死刑制度―米国の事情―

アメリカでは1972年に死刑執行がいったん停止されましたが、1976年の連邦最高裁判決で復活。
死刑執行は南部の州、特にテキサス州に集中しています。
しかし、死刑執行数、死刑判決はともに減少中です。

その大きな理由は相次ぐ冤罪の発覚です。
また、被告が有色人種や被害者が白人の場合に死刑判決が出やすく、人種差別的である疑いがあります。


2020年からのバイデン政権は連邦政府レベルでの死刑廃止を公約にしています。
それをうけて昨年7月連邦レベルでの死刑執行の一時停止を発表しました。

州レベルでは、死刑を廃止しているのは50州中23州。過去10年間執行していない州を含めると36州になります。昨年3月にはバージニア州が南部の州として初めて死刑を廃止しています。

また、米国では執行方法は薬物注射ですが、この薬物の主な調達先である欧州の複数の製薬会社が2012年頃を境に、使途が処刑の場合の販売を拒否するようになりました。
このため現在は米国内か他の国から調達した薬物に頼ることに。
しかしその品質が信頼できず、執行をめぐるトラブルも明るみに出ています。

このような事情に加えて、米国では、前大統領のトランプ氏が、任期終了間際に、選挙向けの人気取りで、死刑を執行したこともあって、死刑制度に対する信頼が大きく揺らいでいます。

米国では、死刑執行の予定は、本人はもちろん、メディアに対しても公開されます。
執行の際には被害者遺族や家族のほか、記者が立ち会えるケースも多くあります。
面会の制限も緩やかで、確定死刑囚が拘置所内でメディアの取材を受けることも珍しくありません。
執行までの姿を追ったドキュメンタリー番組が制作されることもあるほどで、刑務所長や執行に携わる刑務官などがインタビューに応じ、死刑に関するさまざまな情報を公開し、ときには自らの意見も述べます。
死刑問題を扱うNPOが持つ情報は豊富かつ具体的なもので、インターネットに接続すればホームページからそれらを容易に知ることもできます。

このように情報公開が進んでいるので死刑に関する議論も活発に行われるのでしょう。

 

日本では凶悪犯罪が起こると安易に「犯人を死刑にしろ。」とか「死刑は当然」と言う意見がメディアで発信されます。
その結果、死刑判決がでても、その後は無関心です。
一方政府は死刑を世論が支持しているからと言って死刑判決は出しますが、いざ執行となると国際社会からの視線が気になり、なかなか執行できません。

今後アメリカが死刑執行に消極的になれば、ますます執行できなくなり、死刑判決は事実上終身刑になってしまうでしょう

死刑制度について、日本も見直す必要があるのではないのでしょうか。


参考文献
「ルポ死刑―法務省がひた隠す極刑のリアルー」佐藤大介著 幻冬舎新書


執筆者、ゆこりん

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