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【漬物レシピ】四季漬物鹽嘉言(4) 塩漬け他

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

瓜むいて 雷ぼしを するからに
  かけたる時は 稲妻のなり
           江英樓 如泉

夕立や 干瓜の身を 捨小舟
           作者不知

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

かみなりほし
まるづけうり中実なかごをぬき、ながくむきて、一夜いちやしほおしして、翌日よくじつ 日にほすなり。そのにむけて、しほをふりて、ほすこともあれど、それは当座とうざぐひれうなり。

一夜いちやおしてほせば、ちぎれもせず、ながくつながりて、うり一ツが一筋ひとすぢになりて、よく ほしあげて、一筋づゝむすびおくべし。ひさしくかこおくには、白瓜しろうり上品じやうひんとす。まるづけよりは、かわもやわらかく、つかりやうもはやし。

茄子なすびしほおしづけ
茄子なすびいろよくつけんとおもはゞ、塩《しほ》に|川かわすなまぜてつくれば つやよくつくものなり。又、明礬みやうばん をすこし入れてもよし。みな当座とうざくひれうなり。ひさしくかこひおくには、しほ沢山たくさんいれて、おしつよくかくれば、ながくもの物なり。

又、沢庵たくあんづけなかへつけこむ 茄子なすびは、一度いちどしほおししてよく水をあげたるとき塩水しほみづをこぼしすてて、一日いちにちほしてふたゝびしほをして、おしつよくかけて、あげたる二度めの水をこぼさぬやうにしてたくわへおくときは、いつまでももつなり。この しほおし 茄子なす百一漬ひやくいちづけ につけるなり。

※ 「中実なかご」は、中央、中心のこと。中子なかご

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

紫蘇しそづけ
しそのあまがいりすぎれば とりあつかふにがこぼねて、うてなばかりになるものなれば、すこしまへかたにとるべし。さて、しそのをはさみてのちしほみづこしらへ とくとあらふべし。ちいさきうちいたつて、こまかきむしありて、こゝろ わるき物なり。しほみづにてあらへば、かのさりきよし。その うへにて、たゞのみづにてあらひ、よくみづをきりてより漬込つけこむべし(ちりめんしそは、にほひよけれ共、実べた/\としてかたちよろしからず。あをしその実は そのまゝなれども匂ひなし)。

梅花ばいくわづけ
梅干うめぼしたねをさり、にくばかりすきとりて、擂鉢すりばちにてとくとすりて、ひらたきうつわにのべ、梅花ばいくわうてなをみじかくきりて、梅肉ばいにくに●ならべ、ふたをして、目張めばりして たくわふべし。いつまでもかほりうせる事なし。

さくらづけ
さくら中開ちうかいえだきりはなばかりつみて、しほ三升に みづ三升を入て𤋎せんじ、一夜いちやさまして、花とひた/\につけて、かるおしをかける。近頃ちかごろは 所によりいづれど、隅田川すみだがわさくら名物めいぶつとす。

菊漬きくづけ
黄菊きぎくの花ばかりつみとりて、これざまし、しほにてつけおしてわくわふ。しほして、菊味きくみにするに、なまきくにかわる事なし。にほひふかし。

※ 「うてな」は、ここでは 植物のがくのこと。
※ 「中開ちうかい」は、半開きのこと。ちゅうびらき。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

しほ山椒さんしよう
山椒さんしよばかりとりて、すこしばかりしほをふりておしをかけ、塩水しほみづあがりたらば、四五日たちて、その みづをしぼりすててほして たくわふべし。

辛皮からかわ
山椒さんしよわかゑだきりみづにしばらくひたおきて、かわはなれころ、きざみて 塩水しほみづつけて、かこひつかときしほして 包丁はうちやうす。

刀豆なたまめ粕漬かすづけ
なたまめは、なまにてしばらくひたおきしほすこしばかりふりて、十日あまおして、水にてあらひ、半日はんにちばかりほして、かすつけるなり。一年もたゝねば、つきかぬる物なり。

守口もりぐち大根だいこん粕漬かすづけ
これも、大根にをくゞらせ、一日いちにち ひにかわかし、かすしほすこしまぜてつけて、●●● おしをおく(守口大根とはだなと干大根にするものは別種なり。こんずべからず)。

