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むるめ辞典

■若者

[読]わかもの

若い者は

[例文]
灯りの乏しい県道を北に進み、遠くに見える山が近くなってきたなと気がついたところにキャバクラがあった。

元々カラオケボックスだった店は頑丈そうなモルタル造りの平屋で、屋根だけがピンクに塗り替えられていた。

その屋根と入り口に提げられた下劣な電飾がいかにもいかがわしく明滅していて、県道を走る車がその光に吸い寄せられて右折し、敷地に入ってくる。

車は大きさや色が少しずつ違うだけで、どれも不自由に地を這う虫のようだった。皆一様ににもぞもぞと縁石を乗り上げ、歩道を横切り、光のほうに寄ってくるのだ。

そのヘッドライトに照らされて、建物の汚れや、くすみがはっきりと浮かび上がって見えたが、誰もそんなことは気にしなかった。

特に若い客は、その辺の河原に案内されても少しも構わないような連中で、彼らは指名する女たちの輝かしい秘密に近づくために晩飯はフライドポテトだけ、というような有様でも高い金を払い、翌日また朝から働きに出かけるのだった。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。