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四日間の奇跡(著:朝倉卓也)【読書紹介が四日間続いたら奇跡!そう信じておけ。そうすれば悪いことはない】

「このミステリがすごい」こと、このミスで紹介された本。
しかしミステリ要素はまったく感じられませんでした。
これはミステリではないですね。
しかし、なかなかの感動できる作品です。

映画化もされたみたいですが未視聴。
今回は原作小説の紹介枠でやります。

(といいつつも映画版の批評もリンクしておきます)

さて、だいたいのあらすじ。
主人公はピアニストへの夢を絶たれた音楽家。
縁あって知的障害を持つお嬢さん(千織ちゃん)を引き取りますが、
この子がサヴァン症候群の子どもで、うまく喋れないのですが、
何はできなくともピアノの天才。
ならば、ということで主人公はピアノを教え、
その子の演奏旅行の付き添いとして日本中を回ることになったのですが。

とある招待先で、昔の知り合い(真理子さん)に出会います。
それは高校時代、せがまれて第2ボタンをあげた後輩の女性。
ロマンスの予感がしますが、

しかし唐突な落雷事故によって彼女は死亡。

ところが、障害を持つ娘さん(千織ちゃん)に、彼女の魂(真理子さん)が一時的に宿り、とたんに饒舌にしゃべれるようになります。
分かることはひとつだけ。四日間の間に人生の棚卸しをすること。
それが過ぎたら消える運命。

*****
とまあ、こんな感じの話を簡単に述べましたが、
後書きによると、
これに似たコンセプトの作品が少し前にあったそうなので、
(なんというかパクリ? アイデアのパクリはパクリではないけど)
まあ、少なくとも二番煎じ感が否めないので、賞は取れなかったとかいう話が書いてありました。
少し前の作品というのは「異人たちの夏」かな?

なので、死んだ人が少しだけ戻ってきて、語らってくれる。
というのが全体の流れです。
もしくは「黄泉がえり」に似ている感じがしますね。

こういうコンセプトはあちこちになるので、
応用が恐ろしく効くみたいです。
幽霊しんみりネタ。
しかも人間はこの手の話に涙もろいときている。
こりゃ使わない手はないと思うのですが。

***
では大体のあらすじはこの辺で終わるとして。

感想の中にエリザベス・キューブラー・ロスの死の受容の話がありまして、
今回はこの辺に絡めたいと思います。

自分が死ぬことが分かった患者は以下の5つの過程をたどる、いわく、
否認、怒り、取引、抑うつ、受容、
必ずしもこの過程をたどるわけでもなく、
中には絶対に受け入れない人もいれば、
あるいは最初から受容しておられる方もいる、
別に病気とは限らず戦争でも事故でも、
即死する以外では何らかの形で、
こうした葛藤を感じるし、残された家族の側で感じることもある。

あるいは死ぬまでの期間が異常に長いだけで、
私たちも現在すでに感じているはず。
(飛び降りちゃう人たちは、
受容しそこなったからむしろ飛んでいるわけで)

それが普通であり、
むしろこの過程を医療が支えなければならないのだとする。
いや医療だけじゃないですけど。

人生は甘い夢ではなく、残酷で苦いもので、
おそらく何物にもなれないまま、何も成し得ないままで人生は終わる。

我が人生に悔いなしと言えるのは才能と環境に恵まれたほんの一握りの人たちだけで、多くの人たちは、せめて後に残すものがいれば彼らをあまり心配させないように配慮して、いなければなんらかの形で自分の気持ちにケリをつけて去るしかない。

わずか四日間です。
彼女の(真理子さん)の人生は幸福とは縁遠いものです。
そして再会することがなければ、
二度と主人公の軌跡と、かすめることすらなかったでしょう。
でも彼女には底知れない明るさがあるんですね。
それがもうひとりのヒロイン(千織ちゃん==作中の大半は、舞台袖に引っ込んでいる状態ですが)に良い影響をもたらすのです。

***
映画版は山口県の角島付近で撮ったとのこと。
旅行にいくと撮影で作った教会とかが残っているので、アニメじゃないですが聖地巡礼もできるみたいです。

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