人生、転職、やり直しゲーム

【優順(ゆうじゅん)さん】

時代遅れの朝礼後、
いつも通り課長と菅四輝の3人で、車で営業に出た。

「おい、無能非才(むのうひさい)。
昨日は、遅くまで飲んだようだな」

「課長!鴨葱さんの接待ですよぉ!」

「GPSによると、おっぱいパブかぁ?」

ヒヒヒ、と下品な笑い声が狭い車の中で響いた。
俺の持つ会社支給の携帯電話のGPS機能のせいで
どこにいるか課長に丸わかりだ。
困ったなぁ。

「上手く話が進むといいな、無能は
今月中に本契約2本取れないと首だから、
契約を急げ」
「は、はい」
俺には借金がある。
首になる訳にはいかない。
「おい、菅四輝、お前は昨日ダメダメだったから、
今日は契約取れるまで帰るな」

「は、はいっ」

菅四輝も、課長にプレッシャーをかけられ暗い顔をした。

この日は、
駅の近くの住宅の隣で金物屋をやっていた
優順(ゆうじゅん)さんという老夫婦の家にお邪魔して、
立地審査(測量と大まかな見積もり)の契約をするつもりだ。

優順さんには、
「契約が取れないとクビになる、
助けて欲しい」と、泣きついて
プロセスのノルマに協力してもらい、
ズルズルその気にさせて、契約をゲットする予定だ。

汚いやり方なのは承知だが、
鴨葱(かもねぎ)さんと、優順さんで、
アパート建設の本契約が2件取れたら、
俺は首にならないで済む。

優順さんの持つ土地には、
自宅と古い店舗が建っていた。
優順夫妻は、自宅の隣の金物屋を閉店して、
その店舗が長い年月そのまま放ったらかしだった。

「優順さんの敷地の土地があまり広くないので、
店舗と自宅を壊して、
駐車場を確保しないといけませんね。
大家さんの自宅がくっついたタイプのアパートを
オススメします」

「無能さん、壊すのは嫌だぁ。
自宅も店舗も気に入っているから、
壊したくないんだけどな」

「優順さん、
店舗だけ壊して、小さいアパートを建てるのはどうでしょう?
この、図面によると、
境界線から向こうの土地は
お隣の輪仁(りんじん)さんのものですね。
隣の家の庭の土地部分を購入すると出来ます。
駐車場も確保できますね。
ただ、お隣さんを納得させないといけませんから、
自宅を壊して自宅付きのアパートを建てるのが楽と思いますが」

「隣に交渉して、断られるのは嫌だし、
家を壊すのは嫌だって言っているだろう!
無能さん、悪いが、この話はなかったことにしてくれ」

【輪仁(りんじん)さんの土地】に進む


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