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治療と抗がん剤について -子どもの血球貪食症候群-

次女の血球貪食症候群の治療が開始されて2週間あまり。
徐々に効果が見えてきた。


肝機能の数値について

前回(血液検査の数値について -子どもの血球貪食症候群-)簡単に説明した血液検査の数値のうち、特に改善が見られたのは肝機能。

ASTとLDは正常値内に入り、ALTも1.2倍程度まで下がってきた。フェリチンも20倍程度まで下落していて、相変わらず高いが減少傾向ではある。

一方で、血球関係は相変わらず低水準である。これについては、血球貪食症候群の治療として投与している薬自体が、副作用として血球減少を伴うというジレンマのような状況なので、慎重に見極める必要がある。
 
また、肝機能が改善されたとはいえ、それはあくまで化学療法による免疫機能の鈍化が効いてきたというだけなので、本当の意味での改善とは言えない。今後は薬の投与を徐々に減らしていって、様子を見極めていくことになるから、また状況は流動的になっていくだろう。 

現在の治療について

現在、次女は血球貪食症候群の中等症以上とされていて、いわゆる化学療法を行っている。

以前の記事(子どもが血球貪食症候群(HPSもしくはHLH)に罹っている話)で記載したときと状況変わらず、まだこの症状が一次性なのか二次性なのかがはっきりしていないものの、取り急ぎ症状が良くなかったため、まずは現状の改善を試みる必要があった。

血球貪食への治療(化学療法)

エトポシド
抗がん剤の一種。一口に抗がん剤と言ってもその種類は非常に多彩で(もらった同意書だけでも40種類あった)、この薬はトポイソメラーゼ阻害薬という分類で、DNAの切断と再結合を抑えるものらしい。
 
デキサート
ステロイドの一種。炎症や免疫活動を抑制させる薬で、貪食行動を抑えるために投与されているらしい。当初は別のステロイドを使っていたが、次女には合わなかったらしくアレルギー症状が出たため、デキサートに切り替え。その後アレルギー症状は抑えられている。
 
シクロスポリン
こちらは免疫抑制剤。詳しい説明を受けていないのでネット情報になるが、免疫活動の主力であるT細胞を抑制するらしい。再生不良性貧血の治療薬としても使われるものとのこと。
 
要は、貪食をしている細胞をあらゆる角度から全力で押さえつける3点セットということらしい。
 
当然どれも強い薬で、副作用が発生する。例えば免疫機能低下による細菌感染リスク、吐き気、イライラ、血栓、炎症など。それに血球減少、肝機能、腎機能にダメージを与える可能性がある、というもはや治すのか悪化させるのかよく分からない項目まであるから、医師側で様々な数値を見極めながら慎重に投与サイクルを考えていくらしい。

それにしても、いったいこんな治療方法をどうやって見つけて確立させていったのか。もはや執念とよべるほどの凄まじい医学の歴史の積み重ねには、本当に感服する。 

化学療法の副作用への対策

上記副作用の中でも、比較的出やすい症状への対策として、抗菌薬、制吐剤、血栓予防などの薬も定期的に投与されている。

抗がん剤・エトポシドについて

さて、エトポシドである。

抗がん剤であることは紛れもない事実だから、そのように周りにも言っているのだが、まあ当然「あぁ…」という空気である。

先に断っておくが、抗がん剤の副作用といえばすぐに思い浮かぶ脱毛について、エトポシドはもちろん副作用のひとつとして数えられるものの比較的起こりにくいタイプの薬のようで、現状、次女に脱毛の兆候は見られていない。もちろん今後投与が長くなれば話は変わってくるが。

そもそも、なぜ抗がん剤なのか

血球貪食症候群は、がんではない。ただ、異常な免疫細胞が増殖するのを防がなくてはいけないという意味では、がん細胞の増殖を防ぐために抗がん剤が投与されることと論理としては同じことになる(たぶん)。

要は細胞分裂の際に、その異常な特性を持つ細胞のDNAが増殖しないようにすることが目的で、増殖が抑えられれば現在異常をきたしている細胞はいずれ死滅するため、結果的に原因となる細胞がなくなっていく、ということのようだ(おそらく)。

そういった意味でも、いま次女が行っている治療はあくまで対症療法に近いであろうことが推測される。血球貪食の根本的な原因が分かっていない以上、悪さをしている細胞を潰せば終わり、という話ではない。

理想でいえば、対症療法で症状を抑え、徐々に薬の投与を減らしていくうちに原因が特定でき、その治療に着手していける、という形なのだろう。まだまだ先は長そうではあるが。

さて、現実の話をしよう

基本的に、現在次女の状態は安定している。
一時期多かった発熱症状も落ち着き、既出の通り肝臓の数値も安定してきた。腎機能は相変わらず目立った問題はなし。本丸である血球減少は低いままだが、ひとまず一度ピークアウトしつつあると見ていいかもしれない。
 
一方で、やはり諸々のリスクはある。血圧が常に高いため、心臓への負担があることは否定できない。数値の誤差かどうかは不明だが、先日BNPとよばれる心房圧の数値が異常に高く出たものの、うっ血や心臓への異常等はなく、原因は不明のまま経過観察となっている。
 
また、ステロイドにせよエトポシドにせよ、やはり相当なストレスのようで、次女は常にイライラしている。もともと9割は周りをよく見て自律できる子だが1割気分屋成分が含まれている、という気質だが、今は気分屋が前面に出てきている。
 
こればかりは仕方がない。薬だけでなく、長引く入院生活、そもそも体が常に不調、単調な日々、姉にも会えない、学校にも行けない(なんと長女も次女も学校が好きなのである。私にはついに経験したことのなかった感覚である)。こうした積み重ねはさすがにしんどい。
 
また、いわゆるムーンフェイスとよばれる顔のむくみも発生している。ただしこれは丸くなって触り心地が良くなったと、むしろポジティブな感想である。

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