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民話ブログ的私小説

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以前から書いていたブログ的小説、あるいは小説的ブログ。 むかしのものは加筆修正して収納。新作も順次追加中。
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記事一覧

『コロナの時代の虎』

 一見すると廃墟のようにも見える古びた二階建ての小さな店舗だが、日が落ちる頃そこを通ると…

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『田舎はこんなもん』

集落を囲む山々の稜線に、細長い建物がへばりつくように建っている。その建物は尾根伝いに回廊…

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ぽっくりさん 1

 じわじわと苦しめられて死ぬのは厭だなと、多分ほとんどの人が思う。たとえば死が確実に目前…

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短編ゴシックホラー 『悪魔城 ITABASHI』

まったく無駄な遠回りばかりだったと、これまでの人生を振り返って私は思う。 つまり「中年の…

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短編グルメ私小説 「正義の消費者」

地元の国道沿い、道の駅。 本館とは別に仮設のバラックみたいな建物があって、その中には飲食…

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短編小説 『田舎はこんなもん』

 集落を囲む山々の稜線に、細長い建物がへばりつくように建っている。建物は尾根伝いに長く延…

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『繰り返し、何度も砕かれる』

「明日、地球が粉々になるんだって」 「何それ? 粉々って、粉チーズみたいに? でも粉チーズって、最初から粉だよね。あれ、元は塊なの? その塊を砕いて粉にしてるんだっけ?」 「そうだと思う」 「そういえばさ、給食にパスタ出たじゃん」 「出たね。ソフト麺の」 「あれに付いてくる粉チーズって、小さい袋に入ってたよね。一人用の、使い切りサイズ」 「そんなのあったっけ」 「あったよ」 「思い出せない」 「いや、絶対あったし。ほら、ミートソースのときだけ付いてきたやつ。それ以外は、全然出

民話ペディア③ 『迷宮おじさん(架空生物)』

神奈川県川崎市のある会社には「迷宮おじさん」が生息している。迷宮おじさんとは、以下のよう…

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魔術的リアリズムの喫茶店

おはよう! こんにちは! こんばんは!  商店街愛好家、下町グルメライターの『民話★飯Bl…

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『足の親指の爪垢を肴に吞む話』

一.  やっぱり片足を引きずらせるようにして、榎木が戻ってきた。榎木の合図を確認して、小…

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爆発塩大福殺人事件 【後篇】

 もちろん塩大福が爆発して中年男が死んだ事件は、この街で大きな話題になっていた。地元住民…

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爆発塩大福殺人事件 【前篇】

 旧国鉄S駅を出てすぐに賑やかな大通りに出る。  通りの中心には寺があり、その境内に佇む…

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『ひとりぼっち おそれずに』

緊急事態宣言により、全国的に外出が制限されている。 自分の会社も基本的に休業、さしあたり…

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『ナトリウム オブ ラヴ』

梅雨に入ってから、妻の具合がよくない。 天気や気圧が不安定なせいか、いつもグッタリとして辛そうだ。悪いのは体調だけでなく気分も塞ぐようで、表情も暗い。 「炭酸水が飲みたい。そしたら気分もスッキリするかも」 なにか欲しいもの、食べたいものはないかと聞くと、妻はそう答えた。おれは早速コンビニでペットボトルの炭酸水を買ってきた。だが妻はそれを一口飲むなり、こう言った。 「ちょっと、ちがう。もっと天然の、すごい自然でさわやかな泡がシュワシュワしてるような」 そのリクエストに応