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【スライド解説】知識ゼロからAIブームを理解する①

先日、1時間半の社内勉強会で、知識ゼロの人も想定しながら「AI」をテーマに話をしました。
せっかくスライド資料を作ったので、それをベースにして、
note用に内容を一部編集して書き下ろしました。

機械学習のプログラミングを学ぶためのものではありません。

今回の記事では、まず「AIとは何か」について、ざっと言葉の定義を押さえていきます。


What is "AI" ?

AIとは、Artificial Intelligenceの略で、人工知能のこと。

じゃあ「人工知能」って具体的に何なのか、という話だが、
一言で説明するのは非常に難しい。
高度すぎて難しいのではなく、明確な統一された定義がないのだ。
だから、これについてはずっとあちこちで議論がされている。

人工知能という概念については、大きく2つの立場に分けられる。

①人工的に作られた知能
②知的な作業を行う人工的なもの

つまり、あくまでそのプロセスにフォーカスして、「人間の知能を機械で再現する」というのが前者で、
プロセスが何であれ、結果として「知能と呼べるような動きをするソフトウェアはAIと呼べる」というのが後者のスタンスだ。

本来のAIの定義としては、①の方がしっくりくる。
そういう意味では、「真のAI」なるものは未だ実現していないが、①の立場で研究をしている人達にとっては、
「ヒトの脳の神経回路は電気信号で動いているから、理論的には作れないはずがない」というのが拠り所になっている。

(電気信号説が覆されるかもしれないですが…)

ただ、①と②は必ずしも相反するものではなく、重なる部分も大きいと思う。
一応この記事内では、基本的に②の意味で使用している。

とにかく、「人工知能」というのはあくまで概念であって、
「人工知能」という名のテクノロジーがあるわけではないということだけは理解しておきたい。


特化型AIと汎用型AI

このあたりは調べればたくさん解説があるので、サクッと。

特化型AIは、文字通り特定の領域でのみ能力を発揮するAIで、
今「AI」と呼ばれているものは、全てこれだ。

汎用型AIは、あらゆる領域において知的な処理をするAIで、
「あらゆる領域」の範囲の目安は、だいたい「人間と同じくらい」。
まだ汎用型AIは実現していないが、2020年代半ば頃には誕生するとの予測もある。

ちなみに、特化型AIをいくつも組み合わせて「あらゆる領域」に対応できるようにしたものは汎用型AIなのかというと、
たぶんそういうことではないと思う。


弱いAIと強いAI

これは、科学的な用語というよりは哲学的な話。

簡単に言うと、弱いAI(Weak AI / Cautious AI)とは、意識や自我といった「心」を持たないAIで、
これに対し、強いAI(Strong AI)は「心」を持つAIを指す(という認識で十分だ)。

時折ネット記事で、「弱いAI≒特化型AI、強いAI≒汎用型AI」という説明が散見されるが、これは間違いなので要注意。

弱いAI / 強いAIという言葉は、アメリカの哲学者John Rogers Searleの論文で用いられた表現だ。
要するに、上記のAIに対する2つの立場①と②に対応する。

According to weak AI, the principal value of the computer in the study of the mind is that it gives us a very powerful tool. For example, it enables us to formulate and test hypotheses in a more rigorous and precise fashion. But according to strong AI, the computer is not merely a tool in the study of the mind; rather, the appropriately programmed computer really is a mind, in the sense that computers given the right programs can be literally said to understand and have other cognitive states. In strong AI, because the programmed computer has cognitive states, the programs are not mere tools that enable us to test psychological explanations; rather, the programs are themselves the explanations.

つまり、人間の脳は電気信号で動いているから、
適切にプログラミングすれば、機械も人間と同じように、それ自体が本当の意味で「心」を持ちうるというのが、強いAI論者の主張。
逆に、AIは「心」を研究する上で有用なツールではあるが、
人間の「心」のような動きを再現するよう正確にプログラミングできることはあっても、本当の「心」を持つことはないというのが、弱いAI論者の主張ということだ。

「心(the mind)」って、いったい何なんでしょうね。


AIのレベル別分類

AIの分類について調べると、こういうのが出てくる。
おそらくこの定義も、正式にどこかで決められているものではなく、
正直かなりモヤモヤする分け方ではあるが、とりあえず気にしない。

レベル1の単純制御で、イメージしやすいのが家電。
例えばエアコンの風量を「自動」に設定して動かすと、
設定した室温をキープするように、自動的に風量を調節してくれる。
あれが単純制御にあたるわけだが、それを人工知能と呼んでしまうと違和感がある。

レベル2のルールベースというのは、
状況に応じて複雑な処理をこなすものの、あくまで人間がプログラムした通りに動くもの。
「この場合はこうして、こうなったらこれを実行して、それ以外の場合はこう動作して......」というように、
考えうるあらゆる条件に対して、それぞれに処理パターンを全て人間が命令しておく。

機械学習深層学習(ディープラーニング)については、次回の記事で説明する。
ちなみに、レベルが分けられてはいるが、深層学習はあくまで機械学習のひとつである。


最近はAIブームということで、宣伝文句として「AI搭載」を謳う製品が非常に増えている。
しかし、実際には、単純な制御プログラムや簡単な統計処理だったりすることも少なくない。
プロセスがどうであれ、それが知的な振る舞いをするのであれば、AIと呼ぶことに異論は無いが、
AIという言葉に過剰反応せず、その実態を正しく捉えられるようにしたい。

次回は、今の「AIブーム」が起こるまでの道のりと、
その中核にある機械学習深層学習の概要について解説する。

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