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『ファースト・マン』を観た【映画感想】

昨年の『ボヘミアン・ラプソディ』に続いて、IMAXシアターにて。

人類で初めて月面を歩いた宇宙飛行士であり、アメリカの英雄ニール・アームストロングにフォーカスを当てた一本。

とにかくこの映画で語るべきは、映像表現。クオリティが半端ない。成層圏の爆音と宇宙空間の静寂との対比、こちらまでG酔いしそうなほど迫真のフライト場面、無人船と結合する瞬間の官能的なまでの艶かしさ、等々、フィジカルに直接働きかけてくるような渾身の作劇は「鑑賞」というよりは「体験」と表現するのがふさわしい。

これぞ劇場で観るべき映画と言えるだろうし、逆にこの手のやつはソフトだと魅力が半減してしまう。

映像先行でストーリーラインにドラマ性がないのかと言えば、そんなこともなく。幼少の娘の死を原風景に据えたライアン・ゴズリングの静かで抑制的な演技を、息づかいまで聞こえてきそうな、ガッツリ寄ったカメラアングルで捉える。

序盤から「えっ?この映画グザヴィエ・ドラン監督だっけ??」と言わんばかりのどアップ多用(&手ブレ演出)は賛否あるだろうけど、個人的にはアリ。この“ゼロ距離カメラワーク”は、アームストロング船長の心理と我々観客を限りなく近づけ、それこそ“ドッキング”する狙いがあったんじゃないか。と考えるのは、もはや邪推の領域というものか。

そしてクライマックス。
月面に降り立ち、彼をここまでたどり着かせた原動力となった豊潤なる日常のフラッシュバックは、どんな台詞を重ねるより雄弁に心象風景を物語る。ようやく“ここまで”来れたんだね、よかったね、アームストロング船長。やっぱりこういう大事な場面は表現は台詞で語りすぎないことが肝要だ。それが粋ってものだろ(実際、ここでホロリと来ました)。

『セッション』で鮮烈な商業映画デビュー、『ラ・ラ・ランド』の記録的大成功、そして大事な3ステップ目でデイミアン・チャゼルは“大気圏”を突破。これまでとは桁違いのバジェット作品で相応の結果(アカデミー賞4部門ノミネート)も残したし、なんだかんだ言って「いま最も名前で客を呼べる監督」の一人なんじゃないかな。



肌のシミまで
ハッキリ映るIMAXカメラ

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