薬研でコーヒーを淹れる、秘密基地にたどりついた話
「秘密基地」か 「仲間が集まるガレージ」。
先日ソロ散歩で、偶然見つけたお店を、強いてカテゴライズするならである。
ちっとも気取っていないのに、センスの良い空間だった。きっと、何一つ無理せず、楽しい空間を提供できるから、そう感じるんだろう。
本当のおしゃれとは、自分の個性をきちんと知っていて、力まずに滲み出すことなのかも知れない。
このお店は「お山の暮らしのアンテナショップ」。実に新しい。街中にいるのに、懐かしい里山を確かに感じる。
薬研コーヒー体験
さてこのお店では、
自分で生豆を煎る
↓
薬研(!!!!)で挽く
↓
湧水を使いフレンチプレスでいただく
というクールな体験が出来る。
なんだそれ。楽しそうすぎる。
薬研なんて、時代劇でお医者さんがゴリゴリやってるのしか見たことない。
ということで、早速体験してみた。
まずは弱火で豆を煎っていく。
まだまだ青っ白い生豆だが……
5分の弱火の後、火力を上げて10〜15分程で、見慣れたコーヒーの色味になる。ずいぶんコーヒーの匂いがしてきた。
これをザルに上げて、風通しの良い場所でぐるぐるかき混ぜる。かき混ぜると皮が剥けて、フワフワと風に舞って行った。
ぐるぐる完了。コーヒーオイルが滲んで、ピカピカしている。
ここで待っていました、薬研でごりごりタイム。ひとたび薬研車を押すと、ふわ〜っとコーヒーの良い香りが舞い上がって、感動した。
薬研は刃の先端というよりも、刃の側面を使うと良いそうだ。
すぐに私たちのよく知る、コーヒーの姿になってきた。
淹れて飲んでみる
使うお水はこちら。松本は湧水が有名なのだけど、お店のすぐ近くの井戸の湧水を使う。
教えてくれた方いわく、フレンチプレスで飲むのが美味しいとのこと。
そして聞かれた衝撃の一言。
『お茶碗はどれが良いですか?』
んんん?お茶碗?
聞き違いかな?コーヒーなのに?
本当にお茶碗だった。
そしてコーヒーの“おとも”は、なんと酢漬のかぶ。
コーヒーをお茶碗で飲むのは、香りが鼻まで包まれるから。
甘めの酢漬と合わせるのは、コーヒーの味を引き立たせてくれるから。砂糖・小麦粉・バターも美味しいけど、お菓子が主役になってしまう。
こんな発想を今まで誰がしたことだろうか。
でもちゃんと理にかなっていて、ちゃんと美味しいコーヒーを飲むことができるのだ。
なにより「面白いな」と思ったのは、この一杯と同じ一杯は二度と出来ないんだ、ということ。
普通コーヒー屋さんでブレンドを買うと、味が安定している。浅煎りから深煎りまでの豆をどの量で混ぜ合わせるか、ブレンド比率が決まってるから。商売だもの、当たり前だ。
だけど、このコーヒーは深煎りになった豆と浅煎りの豆が、偶発的に混在している状態だ。
挽き具合も併せて考えると「そっくりな一杯」は作れても「同じ一杯」は出来ないだろう。
世界で一杯だけの、私が淹れたコーヒー。
なんて愛おしいのか。
このお店はどこ?
私は主に男性の方に接客して頂いた。
彼の口から、次から次へと出てくる話題が不思議で、いろんな引き出しを開けてみてもらうのだけど、その中にはことごとく、知識と話題が入っている。
これはクセになる出会いだ。
私が今まで持ち合わせていなかった視点から、切り返しが飛んできて、話せば話すほど新鮮な気持ちになる。
物事には色んな見方がある。物事の形は、360度のどこからでも見えるように、まん丸なのかもなと思った。
そんな不思議で安心する、基地のようなお店がこちらだ。
ぜひぜひチェックしてみて欲しい。
忘れていた何かを思い出せる体験ができるかもしれない。
最後までご覧頂きありがとうございます。 あなたが、これを読んでちょっとだけ、懐かしい気持ちやあったかい気持ちになってくれたら嬉しいです。 精進致します。