※ 「はだな」は、はだな大根のこと。秦野はだの大根だいこんが変化した言葉。守口大根によく似た大根の栽培品種。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

獨活うど味噌みそづけ
山うどを 二三日かげぼしにして、ぐな/\するやうにして、三年味噌みそにつ●る。百日ひやくにち ばかりにて 風味ふうみよし。

冬瓜とうぐわ味噌みそづけ
冬瓜とうぐわかわともにたち、中実なかごふかくすきとりて、一塩ひとしほしてかるくおしをかけて、一夜いちやみづをとり、布巾ふきんにて 水気みづけぬぐひ、かわをむきて、直に味みそつけるなり。味噌に水たまりたらば、又、みそをとりかへて、ほかのみそに漬る。かくすること 二三におよべば、水も出なくなるをとするなり。さすれば、いつまでたくわへおくとも あぢわひ かわる事なし。水の出るうち ゆだんすべからず。又、金冬瓜きんとうくわといふ 一種いつしゆも、かくしてつけおけども度ゝたび/\がけざれば、ひさしくは たくわへがたし。

はな丸瓜まるうり粕漬かすづけ
花まるうりは、なまにてすぐかすつけるなり。すべて なまのまゝかすつけものには、二重にぢうそこおけこしらへ、下に ぬかをいれ、水をおとすやうにせぬときは かすのかわるものなり。糸瓜いとうりなども 右の通にして、かすにつけるなり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

西瓜すいくわ粕漬かすづけ
西瓜すいくわ花落はなおちわかきうちにとりまるのまゝ粕につけるなり。これ花丸はなまるづけ仕法しはふにしてつけるなり。紀州きしう若山わかやまよりいづるを名物めいぶつとす。

初夢はつゆめづけ
花落はなおち茄子なすびへたきりまわして、あましほおしにして、芥子からしをかき、醤油せうゆにてゆるめ、すこしろ砂糖さとうを入て、塩梅あんばいして 茄子なすびつけるなり。日数ひかずおほくは、もちがたき品なり。

鼈甲べつかうづけ
糠味噌漬の故き茄子を丸にて塩出してよくしぼりて、包丁し、味醂、酒をたくさんにかけて漬しおくこと三十日ばかり。茄子すきとをるほども?やけて、奈良漬の茄子にまさることとをし。

かうじづけ
あまざけかうじまいに、味淋みりんしゆ一升をかけてねかしおき干瓜ほしうりしほおし茄子なすびほし大根などを きざみこみ、紫蘇しそ生姜せうが、とうがらしをもすこしづゝくわへ、よく つきたるときに、賞歓しようくわん すべし。これ漬物つけもの醍醐味だいごみともいふべし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

百味ひやくみ加薬かやくづけ
生姜せうが茗荷めうがたけたで紫蘇しそ青柚あをゆ山椒さんしよ、大小の 蕃椒とうがらし、右のるいなにしなにかぎらず、しほおしにしてわくわふべし。なましなありあわぬときは、ち●●●としほしてにあはせることまゝおほし。料理れうり こゝろあるものは、かならずたしなふべき事なり。ぞくに、ゑの実とうがらしといふ まるきをもつけこむべし。

巻漬まきづけ
ふとき大根だいこん木口こぐちよりうすくはやし、よくほしてたくわへおき塩蓼しほたで生姜せうがをほそびき、きり/\とまき、とうがらしを おびにして三杯さんばいつけおく。

阿茶蘭あちやらづけ
ほし大根を一寸ばかりにきりたてわりにきざみ、みづから昆布こぶ生姜せうが茗荷》めうがの|子《こしほおし茄子なすび、つと小梅干こうめぼしとうくわへて、さけ醤油せうゆにて、うめもちひて、当座とうざづけにつける。尤、きくらげ、とうがらしをいれべし。又、蓮根はすのね獨活うどしん牛蒡ごばう時ゝとき/\しなくわへるもなり。

菜豆いんげん青漬あをづけ
なつ土用どようちう隠元ゐんげんさゝげをとりて、豆腐とうふのからの水気みづけをよくしぼりとり、しほ等分とうぶんにまぜて、みぎのゐんげんを 押漬おおしづけにつけて、うごかさずしてたくわふ。ふゆのうちよりはるへかけて、しほして からかねなべにてでれば、その いろなまのごとし。さのみ 風味ふうみもかわる事なし。

