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誰かの不在をみんなで必死に補っていく、それが「チーム」だ 【5/6阪神戦○】

神宮へ行くと、そこにはいつもと変わらない空気と景色がある。選手たちはいつもと同じようにアップをし、球場アナウンスは「打球の行方にご注意ください」と告げる。空は高く、風はまだ少し冷たい。私はその空気に触れるたび、少しだけほっとする。それが、どれほどつらい試合の翌日でも、誰かが抜けた翌日でも。

去年、エイオキが頭部死球で抜けた翌日の阪神戦で、長年のヤクルトファンの先輩が「強いチームは、こういう試合を落とさない」と言っていた。その日ヤクルトは、9回にギリギリまで追い詰めながら、5-6で負けた。

上田が死球で離脱し、そして石山が抹消された今日、それは去年で言うところのこの試合だったのかもしれない。その試合で今日、ヤクルトはしっかり勝った。

ぐっちが抜け、ココちゃんが抜け、上田が抜け、そしてとうとう、石山が抜けた。抹消のニュースを見るたび、心は痛む。もちろん、どうしようもない不安だって感じる。ぐっちの時は涙も出てきた。

でも、ここで私が泣いたところで何かが変わるわけじゃない。ただここで、待つしかできないのだ。

ぐっちの代わりに1番を打つ太田くんは、今日もしっかり相手バッテリーを揺さぶり、エラーを誘って三塁を攻めた。上田に代わって2番を打つこーたろーは、早速タイムリーを打ち、走塁でも仕事をした。ココちゃんがいない中、村上くんは2ランを放った。そして、石山がいない中、初めてクローザーを務めた20歳のうめちゃんは、しっかりセーブをあげた。

みんなみんな、とてもたくましかった。私の不安なんて吹き飛ばすように、この状況でしっかり立ち向かっていった。うめちゃんが9回のマウンドに立つだけで、いや、なんならその前に先輩たちにお水をもらってブルペンから送り出されるところを見ただけで、私は号泣していた。となりのむすめはまじでどん引きしていた。

プロ野球選手である限り、どうしても怪我のリスクはつきまとう。どれだけ気をつけていても、死球で戦線を離脱しなければならないことだってある。誰かの調子が上がらないことももちろんある。チームがいつも100%の状態であることはありえない。それはどんな人にとっても、例えばどんな会社にとっても同じだ。

「チーム」であることの一番の強みは、きっとそういう100%でない状態を、補い合っていけることだ。それがたぶん、健全な組織なのだ。つまり、誰かが育児や介護でその場を離脱することになっても会社は運営できなきゃいけないし、誰かが怪我で離脱してもプロ野球チームは機能しなきゃいけない。「俺がいなきゃだめだな」なんて、誰かに言わせちゃいけないのだ。休むべき人を、しっかり休ませてあげられるのが良い組織だ。

だから今日の試合での若手たちの躍動が、ただただ頼もしかった。何より、その経験の一つ一つが成長につながる年齢だ。その場所で、それぞれの仕事をしっかり積み上げていくことが、明日にも、来年にも、再来年にも、5年後にも10年後にもつながっていく。

でもそれでも、もちろんそれは少しずつみんなが背伸びをしている。背伸びは人を成長させるけど、あまりの重圧は誰かに少しずつ無理を強いる。だからその糸が切れてしまう前に、先輩たちは戻ってきてまた、その背中でたくさんのことを教えつつ、若手たちに息をつく暇を与えてあげなきゃいけない。そうしてチーム全体が、少しずつ前に進んでゆく。

先輩たちの穴を必死でうめた若手たちに拍手を、そして、怪我をした人たちがしっかり治して、1日でも早く戻ってこられますように。もうこれ以上誰も怪我しませんように。


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