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最近読んだ本の話 vol.66

 「最近読んだ本の話」の第66弾です。今は紫陽花が綺麗に咲いていますが、薔薇もまだまだこれから咲きそうです。梅雨入りはもう少し先みたいですね。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、山本 幸久『人形姫』

後継者不足に悩む老舗人形店に、外国人の若い女性が弟子入り志願!?
お人好しな若社長は、仕事に恋に大奮闘!
亡き父のあとを受け、森岡恭平が社長を務める森岡人形は、低迷する売上、高齢化した職人の後継ぎ不在と、問題が山積。さらに恭平自身の婚活問題も難航しており……。
そんなある日、職人たちが足繁く通うパブで働くクリシアというフィリピン人女性が、社屋を訪ねてきた。職人の一人が、酔った勢いで「俺の弟子にしてやる」と、彼女に約束したと言うのだが……。
笑って、泣いて。読みどころ満載のハートフル・ストーリー。                   -Amazonより引用-

 雛人形を作って180年の森岡人形の8代目の社長・森岡恭平が主人公の物語です。森岡人形がある鐘撞市は人形の街で、たくさんの人形店があるのですが、どこも売上低迷と後継者不足に悩まされています。恭平はしょっちゅう喧嘩をする職人たちの仲裁をしたり、高校時代に所属していたボート部のコーチを引き受けたり、人形組合の理事を任されたりと、多忙な毎日を過ごしていましたが、そこへフィリピン人のクリシアが人形作りを学んで職人になりたいと訪ねてきて…。人形作りのことが細かく描かれていて、どんな風に作られているのか想像しながら、実際に見てみたくなりました。ここ数年出していない自分の雛人形が、今どういう状態になっているのかも気になってきて…近いうちに箱を開けて出してみようと思いました。


2、永井 みみ『ミシンと金魚』

認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。
父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。
そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのに――。
暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。            -Amazonより引用-

 カケイさんというおばあちゃんが主人公の物語です。カケイさんの語りは面白くて、すぐに物語に引き込まれるのですが、カケイさんと介護士さんたちのやり取りを読んでは涙ぐみ、カケイさんのこれまでの人生が語られる部分を読んでは泣きそうになりました。カケイさんは実在しているんじゃないか、と感じました。カケイさんのおにいさんもおねえさんも、いい人やったんやなあ。


3、アリ・スミス『春』

いくら国境が隔てても、人の心はそれを飛び越える。分断を描く四部作の春篇。一人は、長年相棒だった脚本家を喪い悲嘆に暮れる老演出家。もう一人は、移民収容施設で心を殺して働く若い女。絶望を抱え、それぞれ北の国にたどり着いた二人は、不思議な力を持つ少女との出会いを通じ、人生の新しい扉を開ける。EU離脱に揺れ移民排斥が進むイギリスを描く、奇想溢れるシリーズ第三作。                  -Amazonより引用-

 四季四部作の三冊目の『春』です。読めるのが楽しみでした。一文一文が、よくこんな表現、こんな言葉の連なりを思い付くなあ、と感嘆してばかりです。
 テレビ映画を作ってきた演出家のリチャードは、長年仕事の相棒だった女性脚本家のバディーを亡くし、失意のままある日北へ向かう列車に乗ります。移民収容施設で保護官の仕事をしているブリタニ―は、ある日駅のベンチに座る少女・フローレンスに話しかけられ、一緒にスコットランドへ向かうのですが…。この三人と、もう一人謎の女性が出会って、その後物語は急展開するのですが、次の作品『夏』で全貌が明らかになるのかどうか、楽しみです。『秋』と『冬』に登場したダニエルが、『春』にも登場しました。名前は出てこなかったけど、わかって嬉しかったです。


 今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。読むスピードが遅くて、今月は何回投稿できるのか…できるところまではやってみます。最後までお読みくださってありがとうございました。


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