※ 「ありあわぬ」は、有り合わぬ。有合ありあいは、ありあわせること、たまたまその場にあるもの。
※ 「ゑの実」は、の実。秋に黄赤色に熟す小球果で、甘くて食べられるそうです。
※ 「つと」は、生麩のこと。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

ふき水漬みづづけ
みづふきなまにてかわをむき、 ばかり擂鉢すりばちに入、しほにてもみ、あをしるをとり、ふきしほにてつけこみ、みぎ 青汁あをしるを入て、おしおくなり。つかせつしほだしして、煮物にものに入るれば、なまのふきにことならず。

つけわらび
わらびのやわらかき所ばかりをゑらみて、しほはいあはせてつけるなり。つかふ 四五日前より よびあくを入て 水に浸しおき、にへ湯をかけて包丁す。

山葵わさび粕漬かすづけ
わさびを短冊たんざくにうちて、塩にておし翌日よくじつ みづを切りて粕につけ、つぼに詰て、目ばりをしてたくわふ。

■《らつきやう》 三杯漬さんばいづけ  [■=歹+韮]
らつきやう一斗、しほ二升、生姜せうが 大分入れて、塩おしにして、おしをかけて水十分にあがり、三十日ほどたちて、其水をこぼし、しばらく水をかわかして、砂糖さとうみつつける。これも 三十日すぐればよし。右の酸味すみもちまへの酸味すみなれど、もし 酸味すみうすき時は、少ゝせう/\入るもよし。

※ 「ゑらみて」は、選みて。選びて。
※ 「目ばり」は、風などが入らないように、物のすきまに紙などをはってふさぐこと。目張めばり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

三ツ葉みつば 溜漬たまりづけ
みつばぜりのしろき所ばかりそろへて、たけかわをほそくさきてゆわひ、さり水気みづけをとくとかわかして、味噌みそたまりをすいのうにてこして、そのなかへつけるなり。二夜にやばかりにて つき加減かげんなり。

葉附はつき大根だいこん三杯漬さんばいづけ
だいこん、尤 ちいさきをそろへ、くき一寸ばかりのこしおき、さきをきり、一時いつときほど日にあてゝ、すぐ三杯酢さんばいずつけるなり。これ吉原よしはら放言ほうげんには、あらがみといふ。

土筆つくづくし粕漬かすづけ
つくしのばかりをとり、よく あらひ、みづきりて、すぐかすにつける。つかときかすをあらひ、はながつほなどかけて、猪口ちよくに遣ふ。風味ふうみ いたつてよし。

家多良やたらづけ
ひしほのしほをからめにつくりおき、うり茄子なすび、とうがらしなどをきざこみつけるなり。沢庵たくあん大根のあぢ すこしかわりたるにても、くるしからず。段々だん/\ きつてつけこむ也。紫蘇しそ生姜せうがもよし。うり茄子なすび甘塩あましほおして、水をきりてつけるはことさらよし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

精舎てら納豆なつとうづけ
納豆なつとうには、瓜、茄子、丸にて一塩押て、水気をとりて漬込がよし。一日ほしてつければ、味格別なれど、急にはつきがたし。是とても、生姜、とうがらし、辛皮など入るもあらば、時の宜しきに従ふべし。

枝豆ゑだ●●塩漬しほづけ
ゑだ豆のさやの青きをゑらびもぎて、湯をくゞらせ、中塩ちうしほにして、やき明礬めうばんすこくわへ、かるくおしをしてたくわへおきつかとき一夜いちやしほだししてゆでれば、さやもあをくしてなま枝豆ゑだまめのごとし。

しほ松茸まつだけ
尋常よのつねしほ松茸まつだけは、塩水にてゆでさまして、その 塩水しほみづにて樽詰たるづめにするゆへ、にほひもなくあぢもなし。珎客ちんきやくをもてなすには、これことなり、松茸のかさのつぼみばかりをえらみ、蒸篭せいろうに入れ、あを松葉まつばをたきてむし、とくとさまし、松脂まつやに細末さいまつにして六十匁、塩二升にまぜて、松茸まつだけ一〆目余をつけおくなり。つねごとく、塩出してつかふに 風味ふうみ殊更ことさらよく、にほひもなまにかわることなし。又、はつだけ、松露しようろもかくのごとくしてつけおけば、風味よし

