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人生の楽園

今まで足を踏み入れたこともない島での話をもうひとつしたい。
耳にした言葉が頭を離れないから。
「あいつらは勝手に来て好き勝手に自分たちのやり方で好きなようにやって飽きたら出ていく。ずっとこっちでやってきた者のやり方やったり気持ちやったりはないがしろにしてちょっと声かけるだけやったり全く声かけんかったりしてな」
知らぬ土地から知らぬ土地へ店や農業をやろうと来る若い人たちが後を絶たないのだそうだ。
「こっちも牛窓みたいになるんかのお」
 
「田舎で暮らそう!」「アイラブローカル地方」
「地方でお店をはじめたあたらしい生き方」「農業をはじめた若者たち」
 
ネットでもテレビでも雑誌でもよく見る。
でも、そんなこと、考えたこと、いや、両の気持ち、ちゃんと考えたこと、あったかな、と、考えてしまった。ズン、と来た。
 
「コンビニはなー、ほんま少ない。車ないと行けんな。まあ、車ないとここらでは生活出来ひんけどな」
「あ、あこは元々はファミマやなくサークルKやった。サークルKのほうがよかった。美味しかった。
うちらン中ではセブンイレブンが一番美味しい言うてて一番まずいんはローソンやって皆言いよる。でもセブンイレブンは近くにないんよ」
 
これらは行き帰りのバスターミナルまで車で送ってくれた若い人が言っていたこと。
 
車からみえる畑と海、絶景な、それ。

すごく性能のいいワゴン車からの。
 
地方の土地の〝空気〟だったり人間関係やその距離感を描いた作品は古今東西少なくない。
あれらはなんでいつも「同じような感じ」になるんかなあと思っていた。
 
最近だと、藤井道人監督の『ヴィレッジ』とか。
(このひとの作品、予告編を観て「おお?!」ってなるのに、観出したらどんどん「ん?」「んー……」になっていくのなんでやろう何本か観たけど)
池井戸潤の『ハヤブサ消防団』とか。
(SNS上でも散々言われてたけど絶対ミッドサマー意識してる気がわたしもした)
 
それだけ関心や興味や描きたい描くべきテーマが多いのだろう。

「どちら側」にとっても。
  
以前通っていた鍼灸院の先生の話もふと思い出した。
 
「『人生の楽園』っていう番組あるじゃないですか。
 リタイアした後あたらしい土地で何かを始める人をピックアップ、みたいなやつですよ。
 そこで「地域で愛される素敵なおばあちゃん!」ってすごいきらきらした取り上げられた人、僕そのひとよくよく知ってるけど、ぜんっぜん違うし、素敵とかと程遠いし。すごく性格も悪いし自分勝手ででもテレビが取り上げるとそういう切り口で紹介するし、めちゃくちゃいい人でやさしい善良そうなおばあちゃんに見えるんですよ」

助手の先生とわたしは爆笑しながらもツッコんだ。
 
「先生、それはひねくれすぎ」
「そうですよ、もしかしたらめちゃくちゃ素敵なひとなのかもしれませんよ」

このひとはそもそも元々厭世的というかヒネクレ者で、ということも、
付け加えておくけれど、譲らなかった。 

「いや、違うねんって。ほんま、ほんまに嫌われてたんやって」

考えさせられた。

いちめんのみかんばたけ。
 
なんか語呂がわるいな。

考えてみりゃ、漱石の坊っちゃん(漱石自身?)も、そういう角度やそういう風にみたら、ひっかきまわして暴れて帰ったって話かもしれへんな、なんて思った。

 手にしたみかんを、じっと見る。




関係ないけど、この件で思い出した、以前書いたコラムも、貼る。

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【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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