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詩『子象とかげ』

盲いた脈をたちあげるために
日向で瞼の裏庭を掘りかえす
あたたかい匂いがする方角へ
獣の感覚をもう一度召集する

便利になったぶんだけ
私たちは不便になった
四角く切り取られた空
金属の峡谷を見上げて
蒼ざめた星座をつなぐ

真夏のよる
夢見るゆめ

蒸れた草叢の温度が揺れて
群れからはぐれた子象の影
もう群集には還れない宿命
しずかな詩集を友と呼んで
机のしたに隠して黙読する
ひとりの部屋にて朗読する

ちいさなかげをたくさんあつめてひとつ
のきょだいなぞうのできあがりそれはま
ぼろしなのかもしれないそれはあくむな
のかもしれないそれはねっきょうなのか
もしれないひとみをひらいたらちいさな
かげがちってゆくちらばってゆくひとつ
ひとつのかげにかえってゆくひとみをと
じたらまたひとつひとつのかげがからだ
からきりはなされてひとつにあつまって
きょだいなどうぶつをかたちづくるもの
がたりのはじまりはじまりふくらんでふ
くらんでゆくすべてのいろをまぜてまぜ
あわせたらまっくろでおおきなかげがで
きあがるよろこびもいかりもかなしみも
たのしみもぜんぶぎゅっとつまっている
ひとりのかげはとてもちいさいからつい
ついかげのくろさにまけてきゅうしゅう
されてしまうむれからはなれられないあ
せもむれにもどれないなみだもどちらも
しょっぱくてつめたいかなしみのあじだ

集団はつよい
集団はよわい
集団はあつい
集団はうすい
集団はこわい
集団はくろい

集団はひとの影を吸いあげて
濃い影だまりをつくってゆく

ひとりはつよい
ひとりはよわい
ひとりはあつい
ひとりはうすい
ひとりはあわい
ひとりはしろい

ひとりで余白から
ひかりの色を作る

いつか脈は立ち上がって
泣いていた子象は白鳥に

ましろなゆきのなかから
おひさまのまとめざして
まっすぐとびたってゆく


photo:見出し画像:(みんなのフォトギャラリーより、めぐまつさん)
photo2~4:Unsplash
design:未来の味蕾
word & poem:未来の味蕾

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