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Memories of Italy - イタリアの想い出

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イタリアの美しいふつうの日用品をご紹介するオンラインショップ、Memories on Italy - イタリアの想い出 www.memoriesofitaly.it の商品につい… もっと読む
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記事一覧

イタリアでの正統な栗の食べ方-穴あきフライパン

イタリアでの正統な栗の食べ方-穴あきフライパン

【イタリアでの正統な栗の食べ方】
…なんてあるわけはないのですが、やはりイタリアで栗と言えば、自分で拾った栗を、焼き栗、それも暖炉で炒るのを正統としたいと思います。

まず栗は、(当たり前ですが)栗の木のある山に行ってその辺に落ちているのを拾います。日本のように、栗の木を管理している農園等があるわけではなく、その辺の山で、イノシシやリスやキツネの生存競争に参加して、大きな、虫食いの無い栗を探して拾

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ミラノの歴史を引き継ぐクルティ窯

ミラノの歴史を引き継ぐクルティ窯

クルティ窯は、ミラノの歴史と共に生まれ育った窯屋です。

1400年代、ミラノ公フランチェスコ・スフォルツァの妻ビアンカ・マリア・ヴィスコンティの遺言によりマッジョーレ病院 (カ・グランダ - 現在はミラノ大学)の建設が開始された時、タイルやレンガを製作したのがスフォルツァ家に仕えていたクルティ窯でした。

当時は、ミラノの中心部に窯を構えていました。何世紀にもわたるクルティ窯の波乱万丈の歴史の中

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南アルプスで140年前からフェルト製品をつくるザッハー家

南アルプスで140年前からフェルト製品をつくるザッハー家

「イタリアの想い出」のフェルトルームシューズを作っているのは、1560年から今まで羊毛職人の伝統を引き継いでいるザッハー家の兄弟姉妹5人です。
1880年に、当代の曾祖父が南アルプス・ハウノルド山(イタリア語ではRocca dei Baranci 2966メートル)の麓にある小さな街サン・カンディドで、フェルトの帽子を主に、フェルトの靴底・スリッパ等、フェルト商品の工房を営みはじめました。当時は2

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想い出を溜める貯金箱

想い出を溜める貯金箱

江戸っ子で気が短い私は、子供の時から貯金箱というものが苦手で、お金がたまる前に忘れてしまうのが常でした。

貯金箱って、不思議なモノです。
自分で買った記憶もないし、誰にもらったかも思い出せないのに、なぜか家のどこかにちょこんと置いてある。

それはイタリアでも同じでした。

ただ、日本と1つ違うのは、あちらこちらで見るコロンとしたテラコッタの貯金箱。

イタリアで、初めてテラコッタの貯金箱を見た

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イタリアでよく切れる包丁に出会うまで

イタリアでよく切れる包丁に出会うまで

子供の時から三徳包丁を使って母の手伝いをしていました。
今思えば、子供の小さな手には危なっかしい気がしますが、母に「包丁は危ないからダメ」とか「包丁に気をつけなさい」とか言われた記憶がないのです。

単なる包丁が生活の中で存在感を持ち始めたのはイタリアに来てからです。

***

イタリアで結婚した後、キッチン用品を整えようと包丁を探したのですが、良く切れる包丁が見つかりませんでした。色々買って試

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自己紹介 - 30年のイタリア生活で出会った、美しいふつうの日用品

自己紹介 - 30年のイタリア生活で出会った、美しいふつうの日用品

イタリアといえばデザインの国。
私は、30年以上前、プロダクトデザイナーになるため、この国に来ました。
若さ特有のエネルギーで、言葉も生活も「何とかなるさ」と過信して、1年くらいですべてを準備してミラノに来てしまいました。何の団体にも所属せず、誰の助けもなくイタリアに来てみると、今思えば当たり前ながら、「何ともならないこと」もたくさんありました。

今でもよく覚えているけれど、当時は家から出る時、

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ペストジェノベーゼとリグーリアの優しいおばさんの想い出

ペストジェノベーゼとリグーリアの優しいおばさんの想い出

イタリアの美しいふつうの日用品をご紹介する「Memories of Italy - イタリアの想い出」を開設するには、まだ数週間かかりそうですが、まず「想い出」からお話ししていきます。

* * *

ミラノから七曲の高速道を車で飛ばし、1時間半ほどで、イタリア半島北西海岸線に沿って広がる細長いリグーリア州に着きます。風光明媚、なんて観光案内書で使い古された言葉、このリグーリア州のための形容詞にし

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工藤あゆみさんのイラストからイタリアのカフェまで

工藤あゆみさんのイラストからイタリアのカフェまで

「Memories of Italy - イタリアの想い出」(30年以上イタリアに暮らす私が、生活のなかで出会った「美しいふつうの日用品」を紹介するコレクション)の準備を始めた時、すぐに、イタリア在住の美術作家、工藤あゆみさんのことを思い浮かべました。

あゆみさんの事を初めて知ったのは、たしか「はかれないものをはかる」(2018年・青幻社)が刊行された時だと思います。

人かどうぶつかよくわから

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黄色いズボンの男のひとから得た教訓とフェルトのルームシューズ

黄色いズボンの男のひとから得た教訓とフェルトのルームシューズ

このフェルトのルームシューズに出会ったのは、もうかれこれ30年前になります。

当時、冬休みになると南チロル・アルトアディジェ州の山で休暇を過ごしていました。
第一次世界大戦までオーストリアーハンガリー領だったこの地域に住む人たちは、見るからにドイツ系タイプで、背が高く、彫刻みたいに堀の深い厳しい風貌の人が多く、30年前はほとんどの人がドイツ語を常用しており、イタリア語がうまく話せない人もたくさん

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