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家族旅行がきまった日のこと

母からラインが来た。夏の家族旅行のフライトのスクリーンショットだった。「まゆちゃんが行きたがっていたところだなって記憶があって」と。確かにずっと行きたいと言っていて、今年こそはと思っていた。普通ならサプライズだと喜ぶシーンだが、全然そんなことはないのが我が家。

それはもうすでに購入済みのものだけど、プレゼントではない。私以外の4人で確定しているのだという。「一緒にいかない?」と聞かれたけれど、一瞬よく意味がわからなかった。なぜ、チケットを取る前に聞いてくれないのか。私が行きたいと知っていたなら、ましてやあとで誘うなら、最初から誘ってくれればいいではないか。私の家族は、すこしおかしい。

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4月から出社が格段に増えた。これは食費がばかにならないぞと思って、お弁当を初めてつくってみた。3,000円で、サーモスのスープジャーまで買ったのだ。持っていったポトフは、朝のままふわりと湯気をたたせている。野菜がとろりと溶けるまで煮込まれていて、我ながら美味しくつくれた。

スープジャーといえば、中学のころのお弁当を思い出す。スープとおにぎりや、スープとおかず。私は高校時代、塩のおにぎりばかり持っていって「塩おにぎり」と呼ばれていたことがある。バレー部にいたころは家族で一番起きるのが早くて、私がバタバタと出かける合間に母を起こしていた。

だから、お弁当などを用意してもらった記憶があまりに少ない。なんなら、自分で何かしら用意していた記憶だけがあり、パートナーが専業主婦のお母さんにお弁当を作ってもらっていたと言うのを、妙に冷めた気持ちで聞いていたのだ。私は自分でやってたんだけどね、と。

でも、スープジャーを買って、私にも母のお弁当を持っていった時期があることをはっきりと思い出した。中学生のころだろう。そこにはポトフのような家庭料理は入っていなくて、インスタントのコーンスープと冷凍食品がメインだったけれど。お弁当のいちごはぶよっとなって嫌いだなんて、今思えば随分と贅沢だった。

最近は、家族との距離がゆっくりと開きはじめている。パートナーとの居心地の良い時間を求めて、自分の「家族」をつくる準備をしているのかなとも思っている。仲が悪いわけではなく、ただずっと一緒にはいないだけ。

だから、夏の旅行にやっぱりついていくことにした時、なんとなく新鮮な気持ちになった。事前に相談もされなかったし、当然のように私以外で組まれて、それなのに行くのが当然と誘われた旅行に。もっと早く言ってくれればいいのにと口では言いながら、楽しみな自分がいる。


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