみようと思った」という返答が多く寄せられました。

生徒Aは昨年度、すべての授業を放棄していましたが、解答を書き写すようになりました。4月末の古典の授業では、「言葉の意味を覚えることならできるかもしれない」と言い、解答を書き写した後、他の生徒たちと一緒に熱心に暗記を始める姿が見られました。

課題問題に取り組む様子

「課題問題」では、他の生徒に解答を説明したり、サインをしたりする形式に徐々に慣れ、意欲的に取り組む姿が見られました。

生徒Aは、4月末まで評価基準の内容を理解できずにイライラすることが何度かありました。そのたびに、板書に掲示された3つの力(下記画像)を指し示し「自分で考えたか」「他者と協力したか」を確認しました。「自分で考えた」ことには毎回頷いていましたが、「他者と協力した」ことにはほとんど首を横に振っていました。

板書の構成については、第2話の記事で解説しています

生徒Aはプライドが高く、他者に聞くことを恥ずかしいと感じていました。そこで、5月の間は「他者と協力する」前に教師に質問しても良いとしました。その結果、分からない問題で立ち止まっていた生徒Aが自ら教師に質問するようになりました。同時に、他の生徒が生徒Aに教えに行く機会を見逃さず、板書の3つの力を示しながら、その生徒の行動の価値を語り続けました。

5月末には、生徒Aも他者と協力することに慣れ、3つの力を活用して自ら「課題問題」に取り組めるようになりました。

まとめ

今回は「国語」のワークシートの紹介になりましたが、どの教科も基本的に作り方は変わりません。ポイントは、ワークシートが「学習の障壁を取り除くナッジになっているか」です。とかく研究授業でも「学びの質」が取り沙汰されますが、「学習に対する姿勢」と「学習の量」から確保していくことをお薦めします。

次回は中学校の授業で使用する「単元計画表」についての記事です。
小学生でも使える考え方満載ですので、ぜひご覧ください。

次の記事↓



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