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『落研ファイブっ』(36)「やっちゃうよ」

 下野しもつけが仏像チームを選んだ事で綱引きに不利になった餌は、松尾のシャツの裾をつかんだまま離そうとしなかった。

〔餌〕「僕ちゃんと学生料金払って春日先生のクリニックに通うんだよね」
〔仏〕「札束で松尾の顔を叩くなんて見下げた奴っ」
〔松〕「本当にVIO長者の餌食えじきになったんですね。分かりました。一緒に戦います」

 松尾/長門/餌VS仏像/下野/天河/シャモ(審判;三元)の綱引きは、一瞬で仏像側の勝利となった。

〔餌〕「松田君がこっちに来ただけで僕の完全勝利ですから」
〔仏〕「気が済んだらちゃんと練習すっぞ」
〔餌〕「あーはいはい。今日の練習は松田君と組むからよろしく」
 松尾と柔軟を始めたえさは、にやにや笑顔を浮かべている。

※※※

〔三〕「もうだめだ息が切れる」
 【えさ/松尾/仏像/天河てんが】【下野しもつけ/シャモ/三元さんげん/長門ながと】に分かれて鳥かご練習を始めると、一分と立たないうちに三元さんげんがリタイアした。

〔下〕「保健室行きますか」
〔仏〕「病院早めに行け」
〔松〕「そんな状態で本当にダイエットモニターできるんですか。鳥かごでボール蹴ってるだけですよ」
〔天〕「SpO2の測定器は」
〔三〕「おいおい俺は健康なんだよ。寄ってたかって人を病人にするな」
 語気を強める三元さんげんに、一同は首を横に振った。

〔シ〕「保健室に行こう。明らかにへばり方がおかしいもん。ほら来いって」
〔三〕「いやだよ」
〔シ〕「お墨付きが出たら、体育もビーチサッカーも堂々と休めるじゃん」
〔三〕「そうだけどよ。そうか、休めるか」
 じゃ行ってくると言い残すと、三元さんげんはシャモに付き添われて保健室へと向かった。

〈練習再開〉

〔仏〕「次はPKの練習。一人三本ずつ蹴って交代。GKは天河てんが君お願い」

〔餌〕「追証おいしょう! 追証おいしょう! 追証おいしょう! 追証おいしょう! 今日はね、一本目からね、じゃんじゃんいきますよ」
 ニアに飛んだ一本目を左手で止めた天河が、両手を大きく広げた。

〔天〕「つべこべ言わずにとっとと来い!」
〔餌〕「追証おいしょう! 追証! 追証! 追証!」
〔長〕「テキサス! ナックル! ドロップ! エルボー!」
 長門ながとが合いの手を入れると、ボールが天河てんがの肩に当たってゴールした。

〔天〕「さあ来い! 足がもげるまで打ち続けろ」
〔餌〕「追証おいしょう! 追証!」
 プロレス同好会直伝じきでんの天突き体操ポーズを繰り返すと、後一本っと言いながら餌は砂山を作り直した。

〔長〕「クラッチ! ツイスト! やっちゃうよ!」
〔餌〕「やっちゃうよ! ヘイ!」
 助走もつけずに蹴った三本目をあっさりと右足で止められたえさは、なおもボールに向かう。

〔餌〕「追証おいしょう! 追証! とにかく! 粘って! 目一杯!」
〔仏〕「どけろ。決着したの」
〔餌〕「そんな事言ってると、やっちゃうよバカヤロー♡」
〔仏〕「何をだよ」
 餌が白目をむきながら流し目と言う高等スキルを見せつけた瞬間、スマホを耳にした仏像の顔が硬直した。

〔仏〕「三元病院送りになった。矮星とシャモが付き添うって」
〔松〕「そこまでひどかったんですか」
〔仏〕「保健の滑川なめりかわ先生から校医に症状を伝えたら、すぐ来いって言われたんだって。病状が急変した訳じゃないから安心しろだって。練習はそのまま続けろとさ」
 
 ※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
(2023/8/10 および一部改稿 2023/11/20 改題および一部再改稿)

https://note.com/momochikakeru/n/n51db481ba39c


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