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不良娘、料理をボイコットする

わたしは最近、自分のために料理をするのをやめた。
やめたとき、不良になったなあとちょっと思った。

就職してから4年、疲れてご飯を作らない時もあるけど
だいたい簡単なものを作って食べていた。

自炊を本格的に習慣としてはじめた数年前、
友達数人と料理に関するグループLINEを作った。
趣旨は、自分の作った料理の写真をUPして
美味しそうとか今日も偉いとか言い合うことで
料理のモチベーションをあげるためのものだった。

毎日料理の写真をあげよう!というルールはなくて
誰かの写真に対する返信もしたりしなかったりで
気ままにみんな料理をあげたり写真を見たりしていた。

ある日、そのひとりの友達が
「最近、仕事が忙しくて料理を作れてないことが多いからグループを抜けるね」といって退会した。

その友達はいちばん真面目で誰の写真にも
丁寧に返信をくれて作る料理も綺麗だった。

元から大雑把で、その料理LINEにも外食のラーメンの写真を
平気であげるような性格のわたしは、
その子は根が真面目なんだなあと思った。

それから数年、グループLINEのメンバーは
定期的に入れ替わりはあったけど相変わらず続いていて
わたしは料理の写真をあげたりあげなかったりしていた。


そしてこの夏、仕事終わりに
台所で味噌汁を作っていたわたしは汗だくだった。
その日は猛暑で気温は災害レベル、
部屋のクーラーは台所まで届かなくて
ガスコンロの火をつけると汗が止まらなかった。

味噌を溶きながらわたしは、ふつふつと腹が立ってきた。

なんなんだ、この暑さは。
仕事から帰ってきてわたしはなにをしてるんだろう。
たったひとりこの部屋で暮らす自分と
うまくやっていきたいだけなのに。

思い返せば、わたしは料理を作り始めて嫌になってしまったのに材料を広げちゃったから作りきるしかないこの感じが嫌いだ。
ごはんも昔からハマると好きなものだけ永遠に食べるタイプなので、栄養バランスの取れた食事なんて半年に一回くらいの頻度でやってくる、丁寧な生活をしたい日に外食で摂るからいい。

カチンときたまま、完成した味噌汁を飲みながら
わたしは考えた。

そもそもなんで、わたしは料理をするのか?
なんとなく、ごはんを食べる手段として
お弁当や外食はサブ的ポジションというか
正攻法は、手作りという無意識の圧があるように思った。

そのときふと、あのグループLINEを抜けた友達を思い出した。
ああ、あの子はごはんを作る余裕がないことに罪悪感を感じることがストレスだったのか。

わたしにとって、ごはんを作らない日でも
グループLINEのみんなの料理の写真はストレスではなかった。
それでもなんとなく、素麺だけの写真はちょっと気まずいから今日はあげなくていいやという日もあった。

ストレスの種は、わたしの中の
手作りが立派で丁寧、という無意識だった。

その日からわたしは、料理をしたい日以外は
料理をしないことにした。

そうすると、料理をしたい日というのは
全く一日も訪れなかった。
どうやらわたしは料理が好きじゃなかったらしい。

わたしはグループLINEでは見る専門になって、
人の料理を見るのが好きになった。
自分の好きときらいを、選択することが
こんなに自由を連れてくるなんて。


自分の「きらい」の種をどんどん捨てて
新しく入ってくる、好きをどんどん捕まえるんだ。

今日もわたしは、ラーメンをすすりながら
無意識の圧力にNOと言う。

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