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星海航路

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2012年発行の詩集豆本「星海航路」のWEB再録です。
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記事一覧

憧憬

御手に紡がれた物語の軌跡は

金色のお砂糖を振り撒いて

天の川のようにキラキラと輝きながら

やがて大きな海へと注ぐのだろう

瞼の裏に広がる宇宙で

金色のお砂糖を集めにゆこう

真っ暗闇に散らばった

小さな夢の欠片たち

撒かれたお砂糖を掻き集めて

魔法のお菓子が出来上がる

涙ひと匙をスパイスに

拙い恋が舌先ざらり

ほしのうみ

星のさざなみの向こうに

静かに浮かぶ月の船

灯りを求めて伸ばした腕は

あなたの白い指先を見つけた

光の岸辺で教えてくれた

物語の続きが知りたい

もしも叶うなら

読み聞かせて 眠れぬ私に

もしも叶うなら

連れて行って あなたが見た海へ

色褪せたページに並ぶ

鮮やかな記憶の花束

分厚く重いあなたの本と

落書きの多い私のノート

光の岸辺でそっと話した

物語には続きがあるの

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夜が明けたとき

右も左も

上も下も無い

まっくらやみ

何度目を

開けても閉じても

まっくらやみ

手を伸ばしても

何も掴めない

そのてのひらすら

どこにあるのか

そんな時

聞こえてきた

なんだか心地よくて

優しい声

声のする方へ

振り向くと

光を見つけて

近づいた

やがて辺りは

明るく照らされて

僕はやっと

自分の輪郭を知った

君の声が

この殻を破って

生まれ

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延々

川の終わりは海の始まりだと

貴方はそう教えてくれた

一度ピリオドを打ったとしても

また次のエピソードは書き足せる



その手に何も掴んでいないなら

これから何でも掴めるってこと

空っぽの手のひらだからこそ

煌く川の流れも掬えた

全ては砂時計のように上から下へ

そして砂が途切れたら一回転

朝と夜が互いを追いかけるように

ぐるぐると巡り廻ってゆく

だから私は安心して手を振れる

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