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日本のがん治療における本質的な課題とは

母が余命宣告を受けてからというもの、苦しい日々が続きます。当初、「心の叫び」として2つの記事を掲載しました。

しかし、こういう時こそ、論理的かつ冷静に対応をしなければなりません。
 
一定の感情に支配された後、理論派としての自分を取り戻して「どのように本人の望みを実現させるのか」という命題に取り組み始めました。
 
幸い、未知の情報を分析・評価してきたキャリアが生かされ、日本のがん治療における本質的な課題にたどり着くことが出来たと思っています。
 
日本人の2人に1人はがんに罹る時代。
 
この命題を通じて得たものは、きっと誰かの役に立つと思ったので、今回はそのことを包み隠さずお話したいと思います(以下、文字削減のため「である」調で記載します)。

本稿で使用する用語の定義
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1 大原則を整える
第一報に接したとき、本人と周囲の者は動揺を余儀なくされる。時に意見が割れて収拾がつかなくなることも。そんな時は、先ず大原則を整えることから始めよう。
 
(1) 本人の気持ちに寄り添う
最初に考えることは「本人の気待ちに寄り添う」ということ。そして、状況が変わっていく中で、本人の気持ちが置き去りにされないように、一貫してこの大原則はブレてはならない。
 
(2) 余命を決めるのは本人
「すい臓がん・ステージ4」という言葉の印象や「余命宣告」を鵜呑みにして、実態を確認することもせず「もう十分に長生きしたから」とか、本人以外の者が余命を決めつけるのは如何なものだろうか。
 
豪快に生きる人は、残された命を存分に楽しもうとするかもしれない。しかし、私の母はそういうタイプではなかった。
 
「まだまだ、元気で生きていたい」

本人がそう言うのなら、その方向で最大限に支援するのが家族の務め。

 
生きる希望を失えば、それこそ病も進行する。「一緒に頑張ろう、きっと乗り越えられる」そういって励まし続ける。それが、人の気持ちに寄り添うということ。
 
あらゆる人に死は訪れる。
寿命を決めるのは神だけど、
余命を決めるのは本人。
 
(3) 治療法を決めるのも本人
そして、治療法を決めるのも本人。
 
ただ、時に本人は思考を失うこともある。特に高齢者には著しく困難な障壁だろう。母の場合、「どうしたいか」と問うても「分からない」と答えることが多い。
 
恐らく、理解が難しいか、忘れたか、考えたくないかの何れかだろう。
 
そのような場合、周囲が確たる「信念」に基づいて適切な方向に導く必要がある。

確たる「信念」とは?
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周囲が選択肢を見つけて、具体的に詰めていく。そのようなお膳立てをした上で、最終的にそのやり方を選ぶかどうかは本人次第。
 
(4) 治療費は本人の資産の範囲内で
保険適用外の治療法は、かなり高額になる。状況にもよるが、基本的には周囲の者が際限なく手出しすることは避け、治療費は本人の資産(注1) の範囲内で収めた方が良い。
 
(注1) 本人の預貯金に加え、株・有価証券・貴金属・動産・不動産の譲渡・売却による現金化、生命保険の生前給付、葬儀積立金の解約払戻(=小さなお葬式にする)など
 
(5) 同時に、終期への備えをする
ただ、現実問題として高齢者のすい臓がん・ステージ4からの生存率は極めて低い。そういう意味では、終期への備えも必要。
 
緩和ケア(心身の症状緩和、QOL(Quality of Life)の維持など)(注2) と、その先のターミナルケア(終末期医療)、そしてリビング・ウィルに至るまで話を詰めておく。

(注2) ホスピスとも言うが、ホスピスはキリスト教から来た概念で、死後の世界への旅立ちを手伝う宗教的な概念も含まれる
 
加えて、遺言書作成、生前贈与、葬儀の希望、行きたかった場所に行く、会いたかった人に会う、聞けなかった話を聞くなど、本人が生きているうちにできることを。
 
2 がんになる仕組みを知る
(1) がん細胞は、日々、生み出されている
およそ60 兆個もの細胞から成る人間の身体では、日々、新陳代謝を繰り返す中で、誰もが例外なく数千個にも及ぶがん細胞を生み出している。
 
