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[ショートショート]NDAバー
ビルの高層にあるバーのカウンターで、俺はグラスを傾けていた。
夜景を見ながら、店内の会話に耳を傾けているのだが、肝心なところで「ピー」という音が入る。
机に置かれた名刺を盗み見れば、社名以外は黒塗りだ。
客は皆、ARグラスとヘッドホンを付けていた。
当然、俺もだ。
近くに大好きなミュージシャンがいるが、ヘッドホンのせいで声は聞こえない。
どうしても我慢できなくなって、ちょっとだけ、とヘッドホ
[ショートショート]機内持ち込み不可
空港に着くと、カウンターへ向かう。
チケットを買い、セキュリティチェックへ。
すぐに終わるはずだった。
ゲートを抜けるとき、ブザーが鳴った。
係員が重量超過と告げる。
そんなはずはない。持ち物は財布だけだし、体重も平均値だ。
この世界では、「モノを持つこと」が制限されていた。
所持品の重さに課税され、移動も制限される。
でも、持ち物は財布しかない。中身も(自慢じゃないが)相当軽い。
なんと、
[ショートショート]字幕派の宇宙人
辺境の宇宙ステーションにあるバーは、多様な種族の者でごった返していた。
運び屋の俺は、パートナーのレイと一緒に次の仕事を探している。
席に着き、ビールを注文する。
レイに目配せすると「私も同じものにする」と字幕が頭上に現れた。
彼女は言葉を字幕で伝える。最初は驚いたが、すっかり慣れた。
雑談をしながらビールを待つ。
──どぉん!
視界が揺れ、俺は床に投げ出された。
テーブルや酒が飛び散り、警
[ショートショート]レンタル時間
深夜11時半、原稿の〆切まであと30分。
推敲にはまだ半日はかかりそうだ。
仕方ない、最後の手段を使おう。
私は上着を羽織って外に出た。
春先とはいえ夜風はまだ冷たい中、早足で駅へと向かった。
真っ暗な駅前商店街に、1つだけ電気が灯る店がある。
レンタルショップ、とだけ書かれた店に入ると、時計は11時45分を指していた。
カウンターで「6……いや、12時間」と告げる。
白髪の店員は驚いた顔を上