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わたしたちは夫婦別姓を選んだ

昨年9月に結婚した。でも入籍はしていない。なぜなら、わたしたちは選択的夫婦別姓を望んでいるからだ。だから、わたしの住民票の続柄は「妻(未届)」になっている。いわゆる事実婚だ。

なぜ夫婦別姓を望んでいるのか、実際に生活してみてどうなのか、少しだけまとめてみた。


1) 夫婦別姓を選んだ理由

「結婚したら苗字はどうしよう?」
ふと恋人(夫)とそんな会話から始まった。
今の日本で法律婚をするということは、どちらかが一方の籍に入らなくてはならない。つまり、苗字を変える必要があるのだ。調べてみればみるほど「なんで?」という気持ちが大きくなっていった。
両親はわたしの姓名判断をお寺でしてもらい「はな」と命名した。つまり、苗字ありきで名前をつけてくれたのだ。わたしは両親にとって、待望の第一子だった。お花のように可憐に健やかに育ってほしいと名をつけてくれた。
わたしは自分の名前がフルネームで大好きだ。アイデンティティのひとつになっている。

「村上はな」は実名ではなく作家名

夫も同じように自分の名前が大好きだ。
なによりもお互いの苗字が違っても、わたしたちは夫婦だ。
双方が大切にしている名前で居続けるには、今の日本では事実婚しか手段がない。法律婚ではないからデメリットもあるけれど、それよりもお互いの気持ちを尊重することにした。
こうして、わたしたちは事実婚を選んだ。

2) 家族に受け入れてもらえる?

わたしたちがいくら夫婦別姓を望んだとしても難しいことがある。それは、お互いの両親がよしとしてくれるかだ。自分たちはよくても、家族にわだかまりが残ってしまうことは望んでいなかった。
幸いにも夫のご家族もわたしの家族も夫婦別姓、つまり事実婚を認めてくれた。母は「イマドキだねぇ」なんて、のんきに言っていた。
先日は両家で食事会をした。緊張したけれど、とても楽しかった。両家の家族が「お幸せに」と、わたしたち夫婦生活を見守ってくれている。ありがたくもあり、いかに心強いか改めて思い知った。
家族は一生、家族なのだ。

3) 実際に生活してみて

現状は、さほど困っていない。
夫と一緒に暮らすため今年の春に静岡の会社を退職し、上京した。今は就活中だ。
意外なことに事実婚でも夫の社会保険の扶養に入れてもらえる。今は働いていないので、健康保険料が免除され、国民年金の第3号被保険者となっている。
また、失業保険の受給開始時期にもメリットがあった。
一般的に自己都合退社の場合は、申請日から約2か月間後に失業保険が給付される。でも、結婚するために引越しする必要があって退職した場合は「特定理由離職者」と認定され、約7日の待機期間を経れば受給される。つまり、すぐに生活費がもらえるのだ。
さて、夫婦別姓を望んでやむをえず事実婚を選んだわたしは、どうなるのだろうか。
結論「特定理由離職者」と認定され、すぐに受給が開始された。
でも、この認定の判断はどうやら各ハローワークに任されているようだ。結婚前に住んでいた静岡では、入籍しない限り特定理由になるのは難しいと言われた。しかし、東京では認められた。事実上は夫婦関係であり、続柄が「妻(未届)」となっている点が証拠となった。事実婚でも柔軟に対応してくれた。

4) それでもデメリットはある

所得税の扶養や相続税など、税制面ではデメリットの方が大きい。そして、もし子どもができたらどうするのかという課題がある。事実婚だと、どちらか一方にしか親権がないからだ。
事実婚を選んだことで、今後どんな課題が出てきそうなのか、あらかじめ知っておくことが大切だと思う。ネットで調べたり、本を読んだり、なんとなくでもいいから情報を入れておく。知識があれば、課題に直面したとしても対応することができる。
そして、なによりも大事なのはお互いの考えを尊重することだ。法律どうこうではなく、どんな些細なことでも、結局は夫婦で話し合うことが重要だ。ひとつひとつ丁寧に話し合って、課題をクリアしていけばよいと思っている。一方的に意見を押しつけたり、相手の意見を鵜呑みにしたりするのではなく、「どうして相手はそう考えるのか」本質を理解するように心がけている。

5) わたしたちのこれから

もし選択的夫婦別姓が法律婚でも認められたら、籍を一緒にするだろう。
個人的には、いろいろな夫婦の考え方が尊重され、選択肢が多く設けられたらいいなと思う。今の制度である夫婦同姓、わたしたちのような夫婦別姓、どちらを選んでも夫婦だと認められることを願っている。
人生100年時代。結婚してからの人生の方が、どうやら長そうだ。これからも村上はなとして夫と一緒に生活し、楽しく歳を重ねていきたい。
みんなが自分らしく生きられる社会になることを強く願っている。

番外編

寿退職することが内示で発表されたとき、職場で「苗字はどうなるの?」とよく聞かれた。「苗字は変わらないんです」と答えると「お婿さん?」と聞かれる。どう説明していいのか、返事が難しかった。
途中からは「夫婦別姓がいいから籍は入れず、事実婚です」と答えるようにした。同年代にも両親世代の方にも、そう答えていった。案外、怪訝な顔をされることなく「多様性ってやつだね」と話を聞いてくれた。
こんな何気ない会話でも、胸をはって「苗字は今のまま」と伝えられる社会になったらいいなぁと切に思った。

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