しかし、健康な人は免疫システムが正常に働いているので、がんに罹ることはない。
 
(2) がんは偶然ではなく必然
免疫力、すなわち自然治癒力を低下させる生き方の積み重ねが、がんを生み出す。特に、ストレスや、食生活・腸内環境の悪化が免疫力を低下させ、生き残ったがん細胞が段階的に発展するとがんになる。
 
つまり、殆どのがんは、たまたま発症した「偶然」の産物ではなく、自分自身が招いた結果であり「必然」ともいえる。

そして、悪しき生活習慣を改めなければ、がんは再発する。「それまでの生き方を変えること」が、本当のがん治療。
 
そのことを本人にも教え諭して、しっかり認識してもらうことが肝要。 
 
3 病状をしっかり把握する
そもそも「ステージ4」は、必ずしも「末期がん」を意味するものではない。他の臓器への転移が認められ、3大療法で言うところの手術と放射線治療が難しいだけのこと。
 
固形がんの場合、腫瘍が内臓を圧迫して臓器不全が起きたり、がん細胞が栄養を横取りするなどして患者は死に至る。
 
逆に言えば、腫瘍が見つかり転移したとしても、進行を食い止め、臓器が正常である限り生きていられる。

だから、思い込みは禁物。
 
● 現状はどうなっているのか
● 具体的にどこに腫瘍があるのか
● 実際、臓器不全が起きてるのか
● 進行の可能性や予後はどうなのか
 
物分りの良い患者であろうとせず、分からないことは率直に確認することが大事。
 
4 がん治療の全体像を俯瞰する
現状を知った上で、どんな治療法が有効かという検討に入る。下図は、日本におけるがん治療の全体像を示したもの。

日本のがん治療の全体像
注:スマホの方は拡大してご覧下さい (^^;
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以下、図中の※印について補足します。
 
※1 西洋医学が絶対じゃない
立ちはだかるのは、日本のがん治療システムという大きな壁。西洋医学は対症療法が基本。EBM(Evidence-Based Medicine)に基づく診療ガイドラインにない治療は行わず、助言もしない。
 
しかし、図のように俯瞰的に見れば西洋医学は様々な治療法の「一部」であることは明らか。先ず、それが「絶対」という呪縛から解き放たれることが大事。

※2 代替医療は有効なのか
ガイドラインの外にある自由診療には、根本治療を試みる治療法もある。しかし、この分野に国や医療機関は感知しないので、自力で探すことになる。

代替療法一覧を作ってみる
注:スマホの方は拡大してご覧下さい (^^;
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ただ、この分野は玉石混交といわれ、その殆どは効果が証明されていない。何が「玉」で何が「石」かは評価が難しいところだが、例えば、免疫力を高める治療法など、
 
● 理論的に筋が通っている
● 副作用が少ない
● エビデンスが全く無い訳ではなく、
 効果が上がった人も確認されている
 
といった治療法については、試してみる価値はあるだろう。
 
その際、西洋医学の軽視や否定は禁物。代替医療にのめりこんで、本人の状態確認が疎かになることがないよう、西洋医学の主治医を基軸としながら代替医療を併用する。
 
一方、代替医療に付きまとうのは高額経費の問題。殆どは保険適用外。どのように経費を捻出するかについては、先述の「1(4) 治療費は本人の資産の範囲内で」を参照。
 
※3 抗がん剤は使うべき?

