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【スライド解説】知識ゼロからAIブームを理解する③

今回は、最近のAI関連技術の実用事例をいくつかピックアップする。

前回の記事はこちら。
機械学習関連の用語の説明もあります。

AlphaGo Zero

AlphaGoは、DeepMind社(2014年にGoogleが買収)による囲碁ソフトだ。

オセロやチェス、将棋といったボードゲームのコンピュータプログラム自体は、それこそ数十年前からあった。
その中でも、盤面が広く、全ての石が等価である囲碁は、考えられる手が非常に多いため、
コンピュータにとって最も難しいボードゲームのひとつとされてきた
ゆえに、コンピュータがプロ棋士に勝つことは不可能であると言われていた時期もあった。

こういったボードゲームをプレイするソフトを作るときには、大きく分けて3つの段階がある。

1.どういう時にどういう手を選ぶのかを人間が全て指定しておく
2.大量の過去のプロの対局データから学習させる
3.ゲームのルールだけを教えて考えさせる

1の段階では、局面ごとに、あらかじめ指定された何らかのルールに従って次の手を決める。
もちろん、考えられる手の組み合わせは膨大で、
全ての場合に最善手を選ぶようプログラムするのは現実的に不可能だ。
(そして、エラー時にはランダムで打つことになるだろう。)

2の段階では、いわゆる機械学習を使う。
ここでもいくつかの段階に分かれるが、AlphaGoがディープラーニングを活用して膨大な対局データから学習をした結果、
2015年に、初めてハンディ無しでプロ棋士に勝利した囲碁ソフトになった。
2017年には世界王者に圧勝してしまい、以後人間との対局からは退いた。

その段階で、既に世界のトップ棋士が誰も勝てないレベルになったのだが、さらにその後のバージョンAlphaGo Zeroはもっと凄かった。
ディープラーニングと強化学習を搭載したAlphaGo Zeroに、囲碁のルールだけを教えて、
AlphaGo Zero同士でひたすらに対局をさせたのだ。

その結果、過去の全てのバージョンよりも圧倒的に短時間で、
どのバージョンよりも強いレベルに達してしまった。

もはや人間が一切教えずともAIは人間の知能を超えるということで、世界では非常に話題になった。


スマート農業

AIによる画像認識自動飛行ドローンを組み合わせた事例。
まずドローンが大豆畑の上を飛び、虫食いのある箇所を特定する。
そして、通常であれば畑全面に満遍なく農薬を散布するところを、
虫食いのある個所だけにドローンがピンポイントで農薬を散布するのだ。

時短、省人化に加え、最小限の農薬で済むためコスト減、さらには健康にも良く、関わる誰もがハッピーになるAIの使い道だ。

車の自動運転のニュースも最近非常に多いが、都会での利用よりも、
田畑や過疎地域での普及の方がずっと早いだろうということは、容易に想像できる。


Microsoft Seeing AI

Microsoftから「Seeing AI」というアプリケーションが提供されている。

カメラを向けると、AIが周囲の状況を認識して、音声で読み上げるというものだ。

いくつかのAI・機械学習プログラムを組み合わせたこのアプリケーションは、視覚障碍者の「目」になるべくして生まれた。
次の動画を観ていただきたい。

カメラを搭載したメガネ型ウェアラブルデバイスであるPivotheadSeeing AIを組み合わせたプロジェクトだ。

自然で簡単な操作で、目の前の状況をAIがナレーションしてくれる。
精度や機能は今後もっと成長していくのだろう。

テクノロジーは、普段の生活を便利にする一方で、時には人を傷付けるために進化した側面もあるが、
ハンディキャップをハンディキャップにしないためにも、テクノロジーは存在する。


アリババ Luban

急成長を続ける中国アリババのAI「Luban(鹿班)」
以前は「鲁班」として知られていたこのAIは、
ECサイトのバナー広告を生成するAIである。

各ユーザーひとりひとりに最適化したバナーを表示することができ、
1秒あたり約8,000枚もの広告を出力するという。
実際、クリック率も従来より大きく向上しているそうだ。

アリババでは、多くの優秀なデザイナーが、
デザインをするためではなく、AIにデザインを教えるために雇われているらしい。
人間は機械と違って「クリエイティブ」なことが得意だ、というような意見が多いが、
人間にとっての「クリエイティブな仕事」と、AIにとってのそれは、必ずしも同じではないようだ。

動画やニュース記事、さらに音楽や絵画もAIが作れる時代。
街中で目にする「作品」が、人間によるものなのか機械によるものなのか、
言われなければ、もはや区別がつかない。


押さえておきたいのは、実用レベルに達したAI技術の基本は、
コラボレーション(連携)とインテグレーション(統合)だということ。
何か単一のプログラムでアプリケーションとして成立することはほぼなく、
いくつかのテクノロジーを組み合わせ、さらには会社や業界の枠を超えて、連携し統合されて、
それはごく自然に、生活の一部に浸透していくのだ。

むやみに恐れる必要はない。
「AIに勝つ」のでも「AIを使いこなす」のでもなく、
「AIと楽しむ」くらいのスタンスがいいんじゃないかと思っている。


次回は、今後のAIの課題について、直近の問題点から話題のシンギュラリティまで説明する予定だ。

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