見出し画像

読書📚『エデュケーション』『紙の動物園』ほか

最近出会えてよかった本たち。落ち着かない時期ですが、ひとまず自分の手の届く範囲で働き、考え、備えていくしかないと思いながら。


『エデュケーション  大学は私の人生を変えた』  タラ・ウェストーバー

偏った考えの家に生まれ学校に一度も通ったことのなかった著者が、独学で大学に入学し学ぶノンフィクション。あらすじだけならサクセスストーリーですが、著者の家庭環境が想像以上に過酷で、序盤は読むのがハードでした。ですが大学入学を果たし、世界を少しずつ塗り変えていく第2部からは圧巻。

教科書の存在さえ知らなかった(大学に入るまで「ヨーロッパ」を大陸ではなく国だと思っていたという)人が、意志をもって専攻を選ぶようになり、果ては論文を書くようになるというのがどういうことか。
一概に幸せなお話ではない。それでも、読んでいるこちら側まで、世界の見方を変えてもらいました。

私はずっと、自分が確かに理解しているとは言えないことについて、それが確かだと主張する人たちに道を譲る以外の選択肢を持たなかった。つまり私の人生は、私以外の人たちによって語られたものだったのだ。彼らの言葉は押しつけがましく、語気が荒く、そして絶対的だった。自分の声に、彼らの声と同じような強さがあるかもしれないとは、それまで考えたこともなかった。

『エデュケーション  大学は私の人生を変えた』 タラ・ウェストーバー著/村井理子訳

迷ってらっしゃる方はぜひ(ただ、暴力や家族にトラウマのある方は少しご注意を)。読後は、訳者の村井理子さんと作家の桜庭一樹さんの下記対談もぜひ。

『紙の動物園』  ケン・リュウ

中国、アメリカ、日本にゆかりのある著者が語るSF。本当に引き込まれますね。

学生の頃、ゼミで僻地に行かせてもらったとき「(過疎や災害などの)ここで起きていることを理解してもらうには、よその人に訪れてもらって、少しでも身近に思ってもらうしか術がないんじゃないか」と先生が結論づけていたのを覚えています。地域活性の分野で「関係人口」というワードをよく聞いた頃。

知っている場所・なじみのある場所を増やすこと。行って生活することで、それまで「よそ」と思っていた遠い所の出来事が一気に近づいて見える。そんな感覚を思い出しました。
複数の国に関わりを持ち、働きながら作家業に取り組む作者の頭の中はどうなっているのだろう。

あとは……数年間に半ばまで読んでいたのを再読したのですが、20代の頃はエンタメとして純粋に楽しんだのに対し、30代になって読むと、不老や不死を扱った作品にしんみりした気持ちになってしまいました(疲れているわけではなく元気なのですけどね)。冬の入り口に読んだからかな?
最後の『良い狩りを』が厳しくもきれいで、彼らのことを時折思い出しています。

『生活フォーエバー』  寺井奈緒美

古本と新刊 sceneさんで通販購入。歌人で土人形作家の著者によるエッセイで、各話の最初と最後には著者の短歌が添えられています。生活実感とユーモアあふれる文と歌にすっかりハマってしまいました。可愛くてどこかさびしくて優しい。

村上春樹さんの作品を読んだあと数年、スパゲティを茹でるときに物語を思い出したりしましたが、この本のことも、皿洗い中や仕事が立て込んだ(そして一向に片付かない)ときにずっと思い出すのだろうな。嬉しい。

『隙あらば猫』  町田尚子

絵本や装画で知られる町田さんの画集。ビニール入りで立ち読みできなかったのですが、買ってよかった!

虚ろなようで意志の強そうな少女たち。猫は、ムチッとしたリアル猫と二本足で立つ擬人化猫、どちらも大変かわいくておすすめです。
人物も動物も皆、真似できない絶妙なバランスで成立していて、絵にしかできないことだよな、と楽しかったです。あとは、着衣で椅子に座る猫たちが尻尾をそこに置くのだという発見(笑)。
開きやすいタイプの製本になっていてじっくり観られます。

昨年は仕事スピードを上げようと試みたり、安くて条件のよい部屋を見つけて引っ越したりと、生活を整えるための準備運動で終えてしまったので、今年は少しずつ前進していこう……。noteは徘徊させていただきつつ(スキ魔なので気にしないでくださいね)。

皆さんもおすすめ本があったら教えてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?