他臓器への転移が認められ、ステージ4と診断されると、局所治療(手術、放射線)は「効果なし」として却下される。
 
そうなると、残された手段は唯一、化学療法(抗がん剤)となる。
 
しかし、ステージ4となると、抗がん剤を使う目的は、いよいよ「延命」ということになってくる。
 
抗がん剤は免疫力を低下させるので、寛解への道を遠ざける。
 
副作用に苛まれた挙句、やがて効かなっていく。高齢者は逆に「縮命」のリスクもある。
 
※4 セルフケアが基本
医者も介護サービスも、免疫力を回復するための食事療法や栄養指導は行わない。
 
質問しても「食事は普段どおりに」としか答えが返ってこないので、医者任せにしている限り、根本治癒にはたどり着けない。
 
よって、先述のように「がんは自分が招いたもの」という原点に立ち返り、生活習慣を抜本的に見直し、自助努力で各種のセルフケアに取り組む必要が出てくる。

実際に「22:55」さんからご紹介頂いた「がんが自然に治る生き方」ほか、複数の書物によれば、世の中にはセルフケアによって寛解したがん患者が一定数、存在する。
 
日常生活では、水と食事の改善が肝要で、水道水、食品添加物、合成保存料、期限切れの食材、塩分・糖分の過剰摂取は避けた方が良い。

健康な食生活の基本「まごわやさしい」
地域情報サイト「まいぷれ」

調理代行が難しい場合は、自然派食材中心の通販を利用すると良い。

自然派食材あれこれ
(Photo by ISSA)

「勿体ない」は命取り。古い食材は片端から廃棄する。消費期限の管理が難しい場合は、出来るだけ食材を「冷凍」保管にする。

卓上タイプのウォーターサーバーは、ボトル交換の手軽さも含めて扱いやすい。常時、お湯も出るのでコンロの消し忘れなどのリスクも低減できる。

病状や処方箋との兼ね合いもあるが、出来るだけサプリ、特に腸内環境を改善するサプリは併用したい。

このほか、空調(温度・湿度・清浄)を整え、介護用品をレンタルし、各部屋及び動線上の障害を取り除き、運動や趣味が日常となる仕組みを作るなど、知恵を振り絞って安全でQOLが高まるような暮らしへと導く。
 
セルフケアの成否は、本人の意識改革に加え、周囲の説得力次第。
 
しかし、セルフケアが苦行になっては本末転倒。生活習慣を変えることは容易ではないので、無理強いは禁物。
 
メソッドばかりに気を取られ、本人の気持ちが置き去りにされないように注意が必要。
 
※5 管理事項も自助努力

周囲の者は、仕事や家庭を抱えながら公的介護保険を申請し、本人のスケジュール、診療記録、食材など、様々な管理事項を支援することになる。
 
処方箋も複雑になるので、工夫が必要。

腫瘍マーカー、白血球数、リンパ球数などの血液成分の変化などは、自分たちでも把握できるので、医者任せにせず自ら関心を持つことが大事。
 
 治療の方向性を導きだす
西洋医学による対症療法では、がんを切るか、薬漬けにするか、焼くか、の何れか。しかし、母のようなステージ4の高齢者の場合、緩和ケア以外に打つ手がない。
 
そこで、代替医療の出番なのだが、様々な治療法がある中で、あれもこれもと手を付ける訳にはいかない。
 
治療の方向性を検討する際に、最も根源的で重要なポイントは、免疫システムの正常化を図るということ。
 
そもそも、がんに罹るということは、下図の免疫サイクルのどこかに問題が生じた結果である。

がん免疫サイクル
日本先制臨床医学会ホームページ

したがって、本人の免疫サイクル上の不具合箇所に対策を講じ、しっかりと免疫サイクルを回してあげることが大事。
 
併せて、生活習慣の抜本改善(先述のセルフケア)による免疫力強化が、本当の意味での根本治療につながる。

【結論】導出した治療の方向性:私の母の場合
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 日本のがん治療に係る問題点
(1) 全体を見渡せる司令塔が不在
社会には、縦割りの弊害を生み出す「〇〇の専門家」気取りが多くて、全体像を俯瞰できるゼネラリストや司令塔があまり育っていない。
 
