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子どもが血球貪食症候群(HPSもしくはHLH)に罹っている話

私には小学生の子どもが二人いるのだが、そのうちの次女が現在血液疾患で入院している。

大きな持病ない次女が突如発症

現在の症状は血球貪食症候群(HPS:hemophagocytic syndromeもしくはHLH:Hemophagocytic lymphohystiocytosis)。検索すればすぐに詳しい解説が出るし、私自身は医学の知見がないので詳細省くが、簡単に言うと体内の免疫機能が異常をきたして血球(赤血球・白血球・血小板)を食べてしまい(貪食)、それにより血球減少・発熱・肝機能障害などの症状が出る結構重篤な病気。

遺伝子起因で発症する一次性(家族性とも)血球貪食症候群と、別の要因(ウイルス、感染症、膠原病などの自己免疫疾患系の持病)の二次的要因で発症する二次性血球貪食症候群がある。

が、次女は昨年夏に小児欠伸てんかんが発覚したものの免疫性ではなく症状も軽く、それ以外に持病もない。家族にも自己免疫疾患系の持病を持つ人はおらず、そのため「ある日突然…」という感覚に近い。現在遺伝子検査も行っているが、少なくともこの記事を書いている2024年1月31日現在では原因となる遺伝子は発見されていない。上述の一次性か二次性か、二次性の場合の根本の要因などが判明していない状況。

ざっくり今までの経緯

2023年末、次女と長女がお風呂に入っていたら次女が鼻血。しかも大量で止まらない。発熱もしていたので、救急車を呼んだところで受け入れができる病院を探すのに時間がかかることは、以前義父が脳梗塞を訴えたときに味わっている。そのため、車で30分ぐらいのところにある小児科専門の大きな病院に直接駆け込むことにした(24時間365日救急外来を受け入れている病院である)。

止血剤を使ってもなかなか血が止まらない。血液検査をしたところ、血小板の数値が異常に低く、赤血球、白血球の数値も低いことが判明。そしてそのまま入院。

2024年始以降、骨髄検査を2回行い、2回目の検査で血球を貪食していることを確認。現在は上述のように根本原因探りを、併設する研究部門や各大学の研究機関とも連携して検査中。同時に、貪食の症状を抑えるための治療を進めている(ここらへんの経過の詳細は、近いうちに記事化しようと思います)。

血球の数値が低いということ

血球が異常に減少する病気で最も有名なものは白血病
フィクション/ノンフィクション問わず多くの作品で題材として使われ、最近では競泳の池江璃花子選手が発症→闘病→カムバックも大きな話題となった。ただこの白血病、個人的には「血液のガン」「なんか鼻血が出てヤバい病気」ぐらいのイメージしか持っていなかった。病気に無縁な人の多くは近いイメージなのではないだろうか…。

白血病も、今回次女が発症している血球貪食症候群も、血球減少を伴う血液疾患というカテゴリーにくくられる。この血球減少については、発症要因として大きく3つの方向性に分かれているらしい。

1)血球をつくることができていない

そもそも血球をつくる機能自体がうまくいっていない状態。自己の免疫機能に異常が起こるなどして、血球の大元になる造血幹細胞を壊してしまう再生不良性貧血などがこれにあたる。

2)血球はつくられているが、それが体内で壊されている

血球をつくる機能自体は生きているものの、つくられた血球を壊すような免疫活動が行われている。そのため、輸血をしても思うように数値が上がらない。免疫性血小板減少症血球貪食症候群などがこれにあたる。

3)血球をつくる場所に別の細胞が埋め尽くされている

本来、血球をつくる細胞がある場所である骨髄内に、別の細胞が占拠していて血球をつくる行為をさせていない状態。別の細胞とは何かというと、造血幹細胞などに異常をきたして無限に増殖してしまった白血病細胞。つまりこれが白血病

この3つの方向性では、治療法も備えるべきリスクもまったく変わってくるし、各々の方向性の中でも、そして同じ病名でも、さらに枝分かれする(血球貪食症候群にも一次性と二次性があるように)。これを特定するために有効なのが骨髄検査。

このマガジンで伝えたいこと

主張したいことはないし、次女の闘病日記で誰かの心を動かしたい気もない。関わったこともない子どもが入院していたからといって、そこに何かの想いを寄せられる人など限られているし、そういう稀有な共感力を持つ方が気持ちを沈めてしまう要因にもなりたくない。

そもそも自分自身、誰かの闘病日記に想いを寄せるタイプでもない。『いちご同盟』も『四月は君の嘘』も好きだが、それはあくまでフィクション作品としてである。

池江選手のカムバックには感動したが、白状すると一方で「なぜそこまでしてオリンピックにこだわるのか」とさえ思っていた。次女がこんなことになって初めて、彼女がカムバックを目指すと決めてそれを表明したこと、そのために努力を惜しまないこと、そして本当にカムバックしてしまったこと、その全てがどれほど多くの人に特大の希望と生きがいを与えているのかを、心から理解することができた(そのうちちゃんと記事化したい)。

この記事を書いている人物の人間性とは、その程度である。

それでもこのことを記事化する理由としては、単純に小児の血液疾患に関する情報を少しでも増やしたいから。今でも、医学の知見がない私が少し検索しただけで、これまで聞いたことも関心もなかった血球貪食症候群の概要をふわっと理解できるぐらい、医療機関が公開している情報は豊富だ。が、その一方で当事者視点の記事は、個人的な感覚としては少ないと感じている。

当然だ。まず患者本人が小さい子どもなので本人が記事化するのは難しい。そしてその親は、心身両面いろんな意味で記事化をする余裕を持てる人は限られる。こればかりは仕方ない。だから、自分のように書ける人間が書けるときに書いておこうと思っている。

同じような境遇を持つ方々にも読んでいただけると嬉しいが、一方で同じ境遇の人は医師からもっと正確で丁寧で分かりやすい説明を受けているだろうと思う。だからむしろこの記事は、周りに当事者がいて漏れ伝えてくる情報に気を病んでいる方に伝わったらいいのかなと思っている。

この疾患は、例えば患者の親以外の親戚・友人(患者から見たら祖父母やおじおば、いとこ、友人、親の友人)など、当事者の周りにいる人の方が気に病んでしまいかねないと感じている。医師は職業上常に最悪の状況から逆算して考えて説明しており、当事者がその医師から聞いた情報・言葉を伝えると、どうしても悲観的な印象を受けてしまう可能性があるのでは。実際、自分の親も、自分や妻から聞くときの表情はしんどそうだ。

なので、こうした断片的な情報を受け取っている方に、この疾患に対する解像度を高めてもらうことに寄与できればいいなと。

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