世界の家の窓から 77ヵ国201人の人生ストーリー

https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10024201.html

読了日 2022/12某日

 世界の家の窓から

 タイトルのあとに、なんて言葉を続ければいいだろう。誰がなんて言葉をつなげようとも、一編の素敵な詩になるに違いない。
 使い古された言い回しにヴィンテージ感を思うかもしれない。感染症、未曾有の大流行。私たちはこの病によって、外出を許可され、他者とのふれあいを禁じられることとなった。まさかこんなあまりにも単純な「接触禁止」という事態に陥るだけで、人が混乱にさいなまれるなんて考えてもみなかった。大好きなSF作品は、世界が大混乱に陥るにはもっと何か、重篤な出来事が起こらなければならないと言っていたような気がするのに。
 病にどれだけ文句を連ねても、流行病はいっこうに治まらない。それどころか、私自身、今年ついに感染してしまった。気をつけていたつもりだったけれど、所詮「つもり」でしかなかったのだ。ひどい咳に悩まされて、いっそお迎えが来てくれたほうがマシだと考えた回数は覚えていない。そもそも感染していた最中の記憶がほとんどないくらいだ。

 果たしていつまで続くのだろう。私が生きているあいだはずっと治まらないのかもしれない。今後も長いお付き合いが続くだろうと誰かが言った。どうなのだろう。今のところ、未来がわかる人間はいないから知りようがない。
 いつまで続くかわからない、未曾有の大災害──感染症の流行。私たちはそれに対して、気持ちの折り合いをつけようと考え続けている。今でもまだ、人と人との距離をはかったまま、さてどうやって他人と過ごすひとときを楽しもうかと画策している。
 孤独を胸のうちからどうやって追い出そうかと、私たちは考えている。
 旅行に行けない。友人の家に招けない。大切な人と過ごせない。もしかしたら、この先出会うはずだった、私の今後の人生において大切な人になるかもしれない人と出会う機会さえ失われた。

 じゃあ、せめて私の家においで!
 私が毎日見ている、家の窓から見えるなんてことない風景。私が見ている景色を共有してくれたら、私の家に来たってことにならないだろうか。
 無理?
 でもそんな考え方をしてみたら、すごく素敵だと思う。
 だってそれなら、この本を眺めるだけで、私は世界中に友人が出来て、世界中の友人の家を訪ねて、世界中を旅行したってことになる。
 なんて素敵なことだろう!
 毎日見飽きた窓の向こうの景色は、誰かにとっては初めて目の当たりにする絶景だったり、郷愁を思わせたりして、気づかされる。
 毎日見飽きた窓の向こうの景色は、私にとって大切な過去が積み重なっているのだと。

 写真とともに、ちょっとした感想や文章が添えられる。
 世界中の顔も知らない誰かの家に招かれた、私のちょっとした感想を述べてみようと思う。

P12
ボツワナの家より
めったに名前を聞かない遠くの国、グーグル検索でもしないとどこにあるかわからないボツワナ(向こうもきっと同じだろう)。そこでももちろんロックダウンが起きている。けれど、窓の向こうではアフリカの平原で何千何万年と続いてきた命の営み、動植物の生活が何も変わらずに続いている。
その事実に、なぜかどうしても、いたく感動してしまった。

P17
インドネシアより
「窓がないわが家より」!
世界の住宅事情に驚いた。
家の事情は違えど、世界中の人を気づかう優しさは共通なのだと感動する。
ありがとう!

P18
バヌアツ
撮影者が言うように、私は検索でもしなければ「バヌアツ」が世界のどこにあるのかを知らない。
知ろうとする興味を与えてくれてありがとう。どうかお元気で。

P21
ポーランド
キッチンで料理中に見える、羊の群れ。
ごく当たり前の景色として絶景を受け入れ、日常を日常とする家庭料理作りに勤しむ。
料理中、数えていたら眠くなってきたりして。

P24
ルーマニア
ルーマニアでも鳩は平和と希望のシンボルということを知る。
木の間に見える灰色の景色は、あまり受け入れたくないもの……という歴史的背景を、私は学ばなければならないと感じる。

P25
イギリス
夜行性を忘れてしまったらしい狐が、日向ぼっこにやってきた。
言いまわしがいかにもグレートブリテン。

P27
イタリア
ロックダウンで隔離された自宅を「楽園」と呼びながらも、未来が不安だという。この世に楽園などありはしないのかもしれない、と思いながらも、やはり景色は美しい。

P32
バングラデシュ
撮影者がわが家と呼ぶ「難民キャンプ」
3歳のころからここにずっといる、という他国の現実に目をつぶりたくなる気持ちもある。それでも、これが世界かと。
見栄えの良い景色ではないと撮影者が言うけれど、私は好きだ、と口にすることもたやすいけれど、ならばずっとここに住めるか? と問われれば、答えに窮して、黙るしかない。
争いのない世の中を願います。

P33
ケニア
窓の向こうには希望が見える。
そう言い切ってくれる撮影者が嬉しい。

P37
日本
日本のアパートやマンションによくある、隣のアパートやマンションの壁。
壁の向こうには、自分ではない誰か他人の別な人生を物語と呼ぶ撮影者。それを知っているだけで、この人の心がどれほど豊かかと感心する。

P38
ルーマニア
ベッドルームから撮影したという夕焼けの景色が、すごく美しい。

P39
スウェーデン
窓辺に横たわる、撮影者の愛犬と庭の景色。愛犬は撮影の数日前にお別れしてしまったというから、そんな愛おしい景色を共有してくださったことに感謝が尽きない。
この本を読んだ人たちの記憶のなかでも、撮影者の愛犬は生き続けるだろう。

P57
タイ
窓から見える、隣家との壁? の上で眠るオオトカゲ。
私も見るぶんにはすごい! おもしろい! という感想が出る。しかし撮影者の身内は嫌っている、という素直な感想が彼らの生きる日常を教えてくれる。それも含めて「おもしろい」。

P58
イスラエル
窓の向こうにはハイキングコースがあるという家から。ロックダウン中で、そうしたハイカーは消えてしまったのだろう。
それでも「4本足」のハイカーはいるらしい。

P60
インド
「神の使い」が写る1枚。
遠い国、インドから幸運を分けてくれてありがとう。

P61
スペイン
家の窓から海が見えるだけでも絶句してしまうのに、この海の青さ!

P64
ニカラグア
跳ね回る2頭の馬。意図して描いた絵ではなく、自宅から見える風景だというのが信じられない。
撮影者も祝福された気分というほどだからめずらしいのだろう。

P67
アメリカ
愛犬が眠る庭に、遊びに来た鹿とリス。
眠りはじめたばかりだという愛犬は、まだうまく遊べないだろうけれど、こうして遊びに来てくれる動物たちがいてくれることできっとすぐに慣れるだろう。毎日、自分を見守ってくれる家族もいるのだから。

感想の続きは書籍の現物を手に取ってから。
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