池城美菜子/Minako Ikeshiro

音楽ライター/翻訳家。 ヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カル…

池城美菜子/Minako Ikeshiro

音楽ライター/翻訳家。 ヒップホップ、R&B、レゲエのブラック・ミュージックと周辺カルチャーが得意です。 著書『ニューヨーク・フーディー』『まるごとジャマイカ体感ガイド』 翻訳書『Ho To Rap 104人のラッパーが教えるラップの神髄』『カニエ・ウェスト論』

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ビヨンセ カントリーへ 「Texas Hold’Em」と「16 Carriages」対訳&解説

ハウス・ミュージックのつぎはカントリー。 ※この記事は無料です。 ビヨンセの三部作『ルネッサンス』の第2幕は自らの故郷とアメリカ全土のルーツ・ミュージックでもあるカントリーに立ち戻ります。2024年2月のビッグニュースだった、先行の2曲「Texas Hold’Em」と「16 Carriages」というタイトルからして、サウスというか開拓時代の雰囲気をまとっています。 『ルネッサンス アクトⅠ』のツアーでは、並んでお揃いの振りで踊るラインダンスを取り入れた「エレクトリック

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    • アンドレ3000 『New Blue Moon』解説 寡黙にして、雄弁な

      Hiphop 50に際し、ラッパーの年の重ね方に想いを巡らせたらアンドレ3000の奇襲に遭いました。 まず、2023年の音楽状況。昨年の大物のリリース・ラッシュから一転、新作フィーバーはなかったものの、これ、ちょっと新しいな、という萌芽を感じさせる良い作品がプチプチ生まれた年でした。私はといえば、秋口までヒップホップ50周年関連の原稿が続いて忙しく、なんだか緊張していました。いきおい、90〜00年代の名作を聴き返す時間が長かった。 それは、自分の半生と、ゴールデン・エラに活

      • キラー・ビー/ Swarm 全エピ解説  ドナルド・グローヴァーたちが描く「スタン」の世界

        3月17日に公開されるやいなや、斜め上にグォっと話が進んで、さらにうしろにバク転を決めるような怒涛の展開で話題を集めている、アマゾン・オリジナルの『キラー・ビー』。原題は『Swarm』。ドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)がプライム・ヴィデオ(アマゾン)と数作品分の契約をしたシリーズの第1弾。共同クリエイターが『アトランタ』のシーズン3から脚本で参加しているジェニーン・ネイバーズ。ほかの制作陣も同じチーム。コメディの要素が強いサイコ・スリラーです。内容に関

        • 祝! ビルボード・チャート6週連続1位SZA『SOS』全曲解説 

          昨年末からじわじわと続いている、テイラー・スフィフトvs SZA(シザ)のチャート・トップ争い。シザの5年ぶりのセカンド・アルバム『SOS』がビルボードで連続6週の首位を死守。2位がテイラーの『ミッドナイツ』だ。シングル・チャートのHot100は逆にテイラーの12週1位だった「アンチ・ヒーロー」を、とうとうマイリー・サイラスの「フラワーズ」が抜いた。シザの「キル・ビル」は不動の6週連続2位。『SOS』から10曲以上がシングル・チャート100位内にも入っている。要は、めちゃくち

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          Don’t Sleep On Them! 2022年隠れ名盤紹介<ラップ編>

          ※この記事は無料です。 優れたアルバムと売れているアルバムは、イコールではない。 あたりまえのようで誤解されやすいこの事実が、よりくっきり出るのがヒップホップだと思っています。もちろん、売れていて優れているアルバムはあるし、資本主義である以上、売れていること自体が優れている、と判断基準をずらすことも可能。ただ、音楽が売れるには、多くの人を訴求する「わかりやすさ」が求められます。そして、語彙数が多いヒップホップにおいて、「わかりやすさ」は諸刃の剣になってしまう。90年代から「セ

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          Don’t Sleep On Them! 2022年隠れ名盤紹介<ラップ編>

          Don’t Sleep On Them! 2022年隠れ名盤紹介<歌もの編>

          ※こちらの記事は最後まで無料で読めます。 スリープ・オン、Sleep on →「〜の上で寝る」以外に、「見逃す・聴き逃す・うっかり気づかない」という意味があります。 ケンドリックにエイベルにアデルにビヨンセにハリーにテイラーにドレイク(x2)に。大物のリリースラッシュが凄まじかった2022年、何とか新作をまめにチェックできてもじっくり聴き込む時間が足りない、という贅沢な悩みを抱えたまま終わりました。ブロックハンプトンも解散するしさぁ(←地味に応えている)。 このブロ

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          エミネム、『XXL』で本音爆発

          <注>これは無料記事です。読んだ甲斐があったな、と思った場合だけ、サポートしていただけるとうれしいです。 <なぜ、このインタビューを訳すのか> エミネムの肉声を感じられる記事が、9月14日『XXL』に掲載された。『XXL』は1997年に創刊されたヒップホップ雑誌だ。現在は、ほぼ季刊で雑誌を発行するほかウェブマガジンを運営している。最近、大物のアーティストが文字媒体のインタビューにめったに応じない。VOGUEあたりのファッション誌にハリー・スタイルズやビリー・アイリッシュが

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          ビヨンセ『ルネサンス』を理解する5つのポイントと全力すぎる全曲解説

          この3部構成のプロジェクトはパンデミックだった3年の間に録音しました。じっとしている期間に、私はとてもクリエイティヴになれたのです。 アルバムを作りながら、世界が直面している恐ろしい時期から逃避できる場所を見つけました。動いてはいけない時期に、自由と冒険心を感じられるような。私が意図したのは、安全で非難されない場所をつくること。完璧主義と考えすぎから逃れられる場所。叫び、解放され、自由を感じられる場所。爆発できる、すてきな旅だったのです。 ビヨンセが6年ぶりのスタジオ・ア

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          ハリー・スタイルズ 『ハリーズ・ハウス』全曲解説

          祝! 全米・全英チャートNo.1デビュー! ケンドリック・ラマー『Mr. Moral & The Big Steppers』の全曲解説、多くの人が覗きに来てくださって、予想を上回る人数に購入していだきました。ありがとうございます(「サポート」までしてくださった方、感謝しています)。と同時に、kusege.comみたいなブログだと思ったのに、有料だったため「あれ?」と思った人も少なからずいたかと思います。プロの仕事として書いたので「申し訳ない」は少しちがうけれど、お礼の気持ち

          ハリー・スタイルズ 『ハリーズ・ハウス』全曲解説

          ケンドリック・ラマー『Mr. Morale & The Big Steppers』全曲解説

          5年ぶりの。待望の。沈黙を破って。 ケンドリック・ラマーの5作目『Mr. Morale & The Big Steppers』のリリースをめぐって、英語でも日本語でもよく見かけるキーワードである。2022年の5月13日。パンデミックが日常に溶け込み、東欧で戦争が続いている。まだ、カオスだ。 果たして、ケンドリックの新作を私はこの5年間待ち侘びていたかのか。天邪鬼になってみる。「否」である。いや、待ってはいたのだけれど、『DAMN.』も『good kid, m.A.A.d

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