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若者コンプレックス


こどまっぷの初心者講座に参加したことで刺激を受けた私たち。公正証書のほかに、実はもうひとつ大きく考えを変えたことがありました。


講座終了後のティータイムは参加者&団体のスタッフがひとつの大きなテーブルを囲んで座りました。


最初にリレー形式で自己紹介することになり、端の人から順番に年齢と名前、子どもがほしい人は妊活中なのか既に妊娠をしているのかなどを公表していきます。既にお子さんのいるカップルや、選択的シングルで妊活中の女性、精子提供を検討中の男性などなど、人によって状況は様々でした。私とナチコより年下の女性もいたけど、彼女の現状はハタチの頃の私と同じ「可能性について情報収集」段階。自分の番が回ってきたとき、現状を伝えるのを躊躇する私がいました。

原因は、私の中で渦巻くある悩み事。ウズウズ、ウズウズと少しずつ成長する不安です。ナチコにすらうまく説明できていないそれは現実的な話を進めるほど大きくなり、この日会場となったカフェのドアを開けた瞬間目の前にごろりと転がり落ちて、講座中もずっと視界の中にありました。


簡単に言ってしまえば、若者コンプレックス。


会場に入ったとき咄嗟にそこにいる人たちの年齢を予想し、実際自己紹介を全員分聞いて本格的に落ち込む自分がいました。妊活までの具体的な計画を立てている人の中では私たちがいちばん若い。この人たちは私たちのことを考えなしな若いカップルだと思ってるはずだ、なんて捻くれた想像をしてしまったのです。


社会に出てまだ間もないのに、ちょっと焦りすぎなんじゃない?
現時点で養っていく力がないのに子どもがほしいなんて無責任すぎる。
遠くの実家を気軽に頼ることも、近くに相談できそうな身内もいないんでしょ?

実はここ2ヶ月ほど、そんな幻聴に取り憑かれて落ち込む夜を何度か過ごしていました。完全な被害妄想だと頭ではわかっています。でも一度思い込むとそれから逃れるのは難しい。
ひと目を気にしてしまうのはたぶん、自信がなさが原因でしょう。幻聴の正体はおそらく客観視した自分の声です。


そうやって泥沼みたいな思考にはまってしまうと、どうしても進みたい方向に向かう足が重くなりました。子どもがほしいと表明するたびに「若いのに気が早いわね」とやんわり咎められているような気分になってしまう。誰かに言われたわけじゃないんですけどね。


ティータイムは各自ばらばらと解散する形で終了し、私とナチコも輪を外れてふたり席に移ることにしました。あれこれと講座の内容を復習するけど、やはり私は落ち着きませんでした。
冷たいドリンクに刺さったストローを噛みながらぼんやり話していると、隣にあったベンチ席にさとこさんが腰を下ろしました。どうだった?とニコニコしながらたずねられ、答えに躓いてしまう。私の代わりに苦笑いを浮かべたナチコが「経済面が心配です」と答えました。
あーだめだ。
せっかく貴重な場を設けてくれたのに申し訳ない。
何かポジティブなことを言わなきゃ。そう思った直後、さとこさんがおかしそうに吹き出しました。


「そうやって悩んでたら、適齢期逃すよ!」


馬鹿なことで悩んでんのね〜と言う優しい声を聴いて、数年前のトークショーの打ち合わせを思い出しました。女同士の人工的な妊活方法の説明を受けた私が「それって、いいの?」と率直な疑問を投げかけたとき、彼女はこう言いました。


子どもがほしいって純粋な気持ちで授かる行為が悪いと思う?
むしろたくさん悩んで準備した親のもとに生まれてくる子どもって、その時点で幸せでしょ!


ポジティブとか正しいとかではなくて、あのとき私は「真だな」と思ったんだった。そうだった、そうだった。しっかり社会に出て、お金を稼いで、健康的に生きながら子どものために準備している私たちのこの時間が無責任なわけない。幸福な子を生もうとしてるのに、それを否定する方がよっぽど無責任で自分本位だ。


そっかそっか!そうだよね!と立ち直った私が顔をあげたとき、さとこさんはもう厨房に引っ込んでいました。


かっこいいなぁ
と思い出して感動していたら長くなってしまった…


大きな考えの変化について答えにたどり着けなかったので続きます!ごめんなさい!

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