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ドラマ「初恋の悪魔」〜ルービックキューブ仕掛けの謎は深まるばかり

脚本家・坂元裕二さんが刑事物×ミステリーを書くという意外性と、タイトルからして「初恋の殺人者」みたいなインパクトで(こちらのドラマは未見)、今期ドラマの中でもかなり期待を寄せていた「初恋の悪魔」。

回を重ねるごとに謎は深まるばかりで、ルービックキューブのように片面が揃ったと思ったら他の面はバラバラになり、考えがまとまられない状態だけど立ち止まることも出来ず、ストーリーを追うだけで毎週精一杯だった。
そんなこんなで感想を書けずにいるうち、第二章に突入してしまった…。

先週は放送休止ということで、この機会に登場人物と今までのストーリーを自分の中で少し整理してみた。

物語は初回から坂元さんらしさ全開で、登場人物が多く、設定も展開も捻りまくりで少々混乱。
刑事物だと思っていたら、メイン4人のうち刑事なのは鹿浜のみ(しかも休職中だった)で、あとの3人は刑事課所属ではなく、悠日は総務、小鳥は会計、摘木は生活安全課と、まったく捜査には関係ない部署の所属なのだった。

しかしそんな4人が、ひょんなことから鹿浜の家で勝手に自宅捜査会議を開くようになる。
マーヤーのヴェールを剥ぎとるんだ!を合言葉に、本質を捉えるために3つ目の眼を持ち、刑事課が捜査中の事件について、現実の犯行現場には足を運ばずに、現場の模型を作り事件当時を再現したバーチャル世界の中で、自由に皆んなで推理するというシーンは毎回面白い。
"マーヤーのヴェール" とは、現実に囚われていると本質を読めなくなること、なのだそうだ。


W主演の一人、仲野太賀くんはこのところ大活躍で、今期も二つのドラマを掛け持ちしている。
もう一方の主演ドラマ「拾われた男」の方も視聴していたけど、人の良さそうな、でもちょっと困ってるような笑顔が、「愛という名のもとに」のチョロを彷彿とさせ、若い頃のお父さん・中野英雄さんにどんどん似てきてるなぁと思う。
しかしもう今は、お父さんの名前を出すまでもなく、演技派若手俳優の中でもその実力は折り紙つきだ。
太賀くんみたいな、親しみやすく朴訥だけど内に暗いものを秘めてそうな人物像を、自然に演じられる若手って、他に見当たらない気もする。
「初恋の悪魔」の馬淵悠日役と「拾われた男」の松戸諭役は、いつでも笑顔で家族や社会の中で脇役に徹しているけれど、実は兄に強いコンプレックスを抱いている、という面が共通している。
悠日は出しゃばったりする性格ではないが、自宅捜査会議では仲間をやんわりまとめるような影のリーダーシップがあり、いつの間にか星砂と恋仲になるが、彼女の複雑な人格に翻弄されるようになってゆく。

もう一人の主役である鹿浜鈴之介は、頭脳明晰だが人間嫌いでコミュ障で辛辣、猟奇犯罪やシリアルキラーについて話し出すと饒舌になり、目を輝かせ話が止まらなくなるというような犯罪マニアで、この鹿浜役を林遣都くんが嬉々として楽しそうに演じている。気がする(笑)。
鹿浜は凶器としてのハサミをコレクションしており、それこそ悪魔が住んでそうな洋館に独り住まいなのだが、第5話では何故この洋館に住むことになったのか、意外なストーリーが明かされ、子供の頃のトラウマを自分で癒すことが出来たシーンには、涙が出た。
鹿浜いい子じゃないかぁ。不器用で感情表現が苦手でウブな鹿浜が一転して愛しく思えた。
星砂に好意を寄せるも失恋か、と思いきや…微妙な展開になってきた。

柄本佑さん演じる小鳥琉夏は、会計課らしく数字に強く、自称・虚弱体質(笑)ですぐ疲れてしまい、あまり仕事にもやる気が見られない。しかし意外にも正義感が強く、鹿浜に社会派くんと揶揄されたりもする。
4人組の中で、悠日→星砂←鹿浜という恋模様が展開する中、唯一この複雑化してゆく関係から外れており、中和しているような役柄。
小鳥は刑事課の服部さん(佐久間由衣さん)に片思い中で、そもそも彼が服部さんを陰ながら助けたいと言い出したことにより、4人での自宅捜査会議が始まったのだった。

松岡茉優ちゃん演じる摘木星砂せすなは、一番4人の中では脆い存在なのかもしれない。
普段の星砂はサバサバした性格で、言葉使いも乱暴で雑な感じだが、本質を突くような鋭さもある。しかし正反対とも言えるもう一人の人格を抱えていることが徐々に明らかになる、ミステリアスな人物像。
松岡茉優ちゃんの二つの人格を演じ分ける演技力は凄みがある。暗い淵を覗き込んでいるような危うさと、寂寥感まで漂わせる彼女の繊細な演技には、とても心掴まれた。
もう一人の自分にとっては、今の自分は邪魔な存在で、もしかしたら取って代わられてしまうかもしれない…という怖さと心許なさ、
ー 人間て大事な思い出は、からだ全部で覚えるんだなって
ー 大事なことは、からだ全部で覚える
ー それが生きるってことなんだなって思う
ー あたしに何があっても、あたしのこと覚えててくれるかな?
星砂が自分のことを忘れないでほしいと言い、悠日が忘れるはずないじゃないですか、と答えて二人が抱き合うシーンは、切なくて胸がぎゅっとなった。
なぜ星砂には、別の人格が現れたのか?
悠日の兄の死に、もう一人の星砂は関わりがあるのか?
それは今後明かされてゆくのだろう。
しかしその時、星砂は悠日と一緒にいられるのだろうか…。

6話から第二章に入り、満島ひかりさんも登場。
もう一人の星砂との関係が提示されたところで、次回へ続くとなってしまった。

鹿浜に、犯罪者なのでは?とずっと疑われていた謎の隣人・森園真澄(安田顕さん)は、5話でやっとその正体が明らかになり、ある事件が他の事件とも繋がりがある事が示唆された。

悠日の兄の上司だった雪松署長(伊藤英明さん)は、1話目から強引で何か怪しく違和感があったが、こちらも本性を現し始めた。
一番怖いのは実は雪松署長じゃないかと思う。悠日の両親を高い高い!と言って真顔で持ち上げてたシーンも、何かすっごい怖かったし…。
サイコパス?それとも全ての事件を繋ぐラスボスは雪松署長なのか?

すでに物語は中盤に入ったというのに、どんどん謎は広がっており、どこへ向かっていくのか全く予測できない。
これからますます目が離せない展開になってきた。


SOIL&"PIMP"SESSIONSはドラマ「ハロー張りネズミ」の時もカッコよかったけど、今回の主題歌もCool!




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