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神経科学の研究(工学修士) → エンジニア。人文書を読むのが好きです。人間の身体とテク…

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神経科学の研究(工学修士) → エンジニア。人文書を読むのが好きです。人間の身体とテクノロジーのより良い関係に興味があります。

マガジン

  • 気ままにプログラミング

    ごく稀に血迷ってプログラミングの記事を書くことがあるので、それ用のマガジンです。更新頻度は低めです。

  • 気ままにエッセイ

    日常のなかで、ぼんやりと考えたことを自由に書いているマガジンです。

  • 気ままにじんぶん

    哲学・社会・心理・教育・アート・デザイン系の本を読んだ感想や、関連して考えたことを書いていきます。特に現代思想・現象学・身体論あたりに興味があります。

  • 気ままに神経科学

    ひとの心の仕組みや知覚体験について、主に神経科学を参照しながら書いています。 cover photo credit: https://www.flickr.com/photos/wbur/2926259199

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書くことの愚かさを引き受け、愚かさを通じて私たちが接続されるために

書くこととは原理的に、ひとつの「愚かさ」を引き受けるという選択だと思う。 そしてそれは悪いことではない。「愚かさを引き受ける」とはぼくにとって「生きる」ことと同義なので、けっしてシニカルに言っているのではない。逆に言えば、愚かさの反対の「賢明さ」とは、それを究極まで突き詰めれば、何も言わないことであり書かないことである。(中略) 多くの人は愚かさを避け、自分が愚かに見えることを避けて、ひたすら賢明さだけを追求しているように思える。賢明さを突き詰めた先には死しかないのに、あるい

    • 中途覚醒と冬の朝

      朝つい先週まで30度を超えるような暑さだったのが、朝や夜は暖房が必要かと思うぐらいまで冷え込むようになった。窓の外から聞こえてくる遠くの車や線路の音が混じったような静かな遠音と、みずみずしくも冷え込んだ空気を一緒に感じられる季節が好きだなと思う。 三連休初日の朝、変わった夢で5時ごろに中途覚醒した。かつて高校生のときに思いを寄せていて、そのためにほとんど上手く話せなかったような人と、「最近はどうしているのか」と無難な会話を達者な様子で交わしている夢だった。ふと目が覚め、隣

      • 書き続けます

        書き始めること、書くという修行について お久しぶりです。社会人1年目に突入したということもあって、あまりnoteを書くための時間を取れていませんでした。 書き続ける、ということはとても難しいことだな、と思います。完璧主義、といいますか、自分をなるべくクールに、かっこよく見せようという邪念を追い払うことが必要な気がします。大げさにいうと、書きあげた文章の節々に散りばめられかねない、自分の愚かさや過剰さ(=イタさ)をさらしても構わないのだ、という覚悟がいります。私のような素

        • 弱くて強いひとになる

          大学受験でちょっとした成功体験があってから、もう自分は「弱さ」とは無関係の人間だと勘違いしてしばらく生きていた。未だにそんなこと引きずっててダサいやつだなと思われるかもしれないが、僕にとっては、ずっと憧れていた「強い側」の人間になれた!と思えた、初めての体験だった。もちろん「強さ」は経済的な話でもあるが、ここではもっと実存的なレベルを指していて、世界の主人公でありたいはずの自分と、自分は一介のモブキャラに過ぎないという現実のギャップを克服したような錯覚を覚えた一時期だった(全

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          斎藤環 / 「自傷的自己愛」の精神分析

          最近本をかなり買っている割に,あんまり真面目に活字を追えてない気がするので(少し読んでは積読,の繰り返しです),ここはケジメとして本を読んで考えたことをしばらくnoteに書いていこうと思います.今回は,斎藤環『「自傷的自己愛」の精神分析』(角川新書) についてです. きっかけ斉藤先生の本を最初に手に取ったのは『生き延びるためのラカン』で,フランス現代思想をかじり始めたときに,現代思想が精神分析の系譜を踏まえているというのが分かり,フロイトまで読み込む気にはなれないけどラカン

          斎藤環 / 「自傷的自己愛」の精神分析

          節分で豆を年齢数だけ数えるのがめんどくさいのでPythonに数えてもらった

          ちょっとタイトル詐欺で申し訳ないのですが,自分で数えた方が明らかに早いです. ちょっとしたお遊びと思ってご覧ください. 節分は,年齢の数(あるいは+1)だけ豆を食べると良いといいますよね. 私は現在25歳なので,25個食べることになります.お皿に出してみました. しかし,豆って数えづらいですよね.どこまで数えたのか分からなくなってしまいます. そこでPythonに数えてもらうことにしました. 次のライブラリをインポートします. import cv2import n

          節分で豆を年齢数だけ数えるのがめんどくさいのでPythonに数えてもらった

          自由度が高いときこそ習慣で自分を固定してメンタルを安定させる

          高校や大学,資格などの受験期って大変ではありますが,多くの人が(きっと)メンタルはそれほど悪くならない気がしていて,理由は目に見えるコツコツとした毎日の積み上げがあり,それが精神的な安寧と自信に繋がるからだと思っています.進むべき道が,「チャート式」(航海図)に示されている安心感は大きいです. 対照的に,大きすぎる「自由」が与えられ,その「自由」をもてあまして退廃すると,人は無力感や自責感から心を病むような気がしています.院生の話でいえば,(これは私的な憶測で間違っている可

