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モネ「連作の情景」わずかな変化の瞬間を切り取ることの意味

大阪中之島美術館で行われているモネの「連作の情景」展を見に行った。2月10日から5月6日まで行われていて、連休前の平日が空いていそう~と思って今日足を運んでみた(結果、思ったより人が多くなくてよかった!)

1874年に第1回印象派展が開催されてから150年の節目を迎えることを記念し、東京と大阪を会場に国内外のモネの代表作60点以上*が一堂に会す本展では、モネの代名詞として日本でも広く親しまれている〈積みわら〉〈睡蓮〉などをモティーフとした「連作」に焦点を当てながら、時間や光とのたゆまぬ対話を続けた画家の生涯を辿ります。(中略)展示作品のすべてがモネ作品となる、壮大なモネ芸術の世界をご堪能ください。

公式サイト

印象派展と名のつく展示会はよく足を運んでいたけれど、モネオンリーの展示を見ることは初めて。もともと印象派の絵はすごい好きだった。モネはもちろん、シスレーや後期のゴッホとかも。でも、正直好きだ、というだけで、どのようにして印象派が生まれたか、どういうものが印象派と呼ばれているのか、というのがハッキリと理解できているわけではなくて。

いつも前提が分からない状態で美術館を訪れると、説明の文字を読んでいるようで理解できないモヤモヤがある。だから今回は、あらかじめ原田マハさんの「モネのあしあと」「ジヴェルニーの食卓」を読んだうえで美術館を訪れてみた。

前提の大枠を理解しておくと、印象派の変遷やモネの生涯、なぜ彼が連作をあらゆる景色で生み出していったのか、などがスッと入り込んで、いつもよりも豊かにじっくりと作品の変遷を辿ることができたような気がした。

モネは連作、といって、同じ景色(いちばん有名なのはやっぱり睡蓮)を時やさまざまな手法を経て書き続けていた。時には太陽の傾き具合や天候などを緻密に観察しながら、ただ目の前の景色の移り変わりをカンヴァスに描いていく。

たとえば、同じ景色であったとしても、季節や太陽の光、風、雨が混ざり合って織りなすことで生まれる目の前の景色は、厳密に言えば一度として同じ景色などではないのだ。私達が“あの景色”と認識しているあの景色は、日によって刻一刻と空気を、景色を、変えている。

ああ、私がなぜこんなにも印象派に惹かれるのかが、実によくわかった。私も、定点観測が好きだ。同じ景色のなかで、季節の移ろいやささやかな景色の変化を感じるのが好き。移り変わる目の前の景色が、1度たりともまったく同じ景色として見ることができない切なさ。その切なさを絵の中に閉じ込めているような、繊細な筆遣い。モネは、その瞬間瞬間を切り取ることの尊さを感じながら、ひたすらに同じ場所で同じ対象物を描き続けていたのかもしれない。

そう思うと、モネに共感をする、と言うのはおこがましいが、その想いを痛いほど感じられたのだ。変化の瞬間瞬間を切り取って、それの移り変わりに愛おしさや、もう二度と同じ景色を味わえないことの切なさを感じること。目の前に広がるモネの目を通した景色を見ながら、そんなささいな変化をいつまでも愛していたいな、と思う。

写真OKの展示もいくつかあった


印象派の好きなところはほかにもあって、曖昧さを許している感じがするところ。たとえば、空の色も青一色ではなくて、濃い青、薄い青、夕暮れや夜明けの時にはオレンジやピンク色、というように、重なりや曖昧さを表現してるものが多い。

水面と空とが境界なく続いているものもあれば、水面の波打つ様子に違う色が使われているものもある。そんな曖昧に広がる景色に対して、没入感というか、目の前の景色ではないはずなのに、今ここに目を閉じたらこの景色が広がり、本当にそのような景色を体感しているような気にさせてくれる。

美術館にいる間、私は「いつまでも見惚れて動けない」、という現象を経験した。きっとこの没入感のせいだと思う。私はただひたすらに、目の前の景色の太陽の光を、空の青さを、風の強さを、モネと一緒に体験しているかのような感覚を味わっていた。味わっていると、徐々に揺れ動く心がサーっと穏やかになっていくような気がして。

淡い色合いや穏やかな水面の青色、いまにも消えてしまいそうな切なさが閉じ込められた絵を見ていると、さざ波のような優しい気持ちの波を感じられた。なんだか、私はまだこんなにも美しい絵で心を動かされる、その事実に嬉しくなって、余韻に浸りながらこのnoteを書いている。

私もモネと同じように、目の前の景色の美しさを言葉や写真、絵(は苦手だけど)でいつまでも閉じ込めていたいな、と感じた美術館でのひとときでした。


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