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小説ですわよ

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小説の概要ですわよ!

 ネット小説を読んでもらうのに必要な情報を、何も書いてないことに今さら気づきましたわ。 ◆タイトルですわ!  未定。  以下3つが候補ですが、他に良さそうなものがあれば教えてください。 『異世界人、ぜんぶ轢く!』 『ドライブ・舞・ハイエース』 『PINPIN! クソカー』 ◆ストーリー概要ですわ!  水原 舞は上司に“のど輪”を食らわせて仕事をクビになり、当面の生活費を稼ぐため、ピンピンカートン探偵社のバイトを始める。その仕事とは、異世界から帰還した“返送者”をショッキン

『小説ですわよ』第1話

あらすじ 「ホラホラホラ、轢くぞ轢くぞ轢くぞ轢くぞ」  ショッキングピンクのハイエースが、逃げる男の背中に激突した。衝撃と鈍い音が腹の底まで響く。 「マジかよ……本当にやりやがった」  水原 舞はそう呟きたかったが、口が開いたまま塞がらず、助手席で全身を固めることしかできなかった。  男は3メートルほど吹っ飛び、地面に倒れ伏したまま動かない。血は出ていないようだ。 「よーし」  轢いた張本人――森川 イチコは運転席のドアを開け、男のもとまで歩み寄っていく。舞も震える手でシー

『小説ですわよ』第2話

↑の続きです。  舞は、次の標的のプロフィールがまとめられた紙を受け取る。   大瓦 謙三。51歳。指定暴力団・大友会構成員。   犯罪および逮捕歴は傷害、殺人、強盗、窃盗、脅迫など多数。   2021年に異世界へ転生。22年12月に異世界より帰還。   以降、超常能力によって敵対組織の構成員を殺害。   能力、殺害方法は不明。  プロフィールの右上には、大瓦の写真が添えられていた。鋭い角刈り、長い揉み上げ、吊り上がった太眉、左頬の切り傷。いかにもである。 「見た目も経

『小説ですわよ』第3話

※↑の続きです。 「すっかり寒くなりましたな。こたつを引っ張り出すのが大変で」 「うちの猫がいなくなってしまって」  ご近所同士の老人が公園ですれ違い、噛み合わない会話を交わす。  イチコと舞はベンチに腰掛け、その風景をボケーっと見ていた。 「うまうま……闇金ウマウマくん」  くだらないシャレを言い、イチコは2個目のジャムパンを貪る。食べかすがボロボロこぼれ、それを目当てに数羽のハトが群がってきた。返送者を轢いたときの頼もしい姿とは、まるで別人だ。  それを横目に、舞は熱を

 『小説ですわよ』第4話

※↑の続きです。  信号が青に変わるのを待ちながら、イチコがタブレットの画面をスクロールさせる。簡潔な文章と何枚かの写真が表示されていた。 「午前中、探偵社に依頼主が来て、その内容をじいやがまとめてくれたんだ。1件目は、家から逃げたインコの捜索だね」 「人探しならわかりますけど、ペット探しもやるんですか?」 「5000円から1万円くらいでね」 「えっ、安っ」 「飼い主からしたら助かるだろうし、探偵社としても顔を売るのが目的だから儲けは度外視なんだよ」  信号が青に変わり、ハ

『小説ですわよ』第5話

※↑の続きです。  今日からは事務所に出勤することになっていた。舞は到着して、これは夢ではないかと乳首を引っ張った。小原によって破壊されたショッキングピンクのハイエースが、何事もなかったかのように駐車場に停まっている。乳首は痛かった。まあ、返送者を異世界送りにするような車だ。よくわからないカラクリがあるのだろう。舞は自己完結して2階へ上がる。 「おはようございま~す」  事務所に入るとイチコ、綾子、岸田がそろってテレビを見ていた。 「おはよ~」 「おはよう」 「おはようご

『小説ですわよ』第6話

※↑の続きです。  リストの返送者は全員轢いたので、イチコと舞は事務所へ戻る。ドアのベルに反応したのは岸田ではなかった。ソファに座る青いスウェットの少年が、気だるげにこちらへ顔を向ける。 「イチコ、おかえり~」 「ただいま、ブルー。じいやと姐さんは?」 「社長室で、なんか話してる」  イエローにブルー。この少年も軍団のひとりだと舞はすぐに察した。 「新人さんか~」 「水原 舞です」  ブルーがのそのそと立ち上がる。背丈は舞と同じか少し大きいくらいか。年齢はハッキリとしないが

