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告白できなかった片思いは続くー友人Mの話ー

友達が10年初恋を引きずっていた。
相手に告白できなかった恋だった。

言えなかった理由はほんとうに小さなタイミングの積み重ねなんだけど、何年も横で見ていた自分はずっとヤキモキしていた。

どちらかというと言って後悔するタイプだったから。
でも解決したらしいから良かった。

大学2年の夏、同じクラスでたまたまペアになっただけ

友達Mちゃんの大学は音楽系の学部で、珍しいことにクラスがあった。
Mちゃんにはずっと雰囲気が気になっていたクラスメイトのHくんがいた。
一目惚れ?と聞くとそうでもないらしい。H君はパーマか天パで、前髪がちょっと長くて、でもよく見ると綺麗な顔をしていて、教室で特定の男友達と音楽の話をしているようなモテるわけでもない普通の人だったらしい。

転機が起きたのは夏休み前。夏休みの課題で2人1組で制作物をつくることになったときにHくんにペアに誘われたらしい。

Mちゃんはえ、あたし?って思いながらペアを引き受け、夏休みに何回か課題のために大学に集合して音響室で制作をしたらしい。
その時に「Mちゃんってこんな感じの人なんだね」とか「ペアやってくれてよかった」とか言われたらしいけど、さすがに親密度もないのに告白するなんて浮かばなかったらしい。でも会った後かならず報告をされていた自分からしたら、あぁすごい楽しかったんだろうなあと思った。

結局思いをまったく告げられなかったMちゃんだけど、その夏休みをきっかけにMちゃんは好きなH君とクラスでちょくちょく話をする仲になった。

Mちゃんにどんな話するの?って聞いたら「ダンスの話とか多いよ!見てっていって自分の踊った動画見せてくれるw」だそう。
H君は大学からダンスサークルに入ったらしいけど、Mちゃんは高校の頃からダンス経験者。(しかも学園祭でチーフで披露するくらいうまい。)
そんなMちゃんに覚えたてのダンスの動画を見せて、うまくなったかな?って聞きに来るそう。

どうだったの?って聞いたらMちゃんは「全部めちゃ下手でリズムずれてるんだよね」って笑いながらディスってたけど、その顔は「そんなところが好きですかわいいです〜」って言ってた。(目は口ほどにものをいうってこういうことか〜ほーんって思ってた)
私は、ああこの恋がうまくいけばいいなって思って聞いていた。


大学2年の冬、ライブに誘われる

とある冬の日、MちゃんからHくんのバンドのライブを見にいかないかと誘われた。
なんとHくんは実はバンドマンでドラムがめちゃうまだそうで。
「ダンスはあれだけど、ドラムはけっこう上手いから見に来て」って誘われたらしい。なんだそれ少女マンガか。

行きたいけど、同じ大学の子を連れてって好きになられたら困るとか意味わかんない乙女ムーブをかましたMちゃんに連れて行かれライブに行ってきた。(当時わたしに彼氏がいたので安心だったらしい。彼氏がいなかったら誘わなかったらしい、なんだあいつ)
MちゃんはじっとH君を見つめてライブ中の写真を撮ってた。両手ですごい大切そうにスマホ掲げて盗撮していた横顔、友達ながらに可愛いなと思った。(撮った写真見せてもらったけど好きバレしかしない温度感の写真で笑ってしまった)

ライブのあとにご挨拶をさせてもらった生Hくんはやばかった。あ〜〜これがMちゃんの好きな男か〜という感慨と、たしかにこんな人が近くにいたら好きになるわという雰囲気の人だった。
腰が低くて柔らかい雰囲気で、ちょっと喋るの下手なんだけど無駄にスペックが高いみたいな。。
なんか沼りそうな人だった。

ライブに誘われたのは同じ学校からはMちゃんだけみたいだった。
帰り道、Mちゃんと今後の方針を話した思い出がある。
「たぶん一部女子からはめっちゃモテるタイプだと思うよHくん。どうにかなりたいならもう少し行動起こした方がいいんじゃないかな。。何かちいさなきっかけでHくんの良さに気づかれて積極的な女の子がもっていっちゃうこともあるよ」

そんなことを伝えたけど、告白を自分からしたことのなかったし特定の彼氏がいないのが平常運転なモテ女Mちゃん。自分からなにをどう動けばいいかわからないし、ダメな気がするとのことで踏みとどまってた。

結局ライブ後も告白はできなかった。そのあともね。

春、失恋

冬の間も、大学で会えば話して、用事がみつかればLINEをしていたMちゃん。

H君に会いたいーなどとジタバタしてた春休みの間にインスタを見ていて、彼女ができたことを知ったらしい。
Hくんの彼女はおなじダンスサークルの女の子。ネトストと化したMちゃんに相手の子のアカウントを見せてもらったけど、Mちゃんとはタイプが違う感じの子だった。

私はMちゃんの友達だから、全力で寄り添うためにH彼女のことをディスってあげようと思ったけど、あまりにもタイプが違くてなにも言えなかった。(ごめんよ)

例えば、Mちゃんが外で手を繋ぐタイプだとしたら、H彼女は両腕絡めてくっつくタイプだし。Mちゃんは喧嘩した時に無言でキレるけど、H彼女は泣き叫ぶタイプらしい。Mちゃんは自撮りをどこかに出かけたときにだけするけど、彼女はなにもなくても自撮りして毎日のようにHくんとの写真をあげる子。
Hくんのほっぺをつかんでじゃれてる画像をインスタで見た時はさすがに見ててしんどくなった。Мちゃんはこんなのあげないで自分だけの宝にするんだろうな。


たぶん、モテるのはMちゃん。でも、Hくんが選んだのは彼女さん。
そもそもHくんが彼女さんに告白をしたそう。

Hカップルのことは2人にしかわからないけど、少なくともMちゃんは1年くらいの片思いを消化できなくなってしまった。

すぐ別れるかもよって励ましをしたけど、結局彼らは大学卒業までずっと付き合っていたらしい。

告白もできず、振られたわけでもなく、なんなら好意のかけらも見せられずMちゃんの初恋は終わった。(あんな可愛い顔してHくんを見てた横顔、私は見てたよ)

その後、10年、結婚を決める瞬間までMちゃんは大学2年生のころのHくんのことを引きずっていた。


実は大人になったHくんに会ったMちゃん

大人になってからも、お酒を飲むとHくんが〜って言い出すし、彼氏とケンカした時もHくんだったらケンカしたのかななど、事あるごとにHくんの思い出を話すMちゃん。

実は一度だけ、Hくんを呼び出して飲んだらしい。
Mちゃんと一緒に遊んでた時に事後報告で聞いたけど。

ひさしぶり、飲もう。みたいなストレートに誘ったら普通に着てくれてびっくりした。
会って飲みながら仕事の話とか聞いたらライブ会場の音響やっててさ。大学のころからそういう道に行きたいって言ってたから本当に叶えたんだって聞いて、すごいなって思った!
話しててさ、大人になったけどちょっとだけ昔のHくんの姿なところがあって。私が好きだった部分がまだ残ってるって思った。
彼女の話は聞けなかった。怖くて聞けなかったわ笑
…でもさ、もう違う人だった。私が好きだった20歳のHくんはいなくて。
なんかあると私ずーっとHくんがいいって言ってたじゃん?それもういない人だった。

私、誰に恋してるんだろう。

Мの供述

そんな感じのことを言っていた。
これには始まりそうな気配がしたのに始まらなかった恋の、後悔全てが詰まっていると思った。

大人を10年もやっていると

二十歳で成人をした世代だから10年大人をやっているけど、だんだんなにも言い出せなくなるし、不感症みたいになってくる。
あ、このパターンねって。体験したわけでもないくせに引き出しが増えて。
選択肢を小癪に考えては傷つかない方法をとる。

誰かに嫌悪感を抱いても、メリデメを考えてから発言するし。(言ってあげた方がいいことでも面倒になると伝えるのやめるから優しくないなっていつも思う)
思いを伝えるってことにすら、メリットを求めてしまう。(無駄に傷つきたくないって思っちゃう)

生き方が上手になったのか下手になったのかわからない。そんな時にいつも思い出すのはMちゃんの話だ。(勝手に反面教師にしてる)

大人っていいきれない20歳ちょうどで、感情を加減してぶつけられなかったМちゃんは相当こたえたと思う。

そんなMちゃんが長い長いマリッジブルーから抜けて、6年付き合った彼氏との結婚を決めた。
「彼とのこれからは平坦な人生に見えるけどここら辺が潮時なんだと思う」って言い残して結婚を決めた。(死ぬんか?ってツッコんだ)

おめでとう以外うまく言えなかったけどさ、10年も思い出を取り出しては愛せていた君は美しいよ。
すっごく清らかだよ。
その感性は私には持っていなくて尊いよ。

末長くなくてもいいからお幸せに。(なにかのたびにまた思い出したくなるかもしれないけど、そうういうときはこっそり思い出せばいいよ、でももう20歳のHくんは死んだんだよ。)


結婚おめでとう!

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