          自由度が高いときこそ習慣で自分を固定してメンタルを安定させる

          賢く・物知りに・器用になる欲望に抗って、不器用さがひらく可能性を信じる

          数値的なエビデンスとかは全くなくて、ただの個人的な所感なのですが。 最近、「自分にはこれしかできなかった」系の不器用さが才能に繋がる例をたくさん観測していて、中途半端に色々できてしまうと、かえってベクトルが発散して良くないのでは、という気がしています。例えば、昨今のIT時代に、「プログラミングができなきゃいけない」という欲望に抗うことの重要性とか。 「勉強は選択肢を広げる」なんて言いますが、とんでもないことだと思います。全ては成長も劣化もない、ニュートラルで不可逆的な自己

          賢く・物知りに・器用になる欲望に抗って、不器用さがひらく可能性を信じる

          Notion + Google Driveで「映え」な文献管理

          院生など、研究をしてると論文が溜まってくるので文献管理ツールが必須ですよね。私はMendeleyを使っているのですが、研究のログや考察にはNotionを使っているので、文献もNotionでうまいこと一元管理できたらいいのになーと考えていました。そこで今回は主に、研究でNotionをヘビーに使われている方や、Notionで既に文献管理をされている方向けに、文献管理の一例 ↓をご紹介します。 実装の一例を早く見たい方は [本題] PaperpileとGAS + Notion A

          Notion + Google Driveで「映え」な文献管理

          物事を伝えるには不誠実さを許容する姿勢も必要

          ある分野で専門家になればなるほど、その分野の「分かりやすい話」をしづらくなる、ということがあります。その原因を端的にいうと、教科書的な説明が「そうとも言い切れない」ような場面を見かけていくにつれて、説明の歯切れが悪くなっていくからだと思います。 近年、メディアで注目を浴びている成田さんのインタビュー ↓ で触れられていた話について、私も色々と思うところがありました。 例えば、ある分野について分かりやすく組み立てられた、概論的な説明があるとします。「分かりやすい」かどうかは

          物事を伝えるには不誠実さを許容する姿勢も必要

          Pythonでサイン波を組み合わせて音楽を奏でる

          こちらの書籍が非常に面白かったので、純音であるサイン波の組み合わせで音楽を奏でるプログラムをPythonで書いてみようと思います。 音響学に関しては「この書籍で初めて勉強している」程度のド素人であるため、万が一、間違ったことを書いてしまっていたら申し訳ございません。 基本的な手順あらゆる音(=波形)は大小さまざまな複数のサイン波を寄せ集めて作ることができる。 一つひとつのサイン波は一つの周波数(=音の高さ)に対応する。色んな周波数の成分を色んな大きさで組み合わせたのが「

          Pythonでサイン波を組み合わせて音楽を奏でる

          「ミニ脳が卓球ゲームをプレイ」 について解説します 【論文紹介】

          とある神経科学の論文が大きな話題を呼んでいます。↓ 私自身は大学院を卒業してしまったため、もう研究にきちんと関わっている人間ではないのですが、神経細胞に日頃から触れ、工学的な手法を通じて知能や神経疾患の仕組みを解き明かすことに興味のあった人間のひとりです。 せっかくの機会ですから、話題になった今回の論文(以降、Pong論文)について、背景の解説と内容の考察を書いてみたいと思います。 論文の概要は?論文の内容を一文でまとめると、次のようになります。 しかしこのままでは到

          「ミニ脳が卓球ゲームをプレイ」 について解説します 【論文紹介】

          4-9月の思考記録の寄せ集め

          事情あって9月入学・9月卒業という形を取ったので,この時期ですが修士課程を(ほぼ)終えました.研究に没頭していた毎日だったので,社会人になると思考のパターンがいろいろと変わるだろうなと思い,院生の日々に考えていたことを記録した日記の一部を寄せ集めてnoteにしました.一人称や,個人情報に関わる表現は改変しています.私は工学・生物系の研究室にいましたが,哲学や社会学などの人文系の本を読むことが好きという背景があり,どうしてもそうした書籍に影響を受けたような表現が多いです.後から

          4-9月の思考記録の寄せ集め

          グレーゾーンに生きる #呑みながら書きました

          今日は、朝からnoteを書こうとしていたんですけど、結局何も書けていませんでした。断片的に思い浮かぶネタはたくさんあるけれど、それらをどうやって繋げて一個の物語にしようっていう整理がなかなかつきませんでした。でも本来、思考というのは初めから体系立って生成してくるものではないですね。たまには思考が生成する過程と同じような形で、喋り言葉のようにアウトプットする、という表現形式が許されても良いはずです。ですので、今日はこちらの企画にお邪魔して、一筆書きという制約を加えて遊んでみます

          グレーゾーンに生きる #呑みながら書きました

          欲望を編む —— 他者との関わりが形成する遊び場

          はじめに個人的な実感からスタートしたいと思います。私は大学院の修士課程にいて、今年が院生として最後の年になります。「自分のやりたいことは何だろう」という問いに対して、否でも応でも暫定的な答えを出そうと悩んだ時期でした。 人生を振り返ってみると、私にとって長らく切実だった問いは、つまるところ「自分のやりたいことが分からない」という問題でした。これは私にとって個人的な問題であるばかりでなく、おそらく多くの人が抱えたことがあるであろう普遍的な問題でもあります。 さて、「やりたい

          欲望を編む —— 他者との関わりが形成する遊び場

          強さに偏らず、弱さにも偏り過ぎないこと

          私が今回これを書くに至ったのは、自分の中に「強さを志向する動き」と「弱さを志向する動き」の2種類が認められ、それらが互いに矛盾しているように感じられ、違和感を整理したいと思ったからです。 違和感を端的に表すなら、「強さを志向すると弱さに対する共感性を失い、弱さについて考え続けていると強さを志向することの重要性を忘れる」というトレードオフの関係です。あるいは、「優しさと強さの両立問題」として捉えられるかもしれません。そこで立ち上がってくるのは、果たして自分を強さと弱さのどちら

          強さに偏らず、弱さにも偏り過ぎないこと