※ 「珎客ちんきやく」は、珍客ちんきゃく。珍しい客、思いがけない客。
※ 「初だけ」は、ハツタケ(ベニタケ目 ベニタケ科のきのこ)。初茸はつたけ
※ 「松露」は、ショウロ(イグチ目ショウロ科のきのこ)。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

つけ昆布こんぶ
松前まつまへ昆布こんぶゑらび、一夜いちや水にひたしおき、よくすなあらひ、日に かわかして たまりがちなる味噌みそつけるなり。又、かすにすけるもおなじ事なり。昆布こんぶ両方りやうはうのふちをたちきり正味しやうみの所ばかり手頃てごろ包丁はうてうして、かさねて漬るなり。

糸瓜へちま糟漬かすづけ
糸瓜へちま花落はなおち 二寸ぐらいの所をとり、かすくひ加減かげんしほをまぜてつけるなり。もつとも押蓋おしぶたしつかりとして、水あがりたらば、おけをかしげてこぼすべし。これ、へちまの塩水なり。水気みづけなきやうにしてたくわふべし。又、余蒔よまき胡瓜きうりもかくのごとくしてつけおくべし。

胡蘿蔔にんじん味噌みそづけ
にんじんのあとさきをきり、五六日 かぜのすく所へおき甘塩あまじほにしてつけるなり。三四十日たちて、一日にほして、みそにつけかへるなり。又、粕漬かすづけにするには、しほをからめにして漬るなり。

※ 「余蒔よまき」は、おそきのこと、または、種子を採取した年のうちに蒔くこと。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

十六さゝげ粕漬かすづけ
さゝげのあまのいりすぎぬうちにとりて、なまのまゝかすに漬るなり。眉児豆ふじまめなどは、殊更ことさらさやばかりの内に漬込つけこむなり。うへみづいでたらばしたみとるべし。

天王寺てんわうじかぶら
かぶくき一寸ばかつけて、甘塩あまじほおしつよくかけてつけおき、さて天気てんきよき 一日かはかして、味噌みそにもつけかすにも漬かへるなり。いづれ百日ざればつきがたし。

なし粕漬かすづけ
あはゆきの無疵むきずなるをゑらび、なしなしとあたりあはぬやうに、かす 沢山たくさんにして漬るなり。

かき粕漬かすづけ
はちやといへるほそながかきあをきうちにとりて、かすにつけるなり。自然しぜんしぶぬけてあまからず。はなはだ よき風味ふうみなり。会席くわいせきかうもの附合つけあはす。

柚青ゆあをづけ
ゆずのいらざるあをきうちにとりて、かんてんをながして、はいのあくをつけて、きなこ団子だんごのごとくして、つぼに入れ、めばりをしてたくわふべし。つかとき、ぬるまにてあらひおとせば、にほひもうせず。いろもかはらず、もぎたてのごとし。

※ 「したみ」は、したみ/したみ。しずくを垂らすこと。
※ 「あはゆき」は、淡雪あわゆき。江戸時代から明治時代にかけて全国で栽培されていた梨の品種。
※ 「はちや」は、蜂屋。美濃の蜂屋で作られてきた渋柿の品種。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『四季漬物鹽嘉言

金柑きんかん塩漬しほづけ
金柑きんかん あまじゆくさぬうち、水としほ等分とうぶんにせんじ、一夜いちやさましてうつわに入、きんかんとひた/\にしてかぜのいらぬやう ばりをしてかこふべし。つかごとに、うはみづをこぼしてひた/\にしておくべし。いつまでももつものなり。

たけのこ塩漬しほづけ
たけかわをむきて、沢庵たくあん大根のごとく一かわづゝならべて、しほをふりて、中塩ちうじほにして、かろきおしをかけてつけるなり。もつとも、とうがらしをすこいれおくべし。

『四季漬物鹽嘉言』📝
(1) 沢庵漬など (2) ぬか漬け 奈良漬けなど (3) 梅干しなど (4) 塩漬け他



筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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