医療分野でそれを担うのは厚労省であろうが、2007年の「消えた年金」問題でも分かるように、各省庁の中でも極めて杜撰で役所的な性質が際立つ。
 
実際、同省の統合医療サイトは、いまいち痒いところに手が届かない。
 
民間に委託するなどして、代替医療やセルフケアから管理事項に至るまで、初期において包括的なアドバイスを受けられる仕組みが欲しいところだ。
 
(2) 患者と家族の負担が大きい
結果、患者と家族の負担が大きくなる。未だ多くの家族ががんと分かってから、白紙からのスタートを余儀なくされている。
 
他方で、世の中には「口は挟むが、行動を伴わない人」が実に多い。このような輩がもたらす噂話レベルのいい加減な情報に惑わされ、貴重な時間を無駄にしたという話も少なくない。
 
(3) 公的医療保険の適用範囲が狭い
国民皆保険とも言われる日本の保険制度は、そもそも相互扶助で成り立ってきた。2人に1人ががんに罹る時代。
 
労働人口を確保する意味でも、公的医療保険の適用範囲をもっと広げても良いのではないだろうか。
 
(4) 西洋医学一辺倒
対症療法を是とする西洋医学には、自ずと限界がある。西洋医学を絶対視する風潮が、医学の発展を阻害していないだろうか。
 
国として代替医療の開発に乗り出せば、医学界の既得権益に群がる抵抗勢力が黙っていないだろう。
 
しかし、そろそろ根本治療にも軸足を移すとき。日本のがん治療の現場が、対症療法のみならず、平行して根本治療も支えていく。
 
こういう考え方が常識になっていかない限り、 日本のがん治療は限界を超えられない。
 
7 「運命に抗う」ことの真意
第一報に接したとき、周囲の者は「すい臓がん」「ステージ4」「余命宣告」などの悪しきイメージに囚われ、「もはや手遅れ」という暗示にかけられる。
 
そして、「母の『生きていたい』という意に寄り添い、その方向で手を尽くす」という私の信念は、「私が母の生存に執着している」と誤解された。
 
これはがんとの闘いであると同時に、勝手に人の命を運命づける固定観念や医療システムとの闘いでもあると悟った瞬間だった。
 
これらと闘い、母の「生きていたい」という気持ちに寄り添い、希望を支え続ける。これが「運命に抗う」ことの真意。

おわりに
私の立ち位置は、当初から「母の終期を受け容れる準備をしつつ、治療も諦めない」ということでした。
 
ただ、治療の望みがあるかもしれない自由診療について、医療機関がアドバイスを避けている現状においては、本人と家族が自ら考え行動する以外に道はありません。
 
余命宣告とは実にいい加減なものだと思います。実際「年越しは難しい」とまで言われた母は、何とか無事に年を越すことが出来そうです。
 
本稿では、がんを克服する考え方や様々なメソッドをご紹介しましたが、やはり、冒頭で述べた「本人の気持ちに寄り添う」ことが大原則です。
 
本人が「自分にしか分からない痛みや、どうしようもない苦しみを理解ってくれた」と感じることが一番の治癒なのだろうと思います。
 
いよいよ逝くことになったとき、「ああ、この子が私のために一緒に闘ってくれた、私は愛されていたんだ、幸せな人生だった」と思ってくれるのなら、それもひとつの治癒と言えるのかもしれません。
 
また、「運命に抗う」からこそ得ることのできる貴重な知識・経験は、いつか別の大切な人が、がんに罹った時に、より良い形で生かされる。
 
そして、今後の私自身の生き方さえも変えていく。
 
母は今、自らの身をもって、そのことを教えてくれているのだと思います🍀
 
【参考図書】

これ以外にも、たくさんの本を読みましたが、世の中には「我こそは、がん患者の味方」的な誘い文句で金儲けを目論む邪な輩も存在しますので、「何事も鵜呑みにしない」ように心がけてください🌱

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