『小説ですわよ』第7話

※↑の続きです。  翌朝。バイトは休みだが、10:30に事務所でイチコと会う約束をしている。  舞は顔を洗い、歯を磨き、台所に向かう。冷蔵庫の静かな重低音だけが響き渡る。母も妹も、今の時間は仕事中だろう。  コンロには味噌汁の残った鍋が置いてある。冬の時期、母は夕食に汁ものを多めに作り、その余りを舞のために取っておいてくれていた。  当然これが理由というわけではないが、舞は過保護すぎる母を恨むに恨めなかった。父の件で最も苦労したのは母だと知っている。犯罪者の妻ということで、

『小説ですわよ』第8話

※↑の続きです  舞はイチコに事務所まで送ってもらい、そこから家へ戻った。すでに母が仕事から帰っており、台所でコップをすすいでいた。 「おかえり、舞ちゃん。でかけてたの?」 「ただいま。バイト先の人と遊んでた」 「上手くやってるみたいね」 「まあ、うん」 「よかった。神様は、頑張ってる人をちゃんと見ている。努力を怠らなければ、これからも必ずいいことがあるから」 「はいはい」  いつもの胡散臭い話が始まった。舞は慣れているので、普段ならばなんとも思わないが、今日は違った。 (

『小説ですわよ』第9話

※↑の続きです。  舞は顔を洗い、歯を磨き、パジャマのままリビングに向かう。  テレビ画面では『プラプラ沈々喪中下車の旅』という番組が流れている。身内に不幸のあった芸能人が、都心部の電車に乗って、気になる駅で降りてその町に住む人妻をナンパするという内容だ。土曜の朝ということを抜きにしてもイカれている。少なくとも舞が物心ついたときから放送されているが、人気の理由はよくわからない。  そんな番組を母がひとりでソファでくつろぎながら見ていた。妹はデートに出かけているのだろう。昨日

『小説ですわよ』第10話

※↑の続きです。  裏筋駅から徒歩5分。デパートの裏手、パチンコ屋“玉キング”脇の細い路地を入ったところにピンピンカートン探偵社の事務所は―― 「ない!!」  見知らぬ雑居ビルが、そびえ立っていた。壁の塗装があちこち剥がれ、いかにも昔からあったという雰囲気を醸している。  舞は”隠匿”の魔法なるものが事務所に施されているとイチコから聞いたのを思い出す。外部からは事務所を見ることはできず、そもそも探偵社の存在を認識すらできない。一部の例外を除いては。  舞もそのひとりのはずだ

 『小説ですわよ』第11話

※↑の続きです。  ステージの上手と下手、それぞれから2名ずつ、人影が背を向けたまま躍り出てくる。  4つの影がこちらへ振り向き、気だるげなステップを踏み始めた。  影がステージの階段から降り、スポットライトもそれに追従する。 「はあ!?」  舞は4人の姿をハッキリと捉え、目を剥いた。  中央――いかりや長介のポジションに綾子。  右端――高木ブーのポジションに、いつのまにか人間に戻った岸田。  中央左――仲本工事のポジションにブルー。  左端――志村のポジションはいない

『小説ですわよ』第12話

※↑の続きです。  綾子がそそくさとホールの出入り口へ歩き出す。 「私と軍団はリムジンで帰るから。岸田、運転頼むわよ」 「かしこまりました。ではイチコ様、水原様。綾子お嬢様のお宅でお待ちしております。イエローがJリーグカレーを用意して待っているはずです」 「うわ~い、Jリーグカレーだ~!」  イチコが子供のように飛び跳ねる。だが舞は困った。帰れと言われてもどうしろというのか。 「ハイエース、動かないんですけど」 「ああ、それでしたら……」  轟音と共にホールの壁の一部が吹っ

『小説ですわよ』第13話(完)

※↑の続きです。 ---------‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐---------‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐  先月、自社の職員を脅迫した疑いで、警察は株式会社エメラルドアクティブの社長、神沼 蓮 容疑者を逮捕しました。  神沼 容疑者は批判的な社員に対し「野グソしている写真をばらまくぞ」「このことをバラせば訴える」などと脅した疑いが持たれています。  また警察は、神沼容疑者が開催した講演会の出席者約100名が行方